水の自然環境館② 


酸性雨の現状 

 火力発電所、石油コンビナート、自動車などから排出される硫黄酸化物、窒素酸化物など酸性気汚染物質が雪や雨に溶けて地表に降下するものです。
それが様々な環境破壊と人体影響を引き起こし、生態系の衰退を促進している。

 わが国の工業化の進展に伴って雨水の酸性が強まり、pH値は酸性値を示すようになりました。
企業は公害対策の一つとして、煙突の高さを50メートルから200メーターに切り替えるいわゆる高煙突拡散方式で地元地域の局所高濃度汚染を回避しました。
 しかし、其の分、大気汚染はまんべんなく全国を覆い、最近では季節風との関係で中国大陸の工地帯の汚染大気が日本海や東シナ海を越え、国境を越えて日本に飛来してくるようになりました。
陸続きの欧州では工業地帯と酸性雨の相関関係が明らかで、森林被害が顕著です。
1985年の欧州(英/仏/独)のpH値は、4.3〜5.1。1985年の日本のpH値は、4.4〜5.5

更に、高速自動車道路網の発達と自動車の急激な増加による排気ガスの汚染が大気汚染に拍車をかけています。全国の酸性雨のPH値の推移をみても改善されているとは言い難い状況です。

死の湖への移行
水の酸性化に対して魚類は感受性が高いのです。
魚類は湖沼の水素イオン濃度ph5以下では生息できない。
また、湖沼のpHが5以下に低下するとそれまで問題にならなかった金属が酸性の水で溶出し、プランクトン→小魚→大型魚と食物連鎖で生物濃縮され、体内濃縮度は高まり死滅して、湖は最終的に死の湖になっていきます。
勿論、そこで獲れた魚を長いあいだ食べ続けると人間も蓄積の許容限界を超えて病気になるのは当然です。
1970年代にスウェーデンの6万6000湖の内約2万湖が死の湖となり、いま湖の蘇生のため石灰を投入し中和しているそうです。
◆認識を改め、行動を!
いま、私たちは「酸性雨は植物(樹木)だけに影響を与えるという認識」を改め、金属を溶解し、その水(生命の水)を通して、全生物を含めた生態系を死滅させつつあるという認識にたたなければなりません。
   その酸性雨の原因を考え、人間の英知でそれを克服する努力をしましょう!
そもそも酸性雨とは

 
酸性雨は産業活動の直接的な結果です。化石燃料の燃焼により上空へ排出された二酸化硫黄が、水と反応して硫酸を生成します。同様に、汚染大気中の窒素酸化物は硝酸に変化します。これらの物質が、その後、雨や雪になり地上へ降りてくるのです。酸性雨の降下場所は、気象パターンや風により左右され、実際に生成された場所から500キロメートルも離れた地点に降下することもあります。

 硫酸や硝酸は、すべての植物体にとって有害です。植物は、酸性の降水を受けると火傷を負い、黄色く変色し、枯死します。もし、この現象がある地域に集中すると、森林および森林が支える全生命体が死に至る場合もあります。酸性雨により、世界のいくつかの工業開発地域--ドイツ、スカンジナビア、インド、ロシア、中国、カナダ、米国など--で今、森が死につつあります。

 さらに、酸性雨は湖や川の生態系を破壊します。いくつかの国では、酸性雨のために生命体が存在し得なくなったり、人の行楽活動が禁じられた湖があります。人々が魚に生存を頼っている地域では、酸性雨は多くの深刻な問題をもたらすおそれがあります。

 生態系の全体を死に至らせる以外に、酸性雨はまた、国の重要な宝物や建造物の数々をむしばみ、同様に交通体系に欠かせない橋梁などの構造物を風化します。
 北米やヨーロッパにおける広域的な調査では、しばしば通常の十倍も強い酸性度の雨が観測されています。カナダ、スカンジナビア、スコットランド、および米国の何千もの湖が影響を被り、その多くで魚が全滅しました。かつては酸性雨は、先進国だけの問題でしたが、次第にブラジル、中国、インド、そしてジャマイカといった国々でも問題が表面化しています。

 酸性雨の問題は、すべての環境問題の相互関連性を示す一例です。すなわち、廃棄物の問題(ガス排出)に始まり、大気の問題(空気中のCO2や化学物質)に変わり、最後に森林や土地利用の問題(森林の死滅や砂漠化)そして水の問題(強い酸性度の湖水)に至るのです。


悲惨な酸性雨 
酸性雨で大きな魚が釣れる!?
☆今、世界中で酸性雨の被害が問題にされています。
 ところが、酸性雨の被害を受けたという湖の多くでは、魚がいなくなる前に大きな魚が釣れることがあるのです。

☆ノルウェーでは1976年まで20インチ以上のイワナはいなかった、
 ところが1982年ごろには、釣れるイワナの半数が20インチ以上の大きさになりました。はじめ漁師達は、原因がわからずただ喜んでいました。

☆しかし、その数年後には、湖から魚の姿が消えてしまいました。
 これは、酸性雨汚染の初期の兆候に見られることで、酸性雨によって弱い魚が死んで、他の魚の餌が増えるためです。さらに、酸性雨中に含まれている物質が、肥料の代わりとなり、プランクトンなどの餌が増えることも原因の一つとして挙げられます。

日本海側と太平洋側で異なる酸性雨!?
☆酸性雨の原因となる物質、石油や石炭にたくさん含まれています。しかしこの2つに含まれている原因物質は異なります。

☆太平洋側では自動車の排気ガス、日本海側では中国が石炭を燃やしていることが原因で酸性雨が見られます。
 そのため太平洋側では窒素酸化物による酸性雨、日本海側では、硫黄酸化物による酸性雨が降り注いでいるのです。

都会の雨は水を汚す!?
☆森に降った雨は木の葉や幹を伝わって、ゆっくりと流れ、土の中にゆっくりとしみていき、それから時間をかけて川にしみ出ていきます。
 ところが、都会では降った雨がコンクリートで固められた排水溝に水がどんどん集められて、あっという間に川に流れ出てしまいます。

☆都会では車の排気ガスや工場からのちりなど様々な汚染物質が舗装された道路や家の屋根などのあらゆるところに降り積もっています。
 雨が降るとその汚染物質が洗いながされ、街はきれいになりますが、川が汚れてしまうのです。

ある日突然森がなくなる!? 
☆酸性雨という言葉を最近よく耳にします。
 大気汚染などによって酸性になった雨のことを言うのですが、この雨は湖や沼から魚を奪い、森を枯らせたりする恐ろしいものです。

☆実は、酸性雨が森を枯らす場合、少しずつ木が枯れていって、最後には死に絶える、ということではないのです。
 というのは、雨が酸性になっても、見かけでは木にはそれほど変化はみられなく、ある日突然、木々が一斉に枯れるのです。この現象は「アシッド・ショック」と呼ばれます。

☆木が酸性の水を吸収すると、木そのものが弱くなるというよりも、木の抵抗力が弱まってしまいます。そのため、干ばつや寒波がやってくると、その刺激で木がやられてしまうのです。

森は緑のダム!?
☆森の土は落ち葉などの堆積などでスポンジのように隙間をたくさん持っています。
 そのため、雨が降った時には、森の土がスポンジのように水を蓄えてくれます。そうしてたまった水が少しずつ川に流れ込み、何日もの間、川の流れを作り出しているのです。これによって、雨で川が急激に増水して、氾濫することがなくなる。

☆また、雨がずっと降らなかった場合にも、川が枯れることがないのです。まさに、森は緑のダムなのです。

植物の水はやさしい!?
☆ヘチマ水というものがあります。
 ヘチマの茎を切るとそこから出てくるもので、一晩で1リットルもの水を集めることができます。

☆ヘチマ水は最初、薬として使われていました。その後、江戸時代になって庶民の間で化粧水として使われるようになりました。
 ところが現在は、化学成分の化粧水が主として使われています。こうして消えていったヘチマ水ですが、最近また注目されています。
 これは消費者が自然型志向になったことが原因として考えられます。自然のものならば肌にやさしいという考え方があるのでしょう。

☆自然が人間にやさしいというのは多少、疑問が残りますが事実、その化粧水を使った人達はその効果を認めているのです。

森がある日を救う!?
☆森が私達の生活をどれほど支えているのかは、「もし森がなくなったら?」を考えることで理解できるでしょう。

☆ある日突然森がなくなったとします。するとまず、葉から蒸発や蒸散によって大気にもどるはずの水の3分の1が雨となって山の土に降り注ぎます。
 また木の葉によって少しずつ土に降るはずの雨も土に直接、降り注ぎます。そして木の葉によって支えられていない土は、土石流となって流れていきます。
 しかも、少しずつ水を流していた土がなくなってしまうのでより急激に川に流れ込んでしまうのです。

☆このように数多くのしくみで森が人間を支えているのです。



酸性雨Q&A  

酸性雨って何ですか?
酸性雨とははpH5.6以下の雨のこと(ワインは4、酢酸は3、胃酸が2)
1960年以降、pH4以下の強い酸性のものが珍しくない
大気汚染物質が雨水に溶けて硫酸や硝酸になる
SOX+H2O⇒H2SO4(硫酸)
NOX+H2O⇒HNO3(硝酸)
 酸性雨で、どのような影響が出たのですか?
1960年以降、北欧やカナダの川や湖から魚がいなくなった
魚のいなくなった川や湖の水は酸性を示していた
通常は川や湖の水は中性pH6.5〜7だが、pH6でエビ、カニ、貝が。pH5.5でサケマス。pH5でもっとも酸性に強いウナギ。pH4.5以下では一切の生物が死滅するプランクトンや水藻も死に絶える「透明な死の湖」となる。
髪が緑色に!!
1960年、北欧で髪が緑色になる事件が多発。これは水道水が酸性化し、水道管の銅が溶け出して髪を変色させた
死んだ魚から高濃度の金属を検出(土が酸性化するとアルミや銅など金属イオンが溶け出す)
人間にも被害(アルツハイマー病はアルミが脳に蓄積)
最大の被害は針葉樹
魚が消えた地域の森林に大きな被害が出始めた
東欧最大の国立公園、チェコのクルコノシェは突如将棋倒しで全滅
土が変質し植林しても木が育たない
北欧、カナダを始め世界各国に大きな被害(立ち枯れ、白骨化)
針葉樹は酸性雨に弱い(落葉しないのでダメージが蓄積/裸子植物)
酸性雨で弱った森林は病虫害にも抵抗が無くなる(殺虫剤は逆効果)
酸性雨の被害は、ある日突然 
自然界は中和能力があるが、それが尽きると急に酸性になる
突然魚が死に、森林が枯れる
これをアシッドショック(酸性ショック)と呼ぶ
酸性雨は大理石や金属を破壊
平均すればpHが2小さくなった(酸性強度が100倍)
欧州では国宝級の建物や彫刻が酸性雨で溶け始めた
東欧では鉄道レールも腐食して危険
酸性雨の歴史はどのようなものですか? 

産業革命が最も早く進行したイギリスでは「陰惨な煙はロンドンを覆っている」、「庭の果物も実らず、子供の半数は2才以下で死んでいる」など早くから深刻な事態が報告されていた。
1852年、スミスが初めて酸性雨(Acid Rain)と名付けた
1952年、「殺人スモッグ」が発生、死者4000人
1956年、大気浄化法で高層煙突を推進、被害は全欧州に広がる
1960年、森と湖の北欧で被害が目立ち始める
1972年、ストックホルムで世界初の「国連環境会議」が開催される

日本では酸性雨の実態はどのようなものですか? 
1936年、東京4.1、神戸5.2、浜松5.6(最初の記録)
1966年、四日市の公害対策として高煙突化、被害が広域化
1970年、皇居など東京のスギに立ち枯れが目立つ
1974年、関東で酸性雨、3万2000人に被害
1980年、日光白根山のダケカンバ、苫小牧の松、佐賀県のアカマツ、赤城山のシラカバ、妙高高原のドイツトウヒが立ち枯れ
日本は火山性土壌で酸性雨に強いといわれていたが、土壌調査の結果、すでに7割がpH5〜6の酸性化
東京湾を中心とする60キロ圏ではほとんどの地域で深刻な被害が出ており、ほとんど枯れ死状態の重度被害が放射状に広がっている
主要都市を中心に約4割の測定地点で同様の状態が進行している
日本の湖沼も30年後には死の湖になると予測(環境庁報告)
※山陽一帯は松などの立ち枯れが多いが、特に東広島はひどい
私たちはどのようにすればいいのでしょうか?



自動車、マイカーの使用を減らす(都会のNOXの半分が自動車)
マイカー通勤、都会への乗り入れの制限(欧州の主要都市では始まっている)
駐車、荷物の積み下ろし、人待ちなどでエンジン停止
欧州では赤信号でもエンジン停止
ディーゼル車をやめる(NOXや黒い粉塵はガソリン車の10倍以上)
火力発電所も大気汚染の原因、電気消費を減らす

ダイオキシンとは
 ゴミが燃えたガスには、大気を汚染する様々な物質とともに、ダイオキシンという、地球上最も有毒な物質が出ることがわかりました。
 ダイオキシンは、塩素を含むプラスチックのゴミを摂氏800度以下の比較的低温で燃やしたときに発生し、分子中に塩素を含むジベンゾ・パラジオキシンとジベゾン・フランの総称で75種類の異性体があります。
 その中で最も毒性の強い2・3・7・8四塩化ジベゾン・パラジオキシンの致死量は、体重1kgのモルモットに換算して0.00006mgです。
 この毒性はフグの毒の10倍、青酸カリの1万倍、あのサリンと比べても10倍もの毒性を持ち、合成された毒としては世界最強の猛毒といわれています。
 ダイキシンは歴史的には1872年にドイツで作られたのが最初ですが、現在発生し続けているダイオキシンは偶然にできてしまったもので、プラスチックの燃焼や紙の塩素漂白などによって生成、あるいは自動車の排気ガスに含まれて大気中に放出される有機塩素系化合物です。
 ただし、ダイオキシンの発生量でみると、約80%がゴミ焼却場からの排出です。焼却温度が摂氏800〜900度の高温で燃やすことで、このダイオキシンの発生を減少させることができますが、こうした高温で焼却できる施設は、まだほんのわずかしかありません。

ダイオキシンは体内に蓄積される
 発生して環境中にまき散らされたダイオキシンは、土壌や水質を汚染していきますが、塩素系化合物の特徴である極めて分解しにくいという特徴を持っています。
 その一方で脂に溶けるという性質があるため、生物内の脂肪に蓄積され、食物連鎖のなかで、濃縮されています。
 そのため体内に入り込んだダイオキシンは、ほとんどが食べ物を通じて蓄積されたものと考えていいでしょう。特に日本は外国と比較しても、魚介類からの摂取量が多く、その量は欧米の3倍にもなると言われています。
 食べ物以外にも大気・水・土壌からダイオキシンは体内に入ってきます。
 1996年12月に発表された環境庁の報告によると、ダイオキシンの推定摂取量は次の通りとなります。(1日に体重1kg当たり)
 大都市地域  0.52〜3.53ピコグラム 
 農村山間部  0.29〜3.29ピコグラム 
 ゴミ焼却施設周辺   1.79〜5.09ピコグラム 
 このように、ゴミ焼却施設周辺に住む人のダイオキシンの推定摂取量は、他の地域と比較して非常に高い値を示しています。
 体の中に取り込まれたダイオキシンは脂肪中に多く蓄積します。母乳からダイオキシンが検出されるのも、母乳に含まれる脂肪に溶け込んでいるためです。
 このダイオキシンが与える人体への影響は調査段階であり、今後も調査の継続が必要なわけですが、産業廃棄物処理場の周辺地域では、新生児の死亡率が高くなっている、肝ガンの増加を促す、などが報告されています。
一人一人が考えなければ

 1983年にゴミ焼却施設からダイオキシンの排出が確認されてから14年が経ちますが、ダイオキシン発生の防止策は全く打ち出されてきませんでした。
 アメリカなどではダイオキシンの毒性研究が1970年代から行われているのに比べれば、日本のダイオキシンに対する認識が甘かったと言わざるを得ません。
 また、1997年に入り、世界保健機関(WHO)の国際ガン研究機関は、ダイオキシンの発ガン性評価を見直し、「可能性がある」を最も危険性の高い「発ガン性がある」に変更しました。
 日本国内でもダイオキシンの摂取基準や排出対策について改めて見直すべきではないでしょうか。

 また、私たち一人一人も、ゴミは捨てれば処分してくれるだろうという考え方を改めなければなりません。
 すでに焼却・埋め立て中心のゴミ処理方法は限界にきています。ゴミの行き場は確実になくなりつつあるのです。
 これまで人間は豊かさを追い求めるために努力してきました。しかし、これからは豊かさを維持するためにも努力を続けなければなりません。人間が作り出してしまった猛毒、ダイオキシンをこれ以上出さないように、また出してしまった有毒物質を無毒化するために、より多くの努力が求められるのではないでしょうか。
母乳は大丈夫?

 プラスチック、塩化ビニール、ラップ、ウレタンなど塩素化合物を燃やすとダイオキシンが発生します。このダイオキシンを含んだ煙や灰が大気や土壌、水質を汚染し、生物内の脂肪に蓄積され、食物連鎖のなかで、濃縮されています。そのため体内に入り込んだダイオキシンは、ほとんどが食べ物を通じて蓄積されたものと考えられます。
 この猛毒ダイオキシンの汚染で最も心配されるのは、汚染された母乳による赤ちゃんへの影響です。赤ちゃんは感受性が高いうえ、母乳のダイオキシン汚染度が他の食べ物より高いという報告があるからです。
 ダイオキシンは分解しにくく、植物やプランクトンを食べる小動物、小魚からそれらを食べる大型動物へと生物濃縮され、特に脂肪に蓄積されることがわかっています。このため母乳の汚染度が高くなります。
 現在のダイオキシン汚染が赤ちゃんの健康に直接影響を与えているかどうかについては、はっきりとした証拠がありません。しかし、動物実験などでのデータは各国で報告されています。
 約30年前、西日本を中心に発生したカネミ油症事件は、米糖油に含まれたダイオキシン類のポリ塩化ダイベンゾフランと、ダイオキシンと似た働きをするコプラナーPCBの中毒であることがわかってきています。
 では、母乳は赤ちゃんに与えないほうがいいのでしょうか。
 母乳の利点は尊重しなければならないでしょうし、かといって赤ちゃんのダイオキシン汚染はできるだけ少なくしてあげる努力は必要です。そこで、最初3カ月ほどは母乳をあげ、その後で人口乳に切り替える混合保育が現時点で取れる防衛策です・・・と提案している研究者もいます。

食生活を見直す

 私たちが毎日摂取するダイオキシン類の98%は食べ物から取り込まれています。特に日本では、魚介類を食べるため、魚介類からのダイオキシン摂取量は全体の60%に達しています。沿岸、近海魚の汚染は遠洋、輸入魚より高い傾向にあります。
 また、日本人は体重1kg当たり1日平均3.72ピコグラムのダイオキシン類を食べ物や空気、水などから摂取しています。耐容摂取量の10ピコグラム以内には収まっていますが、コプラナーPCBを含めると12.4ピコグラムとなり、耐容摂取量を超えています。
 ダイオキシンは1度体内に入ると、排出されにくい毒物です。量が半分になる半減期は、血液中で4〜11年、脂肪組織で3〜10年もかかると言われています。このため、蓄積濃度は年齢と共に増加する傾向があります。一方で、解毒薬や吸収剤などは開発されていません。
 しかし、30年もカネミ油症の研究を続けてきたグループが、食物繊維にダイオキシンを大量に吸収する働きがあることを突き止めました。
 動物を使用した実験からも、米糖やホウレンソウの食物繊維を食べさせるとかなりの量のダイオキシンが腸に吸収されず、糞となって排出されることが確かめられました。
 日常的に食べる食物繊維に、ダイオキシンを吸収、排出する働きがあること、また葉緑素にも同じ効果があることが認められており、ダイオキシン対策として食生活を見直す目安になるかも知れません。

簡単に燃やさない  

 環境庁が今夏まとめた昨年のダイオキシン測定結果では、首都圏や政令指定都市などでは中央環境審議会が定めた指針値を上回っています。また、94年の測定結果と比較して3倍近くに増加しています。米国やドイツの10倍、汚染の少ないスウェーデンの40倍という濃度です。
 主な原因はゴミ焼却量の多さです。ダイオキシンは前述の通り、塩素系プラスチックのゴミの不完全燃焼で発生しやすく、国内で発生するダイオキシンの90%に当たる量がゴミ焼却炉から放出されています。
 厚生省と環境庁は、焼却場のダイオキシン排出基準を設定し、97年12月から規制に乗りだしますが、小型の簡易焼却炉については現段階では自主規制してもらうしか方法がないようです。
 また、ダイオキシン類が発生しやすいプラスチックを分別、回収し、可燃ゴミに回さないことでダイオキシン排出量が押さえられたという焼却場の報告例も相次いでいます。
 ダイオキシンを元から断つには、ダイオキシンの原料になる塩素をプラスチックから取り除くことですが、今の段階で私たちにできることはダイオキシンの材料となるプラスチックを見分けることでしょう。
 しかし、現実的には、食品の包装には何種類もの複合材料が使われており、消費者には区別がつかないものも多いようです。ダイオキシンが発生する可能性がある塩化ビニールや塩化ビニリデンは、安価で使いやすく、さまざまな用途に利用されていますが、せめて食品容器からは根絶することが重要でしょう。スーパーや生協などでは、ポリ塩化ビニールやポリ塩化ビニリデンをできるだけ使わない容器に替える動きも出てきています。

プラスチックを分別
プラスチックの毒性と焼却した時にできる毒物 - マークでわかる選別法
プラスチック(記号) 毒性 焼却中できる毒物
ポリエチレン(PE) ほとんどない きれいにもやせる
ポリプロピレン(PP) ほとんどない きれいに燃やせる
PET樹脂(PET) ほとんどない 煤(すす)
ポリスチレン(PS) 発がん性
中枢神経作用
フェノール樹脂(PF) 発がん性
ABS樹脂(ABS) 発がん性 青酸ガス
AS樹脂(AS) 発がん性 青酸ガス
ウレタン樹脂(PUR) 発がん性 青酸ガス
塩化ビニール樹脂(PVC) 発がん性 ダイオキシン
塩化ビニリデン樹脂(PVDC) 発がん性 ダイオキシン
ペット樹脂
高密度ポリエチレン
塩化ビニール
低密度ポリエチレン
ポリプロピレン
ポリスチレン
テーマ館目次 BACK TOP NEXT