水のコンテンツ⑯ 『水』をとりまく諸問題 その16
  21世紀の『緊急課題』-⑨


欧州豪雨は地球温暖化が原因?
ドイツ・ドレスデン近郊の市の街中を手こぎボートで進む警察当局者  

ドイツ・ドレスデン近郊の市の街中を手こぎボートで進む警察当局者(AP)

 「過去100年で最悪」とされる集中豪雨による洪水に、なすすべのない欧州中東部。8月に入ってからの雨量は17日までに、各地で平年の5倍を超える異常事態となっている。今春から太平洋赤道海域でエルニーニョ現象が発生しているが、同現象で大雨となるのは太平洋赤道地域やアフリカなど。気象庁は“エルニーニョ犯人説”を否定し、地球温暖化との関連を指摘した。また、アジアでも豪雨による被害が頻発している。

 ドイツ東部の古都ドレスデンでは、バロック建築の傑作、ツウィンガー宮殿やザクセン州立歌劇場など、街全体が泥水に浮かんだような光景が広がっている。今月1〜13日の雨量は、オーストリアのザンクトポルテンで平年の8・0倍の265ミリ、ドレスデンで7・6倍の250ミリ、イタリアのトリエステで6・2倍の207ミリ、ワルシャワで5・1倍の132ミリを記録。気象庁では、豪雨の原因について、スカンディナビア半島にある高気圧の縁をたどって寒気を伴った低気圧が次々と欧州を東進、大気の状態が不安定になったと分析。しかし、このような気圧配置となる原因は解明されていない。

 異常気象をもたらすとされるエルニーニョ現象が今春からペルー沖の太平洋赤道海域で発生し、少なくとも今年いっぱいは続くとみられている。とはいえエルニーニョで大雨となるのは太平洋赤道地域やアフリカ東部、南米など。このため、気象庁は「大雨が顕著に表れる赤道域にはまだ異常がみられない」と“エルニーニョ犯人説”を疑問視。アジア各地やロシアでも、豪雨による被害が相次いでいることから「地球温暖化が進むと大気の対流活動が活発となり、集中豪雨が起きやすくなるとの予測もある」として、むしろ温暖化との関連を指摘している。

 韓国では4日からの大雨で死者・行方不明者30人以上の被害が出た。釜山では6日から1週間の雨量が8月の月間平年降水量の約2倍、490ミリに。共同電によると、インドやバングラデシュ、ネパールでも大雨による洪水被害が拡大。6月からこれまでに900人以上が死亡、約2500万人以上が避難生活を余儀なくされているという。バングラデシュからの報道によると、同国北部で17日、ジャムナ川の堤防が新たに決壊、少なくとも2000人が避難した。


死者100人超える

 ヨーロッパを襲っている洪水はドイツ東部のエルベ川流域を中心に被害が拡大、AP通信によると欧州全体の死者は16日までに計103人に達した。ほかに多数の行方不明者がいて、犠牲者はさらに増える見込みだ。

 共同電によると、1845年の最高水位を上回る洪水となったドイツ東部ドレスデンなどではこの日も増水が続き、フォルクスワーゲン(VW)のドレスデン工場が自動車生産を中止するなど経済活動もまひ状態となった。多数の駅舎や車両が冠水したドイツ鉄道は16日、被害額が1億9686(約116億円)以上と公表。スロバキア通信などによると、同国首都ブラチスラバでも同日、ドナウ川の水位が過去最高水準まで達した。ドナウ川下流のハンガリーでは17、18日に最高水位となる見込みで政府が厳戒態勢を敷いた。

 一方、エルベ川上流のチェコではピーク時より水位が2メートル以上も下がり始め、避難していたプラハ市民らが徐々に帰宅。チェコ外務省は「プラハの洪水は収まりつつある」としている。
スポニチ(2002/08/18)



水環境の再生テーマに分科会、松江で日本環境会議
 弁護士や研究者、市民運動家らが環境問題について討議し、提言する日本環境会議が30日、松江市で始まった。2000年に地元の中海干拓が中止となったことから「干拓やダム建設の各地の事例を参考に、水質改善について考えたい」として、水環境再生をテーマに分科会を設けた。

 宍道湖や中海の干拓淡水化に反対してきた地元財団法人の竹下幹夫事務局長は「行政の水質対策はヘドロ除去などにとどまっているが、堤防開削など抜本的な対策が必要だ」と訴えた。

 諌早干拓事業の中止を訴える東幹夫長崎大教授(水生動物生態学)は「干拓を中止し、元の水流を回復するのが大切」とした。また、熊本県の川辺川ダム建設に反対する市民団体代表の緒方俊一郎医師は「ダム建設自体が目的化している」と語った。

 韓国から参加の環境保護団体「緑色連合」のメンバーは、韓国西海岸の干潟干拓により環境が悪化している状況を報告し、「だれも責任を負わず、地元民が被害に遭っている。大型公共事業での政治家と建設会社の癒着も問題だ」と指摘した。〔共同〕 (日経 2002/03/31)


明治初期のマンホール発見 横浜・県庁前
見つかった明治初期のマンホール
見つかった明治初期のマンホール。上部の穴内側の壁にはめ込むように脱臭用の炭箱があった=横浜市水道局提供

 横浜市中区日本大通の県庁前の道路工事現場から、明治初期に埋設されたとみられるれんが造りのマンホールが見つかった。ふたのわきに付いていた脱臭用の炭箱も、ほぼ完全な形で残っていた。炭箱は文献にはあったが実物が確認されたのは初めて。市は明治初期の下水道や消臭技術を伝える史料として、保存する方法を検討している。

 市下水道局によると、マンホールは縦2.1メートル、横3メートル、高さ3.2メートルの箱のような形をしている。昨年10月、道路工事中に地下50センチのところで見つかった。市文化財保護審議会専門委員で横浜国立大の吉田鋼市教授によると、1881(明治14)年から翌々年にかけて旧居留地の下水道が改修された際に造られたものだという。

 炭箱はマンホールのふたのわきの壁のくぼみにはめ込んであった。縦30センチ、横40センチ、奥行き12センチで、中に木炭がびっしりと詰めてあった。ふたに穴はなく、下を流れる汚水から立ち上る臭気は炭箱を通ってから外に出る仕組みになっていた。ただ、実際の脱臭効果はわからないという。

 炭箱の脱臭装置は、1905(明治38)年の内務省衛生局の文書に仕組みの説明や図案がある。同じ型のマンホールは82年にも近くの開港広場で見つかったが、炭箱は残っていなかった。

 市教委文化財課は「当時の最新の脱臭技術が完全な形で確認できた」と話している。

(2002/01/24 朝日)



下水汚泥を乾燥させて燃料化、二酸化炭素削減にも効果


 丸紅と電源開発は10日、下水処理場から出る汚泥を乾燥させて石炭火力発電の燃料に使う事業に、世界で初めて共同で乗り出すことを明らかにした。2004年をメドに、両社を中心に合弁会社を設立し、自治体から下水の乾燥処理を請け負う一方、乾燥汚泥を電発や電力会社などに燃料として販売する。従来、焼却や埋め立て処理してきた汚泥を石炭に混ぜて燃やすことができるため、埋め立て処分量を減らせる上、火力発電での石炭使用量を削減することで地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の削減も図れる“一石二鳥”の効果が見込めるという。

 両社は、食品メーカーが出す使用済み食用油などの廃油を汚泥に混ぜて加熱・乾燥させる技術を応用して開発した「油温減圧乾燥法」と呼ばれる技術を用いる。油を含んだ乾燥汚泥は1キロ当たり6000キロ・カロリーと石炭並みの熱量があり、発電所で石炭の代わりに使用できる。石炭に3%程度混ぜて燃やした実験では、ダイオキシンなどの有害物質はほとんど出なかったという。

 両社が作る合弁会社は、下水処理場の敷地内や隣接地に乾燥処理プラントを建て、プラントの運営も請け負う計画で、近く全国の自治体に売り込みを始める。

 下水の汚泥は、下水道の普及とともに増加し、1999年度には約7500万トン。たい肥などに再処理されるのは一部だけで、大半は焼却したり埋め立てられている。しかし、焼却には多額の費用がかかり、埋め立て処分場も全国的に不足しており、汚泥処理は自治体の悩みの種になっている。

 丸紅と電発は「乾燥処理した方が安上がりで、発電用燃料としても石炭より安価なため、自治体と電力会社の双方にとってメリットが大きい」と売り込みに力を入れる構えだ。

(2002/01/11 読売)



水資源の管理へ衛星観測網整備…米欧などと協力

 1992年の地球サミットから10年を機に今年8―9月、南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれる「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルク・サミット)」に向け、外務、文部科学、環境などの各省は、今後、地球規模で減少が心配されている淡水資源の管理や地球温暖化対策のため、衛星を使った総合的な環境モニタリング体制を各国と協力して整備する方針を固めた。

 同サミットでは、地球サミットで採択した地球環境を守るための行動計画「アジェンダ21」の内容がどの程度実行されているかが検証されるが、この中でも淡水資源の管理がテーマの一つになる。

 わが国は、サミットでの成果も踏まえ、今年11月に、宇宙開発事業団が新たに打ち上げる地球観測衛星「ADEOS―2」と、米、欧州連合(EU)が今年、相次いで打ち上げる地球観測衛星とを連携させて全地球的な環境観測網を整備する。

 海水が蒸発して雲ができ、雨となって河川へ――と続く地球規模の水循環のメカニズムを解明することにより、淡水資源を有効管理できるようにするのが課題だ。

 観測データは、データベース化し、途上国などでも利用できる体制を作る。

(2002/01/05 読売)



最低気温: ドイツで氷点下45・9度 観測史上初


 DPA通信によると、ドイツ最南東端のアルプス山中にあるベルヒテスガーデン近郊で23日夜、最低気温がマイナス45・9度を記録。1870年代に本格的な気象観測が始まって以来の最低温となった。

 ドイツではクリスマス休暇入り前の先週後半から南部や東部を中心に雪となっており、高速道路網などに影響が出ている。(ベルリン共同)

[毎日新聞2001/12/25]



今年は史上2番目の暑さ、寒波も異常 世界気象機関


地球温暖化の傾向は急ピッチで進んでおり、01年は史上2番目に暑い年だったことが18日、世界気象機関(WMO)のまとめでわかった。その一方でシベリアなど地域によっては異常な寒さを記録、猛暑と厳寒に見舞われた最も気候変動の激しい年でもあった。アフガニスタンなど中央アジアでは干ばつの被害が一層増大している。

 WMOによると、01年の平均気温は1961年から90年までの30年間の平均気温に比べ、0.42度高く、98年についで2番目の高温を記録。平均を上回ったのは23年連続で、地球温暖化の傾向がはっきり表れている。とくに暑かったのはカナダ、中央アジア、欧州。月ごとの気候変動も激しく、英国で10月は記録のある330年間の中で最も暑い月となった。寒暖の差も激しく、米国カリフォルニア州のデスバレーで夏に57度を記録する一方、北極で冬にマイナス87度、シベリア中央、南部では1月にマイナス60度の日が2週間続いた。

 気温の上昇は、急速な雪解け現象をもたらす。シベリアは春先の高温で各地の河川がはんらん、ポーランドやインドネシアでも集中豪雨による被害が続出した。アフガニスタンやパキスタンなどアジア中南部では干ばつが続き、降雨量は平均の5割強にとどまった。

 WMOは異常な気候変動の主な原因は「人間の活動」として、二酸化炭素の排出による温室効果が進んでいることに警鐘を鳴らしている。
(2001/12/19 朝日)



65%が「節水」を意識 家計や環境を理由、内閣府調査


 国民の6割強が節水を心がけ、節水の理由として家計への影響や環境汚染を挙げる人が増えていることが内閣府の「水に関する世論調査」でわかった。水道の水源を知っている人も増えており、全般に水への関心が高まっている。

 水の使い方では、節水している人は65%で、豊富に使っている人(30%)の2倍強だった。2年前の前回調査に比べ、節水している人の比率は横ばいだったが、節水の理由として「たくさん使うと家計にひびく」と答えた人が43%で16ポイント増え、「使えばそれだけ川や海を汚すことになる」と答えた人も23%で8ポイント増えた。節水を心がけている点は、ふろ61%、洗濯50%、洗面32%、炊事29%の順。

 一方、渇水時の水対策については、安定供給のために「負担が増えても、早急に施設整備を進める」「負担が多少増えても、徐々に施設整備を進める」と答えたのは計52%。災害時に備えた水対策では「負担が増えても、早急に施設整備を進める」「負担が多少増えても、徐々に施設整備を進める」と答えたのが計57%だった。堤防やダムなど治水施設の整備については「現状の負担で現状通り進める」と答えた人が50%だった。

 調査は全国3000人を対象に7、8月に実施。回収率は70.4%だった。
(2001/11/12 朝日)



[COP7閉幕]「京都議定書の批准準備を急げ」


 地球温暖化防止に向けた国際的な取り組みが新たな段階に入った。歴史的な前進である。

 モロッコのマラケシュで開かれていた気候変動枠組み条約第七回締約国会議(COP7)が、先進国に温室効果ガスの削減義務を課した「京都議定書」の運用ルールについて、最終合意した。
 これを受けて参加各国は、来年九月に南ア・ヨハネスブルクで開かれる「環境サミット」での議定書発効をめざし、批准作業を始める。
 議定書は、五十五か国以上が批准し、批准した先進国の二酸化炭素(CO2)の排出量の合計が、先進国のCO2総排出量の55%に達した段階で発効する。

 日本政府は、週明けに地球温暖化対策推進本部(本部長・小泉首相)を開き、今後の方針を検討する。
 議定書の早期批准を確認したうえで、地球温暖化対策推進大綱の見直しなど準備作業を急ぐ必要がある。

 日本は、温室効果ガスを一九九〇年比で、二〇一〇年をめどに6%削減することを義務づけられている。
 ところが、九九年の温室効果ガスの排出量は、九〇年比で6・8%増加している。最終合意で、森林がCO2を吸収する3・7%分を削減目標量から差し引くことが認められたが、増加分と合わせて大幅な削減が求められる。

 来秋の議定書発効を実現するためには次期通常国会で、議定書批准の承認を得なければならない。
 現在の温暖化対策推進大綱は九八年に策定されたもので、今回合意した削減義務を果たすためには、国内対策を定めた大綱の大幅見直しが欠かせない。
 将来の環境税導入の検討も含めて、二〇一〇年に向けた具体的な削減対策の工程表も必要だ。

 今回注目されるのは、途上国が議定書の枠組みに加わるための協議の開始に、初めて同意したことだ。中国など途上国の排出量は、二〇一〇年ごろには先進国を上回ると予測されており、途上国の枠組みへの参加が極めて重要だ。

 世界のCO2排出量の約四分の一を占める米国は、途上国の不参加と自国の経済への悪影響を大きな理由に、議定書不支持の立場を変えていない。今回の会議の議論にも入らなかった。
 米国を欠いたままの議定書発効は、意義も実効性も薄れる。途上国の前向きな動きは今後、米国の復帰を促す可能性を秘めている。

 温暖化防止は、議定書を軸に動き始めた。米国の復帰と途上国の参加実現に日本は他の参加国と力を合わせる時だ。

(2001/11/10 読売)



湖沼保全――地球環境の視点で


 湖は魚や野鳥をはぐくみ、私たちに潤いをもたらしてくれる。飲み水にもなる。多様な価値はかけがえがない。
 その湖がいま、世界のいたるところで危機に直面している。

 チベット高原東端にある中国最大の湖、青海湖は水位が年に10センチずつ落ち、どんどん縮んでいる。地球温暖化の進行で、水分が激しく蒸発しているためだ。乾いた湖岸からは砂が舞い、農村を襲う。白鳥などの生息地も心配されている。
 「気候変動に水の過剰な利用などが加わって、中国では多くの湖が枯れた」と政府の担当者は語る。都市開発による汚染も広がっている。

 日本は雨が多くて水枯れこそないが、湖の汚濁は依然として深刻である。そんな中で、琵琶湖畔で11日から6日間、第9回世界湖沼会議が開かれる。
 会議は湖の汚染に悩む滋賀県が呼びかけ、84年にこの地で始まった。おおむね2年ごとに米国、イタリアなど各国を巡り、今回は里帰りだ。78の国・地域から行政や非政府組織(NGO)、企業の代表、研究者ら延べ8千人以上が集う。湖を守る新世紀の出発点として期待したい。

 琵琶湖で汚れを示す赤潮が大発生したのは77年だった。これをきっかけに、工場や生活排水の規制が強化された。第1回湖沼会議のあった年には湖沼法が制定され、琵琶湖を含む10の湖が緊急対策地に指定され、下水道整備が加速した。
 しかし現状は、どこも水質の指標となる化学的酸素要求量(COD)の環境基準を達成できていない。汚水は道路などからも広く湖に入り込むからだ。開発に伴う汚染源の拡大が見過ごされてきた。

 例えば琵琶湖岸は、以前は草木に覆われていたところがコンクリート道に変わった。浄化力のあるヨシ群落も激減した。汚染は開発の「つけ」である。反省を込め、滋賀県は99年度からの新しい保全計画で自然の回復をめざしている。

 湖の保全を図るうえでの国際的な課題は、湖上や集水域に降る雨が汚染源になっていることだ。車などがはき出す窒素酸化物で大気が汚れ、それを雨水が吸収し、湖にもたらすからである。
 最近の琵琶湖研究では、地球温暖化で降雪が減り、酸素の多い雪解け水の流入が少なくなったこともわかった。湖の酸素不足の一因となり、生態系にも影響する。

 地球温暖化は、よく言われる海面上昇だけが問題ではない。湖の環境を変え、乾燥地では水枯れを招いている。
 対策には国際協力が欠かせない。温暖化防止の京都議定書を早く発効させることも、そのひとつだろう。

 湖は文明の鏡といえる。湖の病を治すには、開発の行き過ぎを抑えるとともに、地球環境そのものをよりよくしていく視点が必要だ。

(朝日 2001/11/10)



世界湖沼会議が大津市で開幕

 貴重な淡水資源の宝庫で、多様な生物のゆりかごでもある湖沼の環境保全策や有効利用法を考える「第9回世界湖沼会議」(滋賀県、国際湖沼環境委員会主催)が11日、大津市で開幕した。

 1984年に同市で第1回会議が開かれて以来、17年ぶりの“里帰り会議”。世界78か国・地域から約2000人が参加した。

 12日には主会場のびわ湖ホールで、秋篠宮さまも出席されて開会式があり、引き続き行われる全体会議では国際機関「世界水パートナーシップ(GWP)」のマーガレット・カトレイ・カールソン総裁、国際連合大学高等研究所のアミッド・ザクリ所長、川那部浩哉・滋賀県立琵琶湖博物館長が基調講演する。

 琵琶湖・淀川流域の人と水のかかわりから世界の湖沼保全のあり方を考える「琵琶湖セッション」のほか、「文化と産業の歩み」「環境教育の新たな展開」など5分科会があり、最終日の16日に「琵琶湖宣言2001」を採択する。

(2001/11/11 読売)



異常気象・・・国際観測の先導役を果たしたい


 国連は二十一世紀を、「水危機」の時代と警告している。

 干ばつによる深刻な水不足が広がる一方で、集中豪雨による洪水という異常気象が、世界各地で起きている。
 水危機を招く異常気象の頻発には、地球温暖化の影響がある。

 この異常気象と温暖化の関係を、地球規模で科学的に解明しようという「世界気候研究計画」が始まった。
 各国の人工衛星と五大陸の二十五か所の地上拠点から二年間、世界の気象を同時集中観測しようという国際協力だ。国連の世界気象機関(WMO)などの国際機関と、各国が共同で実施する。

 気候や環境の科学的研究・評価の多くは、特定の地域や国ごとにバラバラに行われてきた。今回の計画は、日本を含めて世界の様々な研究を、「温暖化と異常気象」という共通のテーマに沿って、地球規模で統合しようとする試みだ。
 計画を発案し、各国や国連機関に呼びかけて実現させたのは、東京大学の小池俊雄教授で、日本発のプロジェクトでもある。弱点は、寄り合い所帯のため、各国、各機関を調整・統合する運営予算も人材も足りないことだ。
 計画の発案者であり、技術、資金力もある日本に、積極的な役割を果たすことが求められている。

 異常気象は、地球全体の水循環の急激な変動が原因とされる。地表・海面から出る水蒸気は、雲↓雨・雪↓地下水に循環する。この水循環が温暖化の影響を受けて地球上で刻々、様々に変化する。

 計画では、人工衛星のセンサーが大気中の水の分子の分布をとらえ、地上の拠点は、土壌中の水量を自動観測する。二〇〇五年に、観測記録をデータベース化し、世界の各地域ごとに三ないし六か月後の雨量の数値予測モデルを作る。
 そうなれば、世界の特定地域の干ばつや集中豪雨という異常気象が、かなりの精度で予測できるようになる。

 この意義は大きい。洪水や水不足という世界の水危機に早期に対応できるようになる。さらに、温暖化がもたらす地球環境への影響がより明確になり、温暖化防止の国際協力を前進させるだろう。

 一方、国連などの提唱で、日本の国立環境研究所を含めた世界の研究機関が、温暖化の生態系への影響を長期予測する国際共同研究「ミレニアム生態系評価計画」も、六月に始まっている。
 究極の環境問題は世界の水危機、といわれる。これに対処するには、地球全体の体系的、定期的な環境情報の収集、分析が必須になる。日本が大いに貢献すべきところだ。

(2001/10/28 読売社説)



水都再生:大阪・道頓堀川で水泳大会を 街おこし団体


 道頓堀で泳ごう!――水の都・大阪の再生を目指す街おこし団体が、04年8月、大阪・ミナミを流れる道頓堀川での水泳大会の実現に向け活動を始めた。道頓堀川は現在、大阪市が「水都の象徴」として再生に乗り出し、水質も徐々によくなっている。現状では「泳ぐにはちょっと……」(河川課)だが、団体は「実現のため、行政に奮起を求めるとともに、われわれ市民が立ち上がらなければ」としており、今後、いっそうの水質浄化などを大阪市へ働きかけ、市民の河川美化意識の向上を目指す。

 街おこし団体は「ふるさ都・夢づくり協議会」(都島区)。会長の須知裕曠(やすひろ)さん(54)は今年、淀川や大阪市内の大川や道頓堀川などに遊覧船を浮かべ、江戸時代の舟運(しゅううん)(水上交通)復活を呼びかけてきた。水泳大会は04年8月4日に、道頓堀川で最もにぎわっている戎橋(えびすばし)や日本橋付近で実施する計画。11月中旬に文化人や学校の教師などで第1回の実行委員会を開く。

 道頓堀川は、約20年前には汚染に強いコイやフナしか見つからなくなり、川床にはごみや自転車まで捨てられていた。同市は95年度から再生作戦を始めた。同川の西端と、同川に通じる東横堀川に水門を設置(昨年11月稼働)し、汚水の流入を制御。水中の酸素量を増やし、噴水などを設置したほか、ほぼ毎日、清掃船を出すなどしてきた。また、市民が川に親しめるよう、水面と同じ高さの遊歩道を整備することにしている。

 しかし実際に泳ぐとなるとクリアすべき課題も多く、同市の昨年度の観測データ(平均値)では、COD(化学的酸素要求量)は、大阪府の海水浴場の水質判定基準を満たすものの、大腸菌群や透明度は下回っている。同市は「泳ぐとなると改善する点がまだまだ多いが、川を美しくしようという趣旨はありがたい」と話している。

 須知さんは今後、河川浄化に取り組む市民団体などとネットワーク作りを進めるほか、市民や企業、行政と一体となった運動の輪を広げる方針。「可能性がないとあきらめるのではなく、3年後の夏を夢物語に終わらせないよう、市民にもっと関心をもってもらいたい」と話している。問い合わせなどは同協議会(06・6929・0110)。

[毎日新聞 2001/10/24]



「おこし」コンクリ、水辺を守る
すき間多く植物育つ 課題はコスト

ポーラスコンクリートのサンプル
ポーラスコンクリートのサンプル。すき間を水が通過していく=大阪府東大阪市の近畿大で

 お菓子のおこしのように、すき間がいっぱいの「ポーラス(多孔質)コンクリート」が、河川工事で注目されている。すき間に植物が根を張ることができるので水辺の植生を保つことが期待できる。コンクリートで覆われた川の景観を変えるものになるかも知れない。

 ふつうのコンクリートは、砂利(粗骨材)、砂(細骨材)、セメントを混ぜてつくる。すき間をつくらないのが理想とされる。

 ポーラスコンクリートは砂を使わず、砂利だけをセメントで接着させるのが特徴だ。すき間がたくさんでき、でっかいおこしのように見える。

 ●ポーラス護岸
奈良県大和郡山市の佐保川。今年3月、水際をポーラスコンクリートで補強した直後(国土交通省大和川工事事務所提供)。
工事から半年後で、植生が回復している

 奈良県大和郡山市を流れる佐保川の護岸工事にポーラスコンクリートが使われたと聞いて9月初めに見に行った。

 工事を終えてほぼ半年がたつ。水際のポーラスコンクリートに野草が根付き、岸をほとんど覆っていた。対岸の水際で、ふつうのコンクリートがあらわになっているのと対照的だ。

 工事の場所は支流との合流地点で、豪雨の時には支流からの急流が当たるところ。「数年前だったらコンクリートで固めていただろう」と国土交通省大和川工事事務所の松山宣行副所長は話す。

 旧建設省(現国土交通省)が「多自然型川づくり」を打ち出したのが90年。川底と両岸をコンクリートで覆う「コンクリート3面張り」の河川整備に批判が高まったのを受けて、さまざまな工法の検討を始めた。

 流れが緩やかなところでは、自然石や木製品などが組み合わされるようになったものの、急流が押し寄せる場所はコンクリートブロックなど頑丈な材料を使うのはやむを得ないとされてきた。

 そんな中で注目を集め始めたのが、雨水を地面に通す透水性がある舗装材として一部で使われていたポーラスコンクリートだった。

 速い流れにも耐えられる▽すき間の大きさを変えることで、さまざまな植物を根付かせることができ、強度も調節できる▽現場で砂利とセメントを調合してつくったり、工場でブロックにしたりできる――などの利点があるからだ。

 ●200カ所で

 旧建設省所管の先端建設技術センターは「ポーラスコンクリート河川護岸工法検討委員会」を設けて普及を図ってきた。検討委は中部地方建設局の委託でマニュアルもつくった。
 委員長を務めた近畿大理工学部の玉井元治教授(コンクリート工学)によれば、これまで約200カ所で施工例がある。
 しかし、植生が回復していないケースもあるうえ、耐久性にも課題があるという。コストも高い。佐保川の例だと1平方メートルあたり3万1千円。ふつうのコンクリートの1万5千円のほぼ倍だ。

 玉井さんはこう話す。
 「試行錯誤は続くが、課題は克服できるだろう。びっしりと詰まったこれまでのコンクリートよりは、すき間がある分だけ自然界と調和しやすいが、どのように調和させるかを、各現場で探り続けなければならない」

 ○「自然本来の姿を探れ」 生態学の専門家は注文

 合格だが、満点ではない――。生態系を重視する専門家たちは、ポーラスコンクリートを環境に配慮した材料と認めつつも、注意を促す。
 「コンクリート3面張りよりは、はるかにいい。植生があることで動物たちにとっていい環境が保たれる」と、京都大農学部の森本幸裕教授(緑地学)は評価する。

 だが注意しなければならないのは「植生」の中身だ。
 河川が自由に蛇行していたころの流域は、冠水したり干上がったりするなど変化が激しい環境で、そこに特有の植物があった。ところが、河川が直線化されると環境が安定し、本来いた植物の姿が消えた。
 森本さんは「ポーラスにすれば河川の生態系が回復する、と考えてはならない。本来の生態系がどうなっていたかを認識しておく必要がある」と注文をつける。

 河川工事の「多自然工法」という名前を「近自然工法」に変えようと提案しているのは、京都大防災研究所の上野鉄男・助手(河川工学)。
 自然石や木製品を使う護岸工法は、自然にあるさまざまな材料を使うという意味で「多自然」ではあるが、本来あった自然な河川の姿ではないと指摘する。

 「本来の川の姿を探った上で、その姿に近づける『近自然』を目指すべきだ。その中で、必要に応じて新しい材料を使えばいい」

(朝日 2001/10/01)



「天声人語
 2001/11/19 朝日新聞

 「水辺」というかわりに、「水際」という言葉がつかわれるようになったころから、湖や河川をめぐる様々な問題が起きてきたそうだ。滋賀県で開かれた第9回世界湖沼会議で、県立琵琶湖博物館の川那部浩哉館長が、そんな発言をしていた。

 山辺、野辺、浜辺というように「辺」という言葉には、あたり一帯の意味がある。対象をあいまいかつ大雑把にとらえるのだ。水位の変化で、あるときは湖に、あるときは陸地になるような場所が水辺と呼ばれたのは、その意味で実情に即していた。

 一方、「際」には境界をはっきりさせる意味がある。「際立つ」などの言葉を思い浮かべると、分かりやすいだろう。琵琶湖でいえば、コンクリートで護岸をし、岸辺を埋め立てて、湖と陸地を隔絶したころから水辺は水際になった。

 水辺が失われてヨシの群落が激減し、湖水の浄化機能が衰えた。産卵場所だったヨシ原や砂地が減って、魚も減った。流入する川も、川底と両岸がコンクリートで覆われ、魚の生息場所が奪われた。人も水から遠ざけられ、水辺への愛着も失われた。

 そういえば、こんな詩の一節がある。「暗き 浜辺 を たどり来たり、 水際(みぎは) 真近く 砂 を 握る。……」(岩野泡鳴)。「浜辺」があって「水際」がある。そして人は浜辺をさまよい、水際を眺める。

 自然が営々として築いてきた天然の境界、水辺や浜辺を人間がつぶしていく。元に戻すには、どれほどの時間がかかることか。人間社会を守るためだったのかもしれないが、人間が失うものも大きい。



火星、誕生期は水の惑星

 火星の大気中の水素分子が米国の遠紫外線宇宙望遠鏡で初めて観測された。量から推計すると火星は誕生直後、全地表にならして深さ30メートルに相当する水をたたえる「水の惑星」だったこともわかった。成果は、30日付の米科学誌サイエンスに発表される。ジョンズ・ホプキンス大(米メリーランド州)が1999年に打ち上げた遠紫外線を感知できる望遠鏡を使い、同大のポール・フェルドマン博士らが観測。水素分子から放出される特有の遠紫外線をとらえることに成功した。

 遠紫外線の強さから水素分子の量を推計し、火星の大気の状態の変化を、約46億年前の火星誕生までさかのぼって推定。平均して深さ30メートルに達する水は、徐々に蒸発し、上空で水素と酸素原子に分解され、水素原子が宇宙に放出されながら減っていったと考えられている。

 火星にかつて生命が存在していたとすると豊富な水が欠かせない。米国は、探査機「マーズ・オデッセイ」を火星に送り込み、水の検出を目指している。

(2001/11/30 読売)


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