水のコンテンツ② 『水』をとりまく諸問題 その


名爆 わが国は水が豊かな国として知られている。実際、喫茶店やレストランに行って、無料で水が出される国など、世界広しと言えども日本くらいのものだろう。
 しかしその日本の水も、最近は味が落ち、質が堕ちてしまった。その最大の原因は、工業排水にあると言ってよい。日本が経済的に豊かになった分だけ、水質が落ちてしまったようだ。
 最近は環境破壊が問題視され、多くの企業、団体が環境保全に気をつかうようになったが、それでも水質は落ちている。どこかで歯止めをかけなければ、この国の水は飲用に不敵となり、やがてはあらゆる農業に影響が出るばかりか、すべての生命体に異常を引き起こすようになってしまう。

エピローグ

も海も汚染されている

 サッカー日本代表のワールドカップ本大会出場が決定しました。この日本チームのユニフォームが青なのは、海洋国家日本を象徴しているのだそうです。
 四方を海に囲まれた、狭い国土に暮らす日本人にとって、海は昔から身近な存在でした。文化が大陸から海を越えて伝わってきたというだけではなく、生活のあらゆる場面において、私たちの営みは海なしでは考えられません。
 しかし、これまで海や川・湖は、人間が捨てたものを無限に飲み込むかのように思われてきました。そのため、家庭のゴミや工場から出る廃棄物はもちろん、使用済みの核燃料までが川や海に沈められています。
 ところで、ゴミを処理する時にはカドミウム、PCB、ダイオキシンなどの有害物質が発生し、工場排水には水銀、鉛、銅などが含まれている場合があります。またゴルフ場の美しい芝を維持するためにまかれる農薬には、有害物質がたくさん含まれています。この殺虫剤・除草剤・殺菌剤といった農薬は、もともと害虫や微生物を殺すのが目的ですから、自然環境や私たち人間にとってもいいわけがありません。
 こうした農薬のためにまず土壌が汚染され、次にその土の中を流れる地下水が汚染されます。汚染された地下水は川や湖に流れ込み、はては海にまで広がっていくのです。
 本来、川や海は汚れを浄化する力を持っています。これはたくさんの微生物が汚染物質を分解してくれるためです。しかし一定量を越す排水が流れ込めば浄化が間に合いません。このため現在、世界中の多くの川や海がひどく汚れてしまっているのです。

海にも川にも魚がいなくなる
 川や海の汚染は、そこに住む生物に大きな害をもたらします。住みかの水が汚れてしまえば、魚や貝は生きていけません。ヨーロッパを流れるライン川では、1890年には15万匹のサケが水揚げされていました。しかし、流域の工場から出る排水で川が汚れたために、1958年には一匹もいなくなってしまいました。
 また、排水に含まれる栄養分によって藻などが異常に繁殖して酸素を独占し、他の生物が死滅してしまうケースもあります。メキシコ湾には、ミシシッピー川から多量の化学肥料が流れ込みます。化学肥料にはリンが多量に含まれているため、リンを栄養分とする藻が異常繁殖しました。この藻が酸素を独占したため、ほかの生物に酸素が行き渡らず、湾から魚が姿を消したというわけです。
 川や海から魚がいなくなってしまえば、漁業で生計をたてていた人たちは困ってしまいます。とれる魚の量が減れば、魚の値段が上がって、私たちの口に入らなくなるかも知れません。

救えない海生生物の受難
 私たちが「水に流し」てしまった諸々は、最終的には海にたどり着きます。海洋汚染は多様な物質が関連していますが、海上保安庁が確認した結果では、汚染のおよそ半分が油によるもので、その約8割が船舶から出ています。特にタンカーが座礁、沈没して大量の油が流出すると、周辺の海洋生態系は大きなダメージを受けます。
 1997年1月、重油1万9千キロリットルを積載したタンカー、ナホトカ号は、隠岐島沖で荒天のため船体が破断し、海上に重油が流出、その5日後には福井県三国町沖に漂着しました。
 海上に流出した油は、福井県沿岸を中心に島根県から秋田県まで、日本海側1府8県に漂着して海岸を汚染しました。漂着した油を取り除く作業は人手を要する作業となり、 地元住人や自衛隊員のほか、全国からかけつけた延べ30万人以上のボランティアも活躍しました。
 ところで、このような事故で最大の犠牲を強いられるのは、現場周辺に生きる海の生物たちです。たとえば、ウミスズメやウトウなどの海鳥は、油で汚れると羽毛の防水、保温機能が低下して衰弱死してしまいます。今回は全国で1300羽が回収されましたが、被害総数はその20倍とも言われています。

人体にも大きな影響が
 川・海の汚染は人体にも直接大きな被害をもたらします。
 まず飲み水が汚染されます。また、汚れた水に住む魚・貝には汚染物質が蓄積されるので、これらを食べれば人間の体内にもその成分が取り込まれ、いずれ健康を害することになるでしょう。
 例えば、日本でも戦後しばらくまでは殺虫剤として使用されていたDDTという有害物質があります。これが体内に取り込まれると、肝臓障害を起こしたり、ガンになったりすることが判明しました。また、母体にDDTが蓄積されると、先天的障害児が生まれる確立が高くなります。
 そのため先進国の多くでは使用が禁止されているのですが、途上国ではいまだに農薬にDDTが使われており、このDDTが地下水を通じて周辺の川や海を汚染しています。インドの川でも魚の体内から高い濃度のDDTが検出されています。
 このように、私たちの生活や産業活動は、海・川の汚染というかたちで、人間の生命までも脅かしています。



人口と消費の問題についての現況 

地球が定員オーバーになる?
 18世紀はじめ、10億人程度だった世界の人口は、1950年には25億人、1987年には50億人を突破しました。わずか2世紀足らずの間に倍々に増加したというわけです。その後も年に約9千万人ずつ増え続け、1997年現在59億人となっています。
 地球が養える人の数は、耕作面積、収穫量、必要摂取カロリーなどのデータから計算していくと、75億人前後だと言われています。世界銀行によれば、世界の人口は2025年に85億人、2150年には114億人になると言われていますから、地球に定員オーバーがやってくるのは時間の問題です。
 ただし、世界の国々の人口が同じペースで増えているわけではありません。世界人口の増加の9割が途上国で起きています。とくにアジア・アフリカでは、20世紀に入って人口が急激に増えました。
西洋文明が環境を破壊した?
 20世紀に途上国で人口爆発が起こったのは、西洋文明が流入したことと密接な関係があります。そしてこの人口爆発は環境破壊、とくに熱帯林の伐採を引き起こすことになりました。
西洋文明が入る前、途上国では自分たちが食べる分だけの作物を共有地で育て、自給自足していました。
しかし先進国から西洋式の大規模な農業経営手法が入り、共有地は政府や先進国の農場になってしまいました。そのため人々は自分用の作物を育てる代わりに、これらの農場で働き、賃金をもらって生計をたてるようになりました。
農場の低賃金では生活が苦しいため働き手を増やして多くの賃金を得ようと、子供をたくさん産むようになりました。
進んだ医療技術が西洋から流入して死亡率が下がり、出生率の上昇と相まって人口が爆発的に増加しました。
人が増えた分の食べ物を調達するために、未開発の熱帯雨林を焼いて畑を作り、作物を育てるようになりました。
熱帯林の土は日光・風・水の浸食に弱いため、切り開かれた土地はすぐに痩せてしまい、人々は新たな農地を求めて奥へ奥へと熱帯林を切り開きます。

 つまり、西洋文明の流入によって途上国の農業が自給型から商業型に変わったために、働き手が必要になって人口が増えたわけです。そして、この人口を養うために熱帯林が伐採されているのです。

人口抑制で解決するか?
 現在、途上国ではこれ以上人口が増えないように、家族計画を普及させるなど、少産化政策を進めています。こうした政策が成功すれば、人口増加に少しは歯止めがかかるかも知れません。
 しかし、これは根本的な解決とは言えません。西洋式の商業型農業は、途上国をお金中心の世の中に変えてしまいました。かつては自分の食べる分は自分で作ればすんだのに、今日ではその分の食べ物さえお金がなければ手に入りません。
 お金を稼ぐためには子供をたくさん産んで働き手を増やすのが手っ取り早い・・・こうした現実があるために、途上国の政府の指導をよそに子供を産み続けています。
 途上国の人々が子供を産まなければならない理由、つまりお金がない、食べ物が足りないという現実の問題を解決しない限り、人口問題も解決しないのです。
まとめ
地球人口は、毎日25万人以上(毎年9千万人以上)増加している。
地球人口の増加率は、農業生産の増加率を上回っている
人口増加は「南」の国々で著しい。多くの開発途上国では、30年で倍増している。

1950年以降、都市人口は3倍に増え、20億人--地球上の人口の41%以上--になった。
開発途上国の都市人口は、2025年までに40億人に達すると予想される。
人口百万人以上の都市(現在250都市)では、1日あたり約625,000トンの水、 約2,000トンの食糧、約9,500トンの燃料を消費し、同時に約500,000トンの 廃水、約2,000トンの廃棄物、約950トンの大気汚染物質を発生してい る。

人口増加は、すでにひっ迫している水供給をさらに圧迫するであろう。 多くの開発途上国が、乾燥ないし半乾燥の熱帯地帯に位置している。
先進国は、地球全体のエネルギー利用の約75%、商業的燃料の約79%、木製品の約85%、鉄鋼製品の約72%を消費している。
多くの開発途上国が、先進国の消費レベルおよび廃棄物発生レベルに追いつこうと している。双方がもっと持続可能な生産・消費の様式を採用しないと、やがて地球の維持容量を超えてしまうであろう。


海洋と沿岸の問題についての現況 
地球全体のバイオマスの9割以上が海洋に存在する。
サンゴ礁は熱帯雨林に匹敵する生物多様性を有するが、沈泥、採掘、爆薬による不法漁法、および汚染により次第に破壊されつつある。
世界中で35億人以上が第一の食糧源を海に依存している。20年間でこの数は2倍(70億人)になるであろう。

世界中で40以上の魚類群落が、すでに過剰利用あるいは枯渇の状態にある。
現在、世界の全漁獲量(商業用、自給用、レクレーション用)は、持続可能な最大量と推定される年間1億トンを超えている。
2000年までに、魚の供給量は需要に対し1〜1.5千万トン不足するようになるであろう。

海洋生物の生息地のうち最も脅かされているのは沿岸水域である。沿岸水域の漁獲量は全漁獲量の9割を占める。
年間推定量2.1千万バレル(334万kl)の油が、街路から、船舶のタンク洗浄から、および工場の廃水から、海に流出している
過去10年間、年間平均60万バレル(9.54万kl)の油が、船舶事故により海に流出している
公海上の漁業の9割が6ヵ国--ロシア、日本、スペイン、ポーランド、韓国、台湾--で占められている。


エネルギーの問題についての現況 

世界最低の自給率「日本」
わが国における主要資源の輸入依存率
(日本統計年鑑)
  1970年(%) 1991年(%)
石炭 57.1 93.3
石油 99.5 99.6
石油製品 11.7 14.6
天然ガス 33.5 96.2
鉄鉱石 97.0 100.0
ボーキサイト 100.0 100.0
りん鉱石 100.0 100.0
木材 48.3 64.9
パルプ 9.4 20.0
87.6 85.2


 日本のエネルギーの自給率は9%で世界最低です。9%というと、無いに等しい状況です。
 そして日本のエネルギー消費はこの50年で20倍という急成長を遂げました。これはそのまま日本の経済成長となったのです。
 事実、日本のGNPは年10%で伸び、その間、エネルギー需要も10%ずつ伸びたのです。
 産業革命以降、人間が最も多く使ってきたエネルギーが石油と石炭で、先進国の90%が主要エネルギー源としています。つまり、現代人の生活は石油・石炭に大きく依存しているわけです。

石油・石炭の問題点  人間が大きく依存している石油・石炭には大きな問題が2つあります。
 第一に、埋蔵量に限界があることです。国連とアメリカ政府が世界のエネルギー資源の残存年数を発表しました。石油はあと39年、ガスは44年、石炭は103年です。
 石油・石炭は地球が何十億年という長い年月をかけてつくりあげてきたものです。生物の死体、枯れた植物などが変化したもので、「化石燃料」といわれるのはこのためですが、この量は無限ではありません。
 これだけ頼っている石油・石炭も遅かれ早かれなくなってしまうと考えられています。
 石油があと39年で枯渇するということは、原油の少ない国から順に原油の産出がストップし、世界の原油輸出は徐々に止まり始めます。
 その時の混乱はかつてのオイルショックなどとは比較になりません。オイルショックではなくオイルストップになるのです。原油が止まれば現状の世界経済は崩壊、世界は大混乱になります。最もひどい状況になるのが自給率最低の日本です。

 第二の問題点は、石油・石炭の使用が地球の温暖化と密接に関係していることです。
 人間は大量の石油・石炭を使って経済を発展させ、現在の生活をつくりあげてきました。ただし、石油・石炭を燃やすと温室効果を持つ二酸化炭素が多量に放出されるため、大気の温度が上昇してきます。
 1980年代の後半、温暖化の影響が各地で見られるようになると、エネルギー問題は「埋蔵量」の心配から「温暖化」への危機へと変わってきました。

新エネルギーに注目  地球が何十億年という長い年月をかけてつくりあげた石油・石炭を人間はわずか数百年で使い果たしてしまう勢いです。また、石油・石炭を燃やすときに出る二酸化炭素は温暖化を招き、異常気象などを引き起こしています。
 この問題を解決するには、1つの方法として「省エネ」があります。70年代のオイルショック時は石油が10倍以上の価格に高騰しました。この時、企業はコストを少しでも減らすために、エネルギーを効率よく使おうと機械を改良し、石油の使用量を削減しました。
 しかし、いくら「省エネ」を進めても石油・石炭の枯渇を少し延ばすことしかできません。
 この問題を解決するためには、石油・石炭の使用を止めることが一番です。そのために現在、石油・石炭から太陽光や水力・風力などの自然エネルギーへの一部転換が進められています。
 最近開発されているのが、風力・水力・太陽光などの自然エネルギーや燃料化したゴミなど、環境保全を考えた新エネルギーによる発電です。カナダではすでに水力発電がエネルギー源となっていますし、90年代にドイツ・アメリカなどでは風力発電が急激な伸びを示しました。また、太陽光が豊富なアフリカなどでは太陽光発電が着々と整備されています。

まとめ
世界中の商業エネルギーの約72%を先進国が消費され、残り約28%を開発途上国が消費している。
世界全体でみると、人々は、水力と原子力を合わせた以上にバイオマスにエネルギーを依存している
世界資源研究所(WRI)によれば、アフリカにおける1人あたりのエネルギー消費量は世界平均のたった20%である。

ヨーロッパでは、エネルギー消費量は、世界平均の2.3倍、米国では5.4倍である。
開発途上国におけるエネルギー需要は、過去20年間、年率4.7%で増加し ている。
今後30年間に、世界のエネルギー需要は50ないし60%増加するであろう。 その大部分は開発途上国における、工業化、生活水準向上、都市化、および、増大する人口のニーズに対処するために生じるであろう。

開発途上国における二酸化炭素(CO2)排出量が世界全体に占める割合 は、1985年の26%から、2025年には44%に増大するであろう。
世界資源研究所(WRI)によれば、開発途上国のエネルギー消費は、2年間で償却可能な投資を行えば、25%にも達する量を節約可能である。
アフリカエネルギー研究所の調査によれば、ケニアの一般家庭では、 使用中でない器械を止めることで、10%のエネルギー節約が可能である。


廃棄物の問題についての現況 

国連人間居住センターによれば、大都市の全廃棄物発生量のわずか25〜55%しか、市当局によって回収されていない。
国連開発計画(UNDP)の推定によれば、毎年5百万人以上が不十分な廃棄 物処理に関連する病気で死亡している。
1992年の地球サミットに先立ち国連に報告書を提出した国々のうち、少なく とも60%が廃棄物処理を最大の環境問題としている。

世界中の都市廃棄物の半分以上は先進国が発生している。米国を例にと ると、環境保護庁の推計によれば、米国人1人あたり平均 0.75トン以上のごみを毎年発生している。
世界中の有毒・有害廃棄物(年間発生量およそ325〜375百万トン)の90 %以上は先進工業国が--大部分は化学・石油化学工業から--発生してい る。
有害廃棄物処理に関する規制は、先進国の多くが1970年代にようやく導入したにすぎず、規制前の膨大な遺物が残されている。北アメリカの地下帯水層の2%近くがそのような廃棄物で汚染されている可能性がある。ドイツででは35,000、デンマークでは3,200、オランダでは4,000もの問題サイトがある

ワールドウォッチ研究所によれば、商業用原子力発電所で発生した使用済核燃料の現在までの累積量は8万トン以上、その他の放射性廃棄物の量は何十万トンにも達する
使用ずみ核燃料が崩壊して無害となるには何十万年も要し、それまでは 非常に危険なため、人間が接触する可能性のある場所から遠く離れたところで保管しなければならない。

  汚染  

核をめぐる事故  核のゴミとはいったいどういうものなのでしょうか。
 95年4月、青森県六ヶ所村に搬入された高レベル廃棄物が収められた容器から立ち上がった湯気は、核廃棄物がまさに「生きている」という現実を私たちに突きつけました。
 そして、95年12月、動燃の高速増殖炉「もんじゅ」で、温度計の破損によるナトリウム漏れ火災事故が発生し、ナトリウムという物質の危険性を目のあたりにしました。
 97年3月、こんどは茨城県東海村の動燃「アスファルト固化処理施設」で火災が発生し、不十分な対応によって、爆発まで引き起こすという最悪の事故となりました。
 この事故は、再処理工場内のアスファルト固化処理施設内で火災が発生したというものです。火災は約15分後に鎮火しましたが、約10時間後に同じ場所で爆発が起こり施設内部などが破壊されました。

 アスファルト固化処理施設は、低レベルの放射性濃縮廃液を処分するためにアスファルトと一緒に固める施設です。その中の放射性廃液とアスファルトを混合する充填室から出火しました。
 もともとアスファルトは引火点が約260度で発火しやすいことから、火災には最も注意が必要とされていました。
 この事故では、37人が被曝し、猛毒のプラトニウムも環境中に放出されたのではないかという兆候も見られました。
 東海村の爆発ニュースが報道されているなか、青森県六ヶ所村のむつ小川原港に、フランスで処理された高レベル廃棄物が、英国の輸送船から陸揚げされました。
 こうした廃棄物はなぜ、どこから生まれてくるのでしょうか。

必ず生まれる放射性廃棄物  原子力発電は、廃棄物処理が行われていなければ実用にはなりません。
 現在、全世界で430基以上の原子炉が運転され、約3億6千万kwの発電規模に達していますが、原子炉から発生する核廃棄物の処理については、原発が動き始めてから40年以上も経過する今でもまだまだ不透明な部分が存在します。
 核廃棄物には「高レベル」「中レベル」「低レベル」「極低レベル」の4種類があります。
 原子力発電所から発生する低レベル廃棄物は、放射能を帯びたゴミが主なもので、原発内部で使用した手袋、衣類、それらを洗った水、原子炉の付近で使用された構造物などです。ところが、同じ低レベルでも、今回火災・爆発事故を起こした廃棄物は使用済み核燃料からプルトニウムを取り出したあとの強い放射能を持つものです。

 東海村のアスファルト固化施設のドラム缶の場合、現場にある32本のドラム缶で90億人分の年摂取限度の放射能が含まれていて、低レベルとは名ばかりのもので、実は大変恐ろしいものだと指摘されています。
 100kwの原発を1年間運転すると、約30tの使用済み燃料がでます。日本では、この使用済み燃料をフランスやイギリスで再処理をして、プルトニウムと燃え残りのウランを取り出しています。その過程で廃液などの高レベル廃棄物が大量にできます。
 この廃液は、非常に放射能が強く、タンクに貯蔵する以外にありません。その際、タンクの溶接部からの漏洩なども心配されます。

行き場を失う廃棄物  廃棄物処理を考えるときに、第一に問題となるのが、日本ではどこの原発も廃棄物や使用済みの核燃料が原発敷地の中でたまり続けて飽和状態になっているということです。
 青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場が稼働したとしても、2010年頃には全国の原発で年間約1300tの使用済み核燃料が発生するので、貯蔵施設が不足するのは目に見えています。
 原発を稼働させれば核廃棄物ができます。その処理、処分方法も決まっていないのに、とにかく建設しようというやり方が各地で不信感を呼んでいます。

 また、再処理工場による放射能汚染も問題です。1947年に操業したイギリスの原子力施設では大小さまざまな事故による放射能漏れを経験しています。さらに、周辺での小児白血病が6〜8倍増加するといった疫学調査結果も発表されています。
 再処理なくして存在できない高速増殖炉は膨大な核廃棄物をも無限に増殖させます。それにともなって燃料や核廃棄物の輸送の際の事故、再処理工場での事故、プルトニウムを使った燃料の製造工程での事故の危険も飛躍的に増殖していくのです。
 放射能を出し続ける核廃棄物をこのかけがえのない地球に残していいものなのでしょうか。


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