水の科学・化学館②  


おいしい水道水」の裏側
  水は全く何も含まれない純水が美味しいかと言うと、これが全然美味しくないし、かえって常用すれば体に悪いと言われています。硬度成分のない軟水も同様です。

 水の味はそれに含まれる成分とそれらの間の微妙なバランスによって決まります。常温ではまずいとされた水道水も、10〜15℃ぐらいの温度では、市販のミネラル水より美味しいという結果のでた「きき水の会」が結構多くあったと、マスコミは伝えています。

 水の味も他の食物の味と同じくたぶんに感覚的なところがあり、人によって多少異なるばかりではなく、温度や気象条件、体調、その時の気分などによってもある程度左右されると思います。

 このように見てくると、結局、100人中96人が飲んでいる日本の水(水道水)は、まずい水の要素(カビ臭やドブ臭、カナケによる異臭味など)を除去し、適度の冷たさに保てば美味しい水になると言ってよいのではないでしょうか。

水の味   

水を飲んで、美味しい、まずいと感じる事もあるだろうけど水は 本来ならば 無味無臭・無色透明だけど本当に 無味の蒸留水は まずいと感じます。

美味しい水の条件は、いろいろあるけど軟水であるのが、第一条件であり第二の条件として水の温度も、味に大きく影響します。

13℃あたりで水は美味しいと感じるし、お湯の場合では 70℃程度の温度が美味しいといわれている。中間の温度では、あまり美味しく感じない。

第三の条件には微量の炭酸ガスを含んでいる水が、旨味を感じるけど生き生きした、谷間の清水や湧き水が美味しいのは炭酸ガスを含んいることと少し酸性になった水のほうが、美味しいからである。

貯水されてたり、ためおきの水が美味しくないのは炭酸ガスが逃げてしまっていて pHが高くなっているせいもある

「高い 遅い まずい」みず!?
☆水を安全に飲むためには、塩素を入れて殺菌しなければいけません。
 しかし、塩素を入れると、水はまずくなってしまいます。さらに、塩素を入れるだけではとても飲める水にはならないほど汚れた水は、高価な技術によって、やっと飲める水にされます。そのため、浄水場が大規模となり、水ができるまでにお金も時間も労力も使うのです。お金をかけてつくった水は、とても高価です。しかも、それほどおいしくありません。

☆まさに、「高い 遅い まずい」水というわけです。
 よって、おいしい水を飲むためには自然をいかに大切にするかが重要になってくるのです。

ミネラルウォーターは自然の水!?
☆最近、ミネラルウォーターが人気を集めています。
 一口にミネラルウォーターといっても、それに含まれるミネラルの種類や量は様々です。それらを目的によって使い分けることが大切です。

☆たとえば、水道水がまずいからといって、硬度の高いミネラルウォーターで緑茶を入れてもおいしくありません。また、健康のためにミネラルを補給しようとするならば、硬度の低いミネラルウォーターでは効果はあがりません。

☆また、ミネラルウォーターの中には、殺菌や除菌だけでなく他の水と混ぜたり、人工的にミネラルが添加されるものもあります。

浄水機は万能か!?
☆「浄水器を使えば家でも手軽にミネラルウォーターが飲める」と誤解している人がいますが、それは大きな誤りです。
 浄水器を使っても、基本的に水に含まれるミネラルの量に変化はありません。浄水器は、水の香りを悪くしている塩素を取り除いてくれます。確かに、ミネラルの量が増えてくれるわけではないにしても、もとの水よりはおいしく飲めるようになるはずです。

☆しかし、浄水器も使い方を誤ると、その機能が生かされません。
 たとえば、フィルター式の浄水器の場合、フィルターを半年に1回ぐらいには交換しないと、もとの水よりもまずくなってしまうことがあります。また、殺菌を殺す塩素を取り除くのですから、フィルターを通ったあとの水がたまっていると、細菌が繁殖してしまいます。

☆これを防ぐためには、浄水器をしばらく使っていなかった時に、蛇口をひねって、たまった水を追い出してから水を使うようにして下さい。

水道水の矛盾!?
☆私たちは毎日欠かさず、水をからだに取り入れてます。ですから、その水が私たちの健康に影響を与えるというのは言うまでもないでしょう。その水が汚染されていればその影響は見逃せたものではありません。

☆水道水はそのほとんどが塩素で殺菌されています。
 塩素は戦争の兵器として使われるほど人間にとって有害なものです。そんなものを水道水に入れて人間に無害なわけはありません。人に害のある菌を殺すために、人に害のある塩素を加えているのです。

塩素はビタミンをこわす!?
☆私たちが料理に使う水道水には、ほとんどの場合塩素が含まれています。
 浄水方法や元水の汚れ具合によって、使用される塩素の量は違いますが、今の日本ではほとんどの地域で塩素が使われているのです。

水道水「そのまま飲まぬ」47%、不信感強まる。
2001年、朝日新聞・全国世論調査

 水道水をそのままでは飲まない人が47%にのぼることが、朝日新聞社の水道水と水環境に関する全国世論調査でわかった。水道水の味を「おいしいと思わない」と答えた人が64%に達し、ペットボトルやガラス瓶に入った水を買う人が38%、家庭で浄水器を使う人が29%いた。日本は水道水が安全でそのまま飲める国といわれるが、河川の汚染など環境の悪化を反映し、水道水に対する不信感や不安感が強まっているようだ。
 調査は3月20、21日、面接方式で実施した。

 ふだん家庭で水道水をそのまま飲むかどうかを尋ねたところ、「飲む」と答えた人が50%、「飲まない」が47%とほぼ二分された。
 水道水をそのまま飲むことに「抵抗がある」と答えた人も44%と半数近かった。女性と、20代、30代で抵抗感が強く、「そのままでは飲まない」との回答も多かった。

 水道水を「おいしいと思わない」は64%。水道水を「そのままでは飲まない」と答えた人の中では「おいしいと思わない」が83%に上がる。水道水の味がそのまま飲むかどうかを左右しているようだ。
 東京都だけをみると、ペットボトルなどに入った水を買う人は61%、浄水器を使う人は45%と、いずれも高い数字が出た。

 水道水の安全性については、「大いに信頼」と「少しは信頼」を合わせると73%に達し、信頼感は強いといえる。ただ、「水源の汚れが浄水場で十分に取り除かれているかどうか不安に思うことがある」人と、「消毒用の塩素の量が気になる」人がともに52%いた。
 水道料金は「妥当だ」と受け入れる人が43%で一番多い半面、「高い」と答える人が34%いた。

 水の使い方では「家庭で食器洗いや洗濯で出る排水を、なるべく汚さない工夫をしている」と答えた人が44%、「していない」が52%だった。環境意識が高いとはいいにくい結果となった。(朝日新聞 2001/04/07)



が健康を左右する
 環境破壊による健康被害がついに各家庭の蛇口にまで押し寄せてきた。水道水に発癌物質が含まれているという事実をいまだ認識していない人は多い。地方や郊外ではなおさらのこと。空気がきれいという神話はならって水もおいしい、だから安全という意識が根強い。
 しかしながら空中散布による農薬汚染の影響は都心部よりは郊外の方がはるかに大きい。ビニールハウスの農薬、ゴルフ場の除草剤についても同様。都心部よりは地方都市、郊外に問題が生じている。

 農薬は空気・土壌、そして直接河川や地下水を汚染する。さらには大気中に蒸発した薬剤が雨に溶け込み、広い範囲の水系汚染につながる。
 水道水から水田に使用される除草剤CPNが検出されたという事実は、実はさかのぼること今から10年以上も前のことである。水田の初期の段階で使用されるCNPは、五月から七月にかけて高い値を示している。もちろん井戸水からはさらに高い濃度のCNPが検出されている。
 CNPに限らず農薬の水系汚染問題は後を絶たない。ゴルフ場の除草剤、そして住宅に使われる防蟻処理剤と。こうした農薬は、製造・販売・使用のいづれもが禁止となっても土壌中、水系への汚染は、その後10年以上も続く。

 先のCNPに関しては、平成四年十二月一日付の水道水の新水質基準によってようやくその基準値が定められた。この新基準においてはこれまで26項目であった項目が85項目に増やされ、一部基準値も激しくなっている。しかしながら月に定期的に検査される項目はこのうち46項目であり、CNPも基準項目からは除外されている。

 この基準項目に含まれている農薬はわずか4種類。
現在登録されている農薬の有効成分が約450種ということを考えるとまだまだ新基準の甘さが浮き彫りにされる。さらには、一つひとつの基準値をクリアーしていても総量基準がないことも問題ではないだろうか。
 日本は水資源が豊かでしかも水がきれいであることが前提であったし、日本料理が繊細な味を妙とし、さばいた魚を生で食する習慣を持つのも水の美しい日本ならではのことではないだろうか。

 水道水が各家庭に普及していなかった時代には、どの家庭も井戸水だった。食事の支度の時など子どもたちが交代で井戸水を汲み上げる手伝いをしていた。
 井戸水が活躍したのは特に夏場だった。もちろん冷蔵庫などない時代のことである。飲料水や果物を大きなたらいに入れて井戸水で冷やした。汗びっしょりで遊んで帰ってくるとたらいの中に大きな西瓜が浮かんでいて、縁側でほおばった。思いおこしてみれば冷蔵庫で冷やした今の西瓜とは一味も二味も違っていた
 いつの日かわが家にも水道が引かれた。これで井戸汲みから解放されるという喜びと同時に蛇口をひねると水が出ることに感激したのを覚えている。
 現在は、水道をひねればお湯まで出る。生活がどんどん便利になっていくさま。そしてそうした便利さに馴れていく自分に少し怖さを感じる。
 井戸水から水道水に変わり、さらに環境汚染がすすむ中で水がまずくなっていった。それでも蛇口をひねればいつでもどこでも水が出る。お湯が出るという生活は捨てがたいものである。

 いつしか美味しい水を求めて、少なくとも直接口にする水は美味しい水をと、お金を出して水を買う時代がやってきた。
 水道水から発癌物質が出るというニュースはペットボトルの売れ行きに拍車をかけた。早期発見により癌も治るという事例よりは、徐々に癌細胞に冒され、ひどい苦痛をともなって死を迎えるという事例がはるかに多い癌。その癌を誘発する物質が水の中に混入されているとあれば美味しいまずいの次元ではない。水のブームもうなづける。

 本来、水で恐ろしかったのは細菌だった。そしてその細菌は浄水場で殺菌され、蛇口から出てくる水は安全な水であると誰もが疑わなかった。むしろ井戸水の方が殺菌していないので環境汚染が進む中で危険とさえ言われた。

 しかしながら水道水を安全にするはずの殺菌が、実は発癌物質のひとつトリハロメタンを生成させる、いわば必要悪であることが判明し、出口が塞がれたような思いを感じた人も多いのではないだろうか。さらに殺菌剤の塩素そのものが健康を害するということが人々を不安に陥れた。
 されば、ペットボトルでも間に合わない。そこで蛇口につける浄水器がこれまた大きなブームを呼ぶ。
 東京や関西の水はまずいと言われる。塩素殺菌によるいわゆるカルキ臭さが確かに鼻をつく。ゴミ公害同様、人口密度が高ければそれだけ汚染源となる生活排水などの絶対量も多くなる。結果として塩素の量も増えるということである。

 小さい頃水遊びした近くの川が一時泡でいっぱいになっていた。夏の夜、花火大会が催されたのもこの川であった。小さな小さなさざ波をたてながら人々に涼をもたらせ静かに清らかな水をたたえていた川。川を汚すことになると廃止になってしまったけれどここでは灯篭流しが行われていた。そんな思い出いっぱいの川が溢れんばかりの泡で満たされていた時はさすがにショックだった。それが合成洗剤によるものだと知ったのはだいぶ先のことだった。 (若林礼子)

何が入っているかわからない現在の水 

 水道水源の有害物質は400から500種。浄化後でも200種程度の有害物質が残っていると言われる。発癌性ばかり指摘されるが、発癌物質のほとんどは変異原性を持ち、ともに遺伝子に直接ダメージを与える。次世代そしてさらに次の世代へと歪んだ形質を伝えてしまうことになる。
 もちろん有害物質の中には催奇形成といって妊娠中の母親を通して胎児の奇形を起こす物質も含まれている。アメリカ環境保護局の公共水道調査では人体に害を及ぼす有機物は700種あまりと発表されている。

 水質汚染そして塩素消毒という過程の中でまだまだ私たちの健康を害する知られざる物質が生成されているのが現状だ。
 生命の源である水、たどっていけば生命は水の中から発生した。そして、受精した卵子は羊水がなければ成長できない。私たちの身体の60パーセントが水であり、幼児ではその70パーセントが水であると言われる。そして一日二リットル近い水を飲料水として、あるいは食品中からとりいれている。

 水質汚染がすすめばすすむほど注入される塩素の量は確実に増えていく。そして水質汚染の原因となるさまざまな物質は、これまた私たちの生活の中で増え続けている。これらの複合汚染がどう私たちの健康を害するかについては誰にもわからない。

 海岸の埋め立て、そして山の水源や川を潰し、豊かな日本の水源をみずからの手でほおむってきた。水の自然浄化、そして生物の生息に必要な酸素の供給源となる川の流れをダムだの堰だので止めてしまったのも人間の手である。閉鎖水域で毒性の強いアオコが大発生し大きな問題となっている。

 田圃の農薬、そしてレジャー産業よろしく、やれ接待だ交渉だのに使われるゴルフ場から流される農薬の量はさらに莫大なものである。
 各企業が自らのお金を稼ぐことに躍起となって工場から排水される毒物を平気で垂れ流してきた無責任さ。
 最近では各企業が浄水器に手を出している。四年まえ、1991年に400万台を突破したという。浄水器メーカーの中には公害問題の担い手も混じっている。自らの企業で水質を汚染し、今度は最近の水は質が悪くなっています水道水も危険ですと浄水器を売り歩く神経には驚かされる。

 塩素殺菌がかえって危険な発癌物質を生成することがわかっていながら、費用とのにらめっこで浄水方法をあらためることに二の足を踏んでいる行政にも問題がある。
 さらにマンションやビルにもうけられている貯水槽のずさんな管理が指摘される。マンションやビルでは水道の水をいったん受水槽にため、ポンプで屋上などの高置水槽に汲み上げ、各戸へ供給する。水道の蛇口から蚊やゴキブリの足が出てきたなどという何ともミステリアスな出来事があったのもマンションでのことである。タンクの中には藻が繁殖し、ゴミだのゴキブリ、蚊、ネズミなどの死骸そして鳥の死骸まで見つかることがあるそうだ。

 雨水や汚水の流入もあるとのこと、そら恐ろしい。また老朽化した給水管は鉄錆がこびりつき、こぶのようになっている。
 川の水の流れを止めると自然浄化力がなくなるのと同じで、タンクにためられた水には汚れがたまっていく一方となる。

一軒一軒の家で浄水場をもつ時代に 

 自分の健康は自分で守る、そして家族の健康は自分の家で考える。何ともエゴイストの様だが、こと水に関しては各家庭で防御策をとるしか今の段階ではなさそうである。

 もちろん私たち一人ひとりが現状を把握し水質汚染に歯止めをかける努力を怠ってはならないことは言うまでもない。合成洗剤を使わない。油を台所で流さない。流しの三角コーナーやバスケットにはストッキングなどを利用して、汚れた水をすこしでも濾過する。お米のとぎ汁は流さず、植木にやるなど、私たち一人ひとりのちょっとした努力の一歩から始まる。

 ところでわが家の浄水場とは、実は家の中で使うすべての水を浄水し美味しい健康な水に変えようという提案である。いくら台所の水道に浄水器をつけても、家の中には蛇口がたくさんある。家の中の水の出るところすべての水を変えられなければ本当は意味がない。
 何故なら、洗顔、洗髪、シャワー、お風呂これらに使われる水は髪の毛そして皮膚を通じて私たちの健康に大きな影響を与えるからである。

 おもしろい実験がある。水道水を二つのコップに入れ、片方のコップに指を入れてかきまわす。そして二つのコップにそれぞれ残留塩素をチェックするための塩素試薬を数滴たらす。すると片方のコップの水はかなり色が変わるのに指を入れた方の水はほとんど反応を示さない。
 さて、何故だろう。
 答えは簡単。指に塩素が吸着された、いわゆる指が活性炭の役割をした訳である。お風呂でたっぷりの湯に全身をゆったり浸し、のんびりくつろいでいる姿を連想していただきたい。またシャワーでジャージャー皮膚にお湯を浴びせている姿も想像して欲しい。
 ゾッとしてこないだろうか。 しかも皮膚からだけでなく、水道水の中の塩素、発癌物質が呼吸器からもあなたの身体の中に入っていく訳である。
 だから蛇口対応の浄水器を一つ付けただけでは家族の健康は守れないという事である。家の中の水をすべて浄水し健康な水に変えるためには、各家庭におくられてくる水道の元にまさにあなたの家のためだけの浄水場をつくればいい事になる。実は一升瓶とほぼ同じ大きさの本体をひとつこの元栓のところに取り付けるだけで、家の中の水がすべて変えられる浄水整水器もある。

 美味しいまずいという味覚については個人差が大きいので何とも言えないが、塩素の害を取りのぞき、フィルターを一年に二、三回変えていれば有機溶剤の心配もまずないということになればやはり一考の価値は十分あると思う。また値段が手頃ということも書き添えたい。
 もちろんもともとの水質が恐ろしくひどいところではフィルター交換が年に二、三回ではもたないケースもあるかも知れない。しかし家の中の水すべてを一台の浄水整水器で対応できる能力というのはかなり魅力的であると思う。
 最近はペットの癌が増えている。もちろんペットフードの添加物、室内空気汚染ということも十分原因として考えられるが、水の質が良くないということも要因のひとつとして挙げられないだろうか。
 現にペットの水をすべてペットボトルの水にしているという愛犬家の話を最近は結構耳にするし、水道水は飲まないなどという犬ばなれした犬の話を聞く。
 ましてやアトピー性皮膚炎などアレルギーの病気を持つ家庭がいればなおさらのこと。特に入浴やシャワーの際の水の質は決め手となってくる。
 塩素の害は、せっかく野菜のもつビタミンや緑茶の栄養素も破壊してしまう。無農薬や有機の野菜をつかっていても、洗う、煮る、ずべての水の質で味も健康も阻害されかれない。 

住まいと水

 住宅の問題と水の問題は実は切り放しては考えられない。水質汚染の原因となるもろもろの有害物質が私たちの住宅そのものから、そして生活している中から発生している。
 住宅にはさまざまな化学物質が使われている。これらの化学物質は私たちの健康を害すると同時に環境を破壊し、結果として水系をも汚染する。ホルムアルデヒド、アスベスト、塗料やワックスなどから揮発する有機溶剤、農薬については防蟻防腐剤、そして防虫剤や殺虫剤の家庭内農薬などである。

 住宅の目に見えないところに使われるさまざまな建築材料、そして室内の床材、天井材、ビニールクロス、カーペット、カーテン、家具、接着剤、仕上げ剤の中にとあらゆる化学物質が使われる。建築材料については日本は遅れている。ドイツではエコロジー、環境共生ということでメーカーが率先して化学物質の害のない建材、塗料、接着剤を開発している。

 地球にやさしい住まい方の一つには、できるだけ冷房や暖房を使わない。そして台所で洗い物をする時、油などの汚れはペーパーでふき取ってから洗う。なるべく流しにしゅうゆの残りだの汁類をながさないようにする。そして基本的にはゴミも少なくしたい。身のまわりの生活用品も抗菌だの防菌など薬剤で加工されているものを極力避ける、洗濯物に限らず、シャンプーや洗顔剤、あらゆる洗剤関係を石鹸タイプに切り替えていきたい。柔軟材や漂白剤などの使用も避けたい。塩素の害を問題にしながら漂白剤の成分は基本的に塩素なのだから。

 そして肝心なことはできることを一つずつでいいから確実に実行し継続していくことだと思う。私たちにとって生命維持に欠かせない水そして空気。そしてその質が確実に私たちの健康レベルを左右する。

 私たち人間は自我の確立という人間として第一歩を踏み出した時からあらゆる自然破壊。生態系のバランスを壊し、結果として心身の健康を蝕む社会をつくってきてしまった。今世紀の経済原則をつくってきた社会へのアンチテーゼとして人間にも環境にもやさしい、生態系とのバランスのとれたエコロジカルな社会を築いていきたい。

●健康な食生活をささえる水 
     台所の水だけ変えても健康にはなれない
 料理の素材にいくら気を使っても、水が良くなければ健康な食生活は実現できません。今はほとんどの家庭が水道になっていますが、昔はどこの家庭も井戸水でした。地下から汲み上げられてくる水は、一年を通じて水温はほぼ十五度と一定。夏冷たく、冬暖かい水が得られるということは、今のように冷蔵庫や温水器がない時代にはまさしく自然の恩恵でした。

 水が自然の浄化能力を超え、井戸水が水質チェックにひっかかるようになったのは、環境破壊の推移と比例しています。地下水の汚染は、直接大地に撒かれた農薬や工場から排出される薬剤、汚染された空気中の水蒸気が雨となりまた土壌を汚すという悪循環を繰り返しています。もちろん各家庭の暖房機器や、合成界面活性剤による洗濯排水も汚染源の一つです。

 それだけひどく汚れた水を各家庭の蛇口に届けるには、相当の殺菌が必要となります。塩素殺菌しなければ飲めない水。しかしながら塩素そのものは健康上の問題を指摘されています。
 人間の身体の六十から七十パーセントは水分です。水の質が問われるのも、健康と大きくかかわりがあるからです。近頃は自動販売機でもミネラルウォーターが販売されています。また台所に浄水器を設置する家庭が加速度的に増えています。

 健康な食生活の基本を素材におくなら、その素材を洗う、煮る、茹でる、すべてが水の質にかかってくることになります。
 大きなポリ缶で水を届けてもらっている家庭も最近ではよく見かけます。お風呂に使っているそうです。お風呂の水まで買っていることに驚いていたのもつかの間、その理由が一枚の新聞記事から判明しました。 

 浴室から、発癌物質が検出された、というシヨッキングな記事でした。大量に水を使う上に狭い個室とあって水道水中のトリハロメタンがこもってしまったのです。これは、お風呂に入っている時だけでなく、シャワーを浴びている時にも危険なことになります。

 発癌物質が呼吸器から身体に入る、また皮膚からも塩素の影響を受けることになります。アレルギーの子どもがプールに入って、目を充血させたり、皮膚に炎症を起こしたりするのは塩素の害が原因です。台所に浄水器をつけていても、洗顔や歯磨きは洗面場でするでしょう。家の中の水をすべて浄水するシステムがこれからの本流になると思います

食卓から消えてしまったもの

 かつての日本の食卓は、四季折々の旬のものが盛り付けられ、自然の豊かさを感じさせてくれるものだった。
 いつごろからだろう、野菜も果物も季節感を失ってしまったのは。昔はトマトやキュウリは夏しか食べられなかった。今は、一年中食卓にあがる。とうもろこしだって、枝豆だって一年中食べられる。昨今の栽培技術、保存技術には目を見張る。
 しかし所詮自然には逆らえないもので、季節はずれの野菜や果物はつくられた味でしかない。季節の野菜には太陽をいっぱいに受け、あるいは寒い冬を耐えてきた力強さがあった。そして、夏には身体に冷涼感をもたらせてくれて、冬には身体を暖めてくれるという、自然の摂理に適うものだった。季節の野菜、季節の果物、そしてトマトは青ずっぱい味だったなんてことも忘れられてゆくのだろうか。

 生活が豊かになった。食生活もイタリア料理、フランス料理、中華料理をはじめ各国の料理の素材がほとんど手に入る。そのため家庭でもバラエティに富んだ食事が楽しめるようになった。
 各国の料理をつつがなく盛りつける、これまた豊かな、器の数々。食器の豊かさは世界でも定評のある日本。陶器の技術では世界でもひけをとらない。
 日本料理は包丁さばきと盛りつけにあると言われる。繊細な料理と器との妙味な調和。目で楽しみ、舌で味わい、季節のあしらいに料理人の美意識を感じ取る。
 茶の湯の器にもてなしのこころを託し、四季とりどりの旬のものと器との調和を愉しんできた日本人の感性。器には日本の食文化の伝統が今なお息づいているように思われる。

 しかしながら、あまりの食生活の豊かさ、多様性の中に日本料理の伝統がうもれてしまってはいないだろうか。
 鰹節削り、木の落とし蓋に丸底鍋、昔の台所には必ずあった。包丁も出刃包丁や刺身包丁、菜っ切り包丁と揃っていた。こうしたものの必要性が薄らいできている背景は、日本の食生活の大きな変化を物語っている。

 間取りの洋風化、何LDKの間取りは、日本の住まいにとって不可欠だった風通しを悪くし、家族のふれあいを希薄にしてしまったなどの問題を残した。
 実は食生活においても、洋風化ということがもたらしたものは、単に日本の伝統的な食生活、家庭料理を失わせつつあるというにとどまらず、健康ということで大きな害をもたらせている。

 現在の食生活を考えて見ると、一日、全く肉や油ものを口にしないという日はないのではないだろうか。朝、パン食であればハムかベーコン、昼の外食も肉の入ってないものを探すのは難しい程、和食といっても肉が入っている。夜、ちよっと一杯焼き鳥で、というお父さんも多いはず。家庭でも子供の喜ぶものはほとんど洋食。ハンバーグ・カレー・トンカツ・スパゲティ・クリームシチューと。
 実は肉は典型的な酸性食品。血液を酸性にし、血行を悪くする。おまけに日本は火山国のため土壌が酸性。イギリスは海底がせりあがってできた、カルシウムたっぷりのアルカリ土質の島。イギリスに限らずヨーロッパの土壌はほとんどアルカリ性。
 土壌が違うということは、野菜にしても水にしても質が異なるということ。同じように肉中心の生活をしていても、確実に私たちの身体の方が酸性による害が大きくなる。

 住まいのつくりが気候風土を踏まえ、長い歴史の中で日本の暮らしにあった形をつくってきたように、食生活も人類の長い歴史の中で、伝統食を築き上げてきた。
 それは土壌が酸性だなどということは知識として知らなくても、もっとも身体に適応するものが何かということをそれこそ何代にもわたって継承されてきたに違いない。
 突然食生活がガラリと変わって、そんなにも簡単に私たちの身体は適応できるのだろうか。

 食生活が洋風化されてきたのは、昭和三十年代も始めのこと。このころ生まれた子供達は、小さいころから、家庭でも、油もの、肉中心の食事、またファーストフード全盛という時代背景は、ハンバーガーやフライドチキン、ピザなどを日常的に口にする習慣をつくってしまった。この子供達にもたらされたものは肥満・動脈硬化などのいわゆる成人病、そしてアレルギー疾患だった。

 今は冷凍食品、レトルト食品、加工食品などの普及で、家庭での調理時間は極端に短縮できる。こうした商品が普及する背景は、仕事を持つ母親が増えているという時代の要請であったかも知れない。

 現代の住まいの台所からは母親のぬくもりが消え、豪華なシステムキッチンが、その希薄な空間の穴埋めをしているような気がしてならない。


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