水の科学・化学館⑥ 


水質基準の強化のもたらす影響 
 現在の水質基準は平成4年12月に大幅に改正され、基準が強化されるとともに26項目から46項目へと増えました。それだけ多くの項目を検査しなければ安全が確保できなくなってきたとも言えます。46項目の内訳は、健康に関連する29項目と水の有すべき性状17項目に分けられます。このすべての項目の基準に適合することによって、飲用が可能であるといえます。健康に関連する29項目は有害重金属類、揮発性有機化合物、農薬、細菌類で構成されます。水の有すべき性状17項目は、鉄やマンガン、味、臭気、銅、亜鉛など生活影響の観点で基準が決められています。
 人工的に合成された揮発性有機化合物、農薬は動物実験より基準が設けられていますが検出することは地下水の汚染を意味し、水源の放棄などを考えなくてはなりません。
 病原菌の汚染の疑いのある一般細菌は少ない方が良く、大腸菌群はも検出されてはなりません。
 重金属類は、必須元素でもあることから、微量の摂取は必要ですが、多量の摂取は健康に悪影響を与えます。カルシウム等のミネラル類は、適度であればおいしく感じますが、多いと味がまずくなるなどの影響を及ぼします。
 さて、様々な物質を溶かしこむ水とは何でしょうか。生命を維持していく上で欠くことのできないものとして水があります。この身近に存在する水は、今から約46億年前に地球が誕生した後、約35億年目に最古の生物が出現したといわれています。この生物の誕生には、いろいろな物質を溶かす水の存在が決定的な役割を果たしました。即ち、水に溶け海で濃縮されたアミノ酸,核酸塩基,クロロフィルの骨格物質のボルフィリン等の働きが生物の誕生に必要であったといわれています。
 すべての生物にとって、水は必要不可欠です。食物の消化・吸収、体内各部への運搬、細胞内の化学変化、老廃物の排出や体温調整などに使われています。人体のおよそ65%は水分であり、体内の全水分は約16日間で入れ替わると計算されています。成人の一日の水分排泄量は、2.8リットルであり、体内の水分が20〜22%減少すると死亡するといわれています。水無しでは1週間で死亡するといわれているが、水さえあれば20〜40日生存可能です。毎日飲む水だから、安全でおいしい水を飲みたいと思います。そのためには、水が何をを含んでいるか調べる必要があります。
 渇水時に放置していた井戸水を飲めるかどうか検査された人がたくさんいました。水は地下を移動しているうちに浄化されていきますが、滞留した水は池の水と同じで、水質は良くありません。常に循環させる必要があります。現在、危機管理のひとつの対策として地下水が見直されてきています。常日頃から、維持管理(定期的な検査と日常の使用)を行い、良質の水を飲むことをお勧めします。
 あなたの庭で眠っている井戸水は、市販のミネラルウォーターよりおいしいかも知れません。

水道水をおいしくする方法 
 水道水をまずくしている原因は、臭気,有機物及び水温です。特に、カビ臭とカルキ臭が最大の原因といえます。そこで、これらの原因物質を除去することができれば、おいしい水になります。

 家庭で簡単にできる方法として、やかん等に一晩くみ置きして塩素を減少させたり、5分以上沸騰させたり、冷蔵庫で水温を下げたりすることによっておいしくなります。ただし、塩素がなくなると細菌が増殖するので、なるべく早く使用する必要があります。

 浄水器を使った場合は、配管腐蝕による濁りや鉄さび等の固形物をろ過除去し、カビ臭,カルキ臭,トリハロメタン等の溶解物を吸着除去して水質を改善する効果があります。
 家庭用浄水器の現状
 家庭用浄水器は昭和30年代に井戸水ポンプ併用型として開発されました。40年代になると、水道水にも利用されるようになり、昭和46,47年に第一次ブームを迎えました。しかし、このブームは悪徳な便乗商法が横行したため急速に衰退してしまいました。その後も、おいしい水への要望の高まりや浄水器の改良によって、昭和59年に浄水器の出荷量が大幅に伸びて第二次ブームが到来しました。ところが、厚生省により「浄水器の使用に伴う細菌の繁殖等の問題」に関する指導があり、浄水器市場は再び縮小してしまいました。ところが、平成2年には、新型浄水器の開発やバブルによる購買意欲の隆盛とともに、(社)日本水道協会による「給水器具に関する型式審査基準」が制定され、三たび浄水器ブームを迎えることとなり、現在に至っています。
 家庭用浄水器の種類と性能
 家庭用浄水器には、蛇口直結型,据置き型及びアンダーシンク型があります。機能的には活性炭吸着及び中空糸膜ろ過が主であり、セラミック吸着や逆浸透膜ろ過を用いた浄水器もあります。そのほかに、殺菌効果(紫外線等)や水質向上効果(ミネラル水,アルカリイオン水)や整水効果(磁気処理水)を加味したものもあります。
浄水器の中身
 浄水器はろ材を充填したカートリッジが取り付けてあり、水道水を通して塩素臭やカビ臭、不溶性物質を除去する構造となっています。ろ材には「活性炭」と「中空糸膜」が使われており、現在では2つを組み合わせたものも多くなっています。
(活性炭)
炭に特殊な処理をし、水と接する面積を大きくしたもので臭いなどの除去に有効ですが、消毒のための塩素も取り除かれるので細菌が繁殖しやすくなります。
(中空糸膜)
外径0.3〜0.5ミクロン程度の中空状になった化学繊維を数千本束ねてフィルターにしたもので、1本の繊維の表面には、0.1〜0.01ミクロン程度の極めて細かい穴があけられています。細菌には有効ですが、臭いの除去にはあまり効果がありません。
 家庭用浄水器の性能を評価した例を示します。

  ろ過材

項目

活性炭

中空糸膜

+活性炭

セラミック

+活性炭

逆浸透膜

+活性炭

残留塩素

除去できる

カビ臭などのいやな臭い

初期はできるが銘柄による差が大きい

除去できる

鉄サビなどの濁り

あまり除去できない

除去できる

あまり除去できない

除去できる

有機物全般

除去できない

あまり除去できない

硬度(カルシウムやマグネシウム等)

除去しない

除去してしまう

トリハロメタンなど

初期はできるが銘柄による差が大きい

除去できる

目詰まり

銘柄による差が大きいがあまりしない

目詰まりがはげしい

銘柄による差が大きいがあまりしない

1分間に浄水できる量がもっとも少ない

滞留水の水質

捨て水をする等非常に注意が必要

整水効果

特に確認できない

 ミネラル水は、水道水を活性炭や中空糸膜に通して浄化した後に、乳酸カルシウム,医王石(希皇石),麦飯石及びコールサンドを通してミネラルを添加してつくられます。希皇石は金沢市郊外の東南部に当たる医王山から採出され、鉱物学上は石英閃緑玲石です。麦飯石は石英斑岩の一種です。
アルカリイオン整水器

 近年の健康志向とともに、水道の安全性やおいしさに対する関心が高まり、浄水器が急速に普及しています。さらに、「健康によい水を作る」というふれこみで、「アルカリイオン整水器」、「イオン整水器」等と呼ばれる器具が販売されています。アルカリイオン整水器は医療用具の中の「医療用物質生成器」として薬事法による承認・規制を受けています。
(1).アルカリイオン整水器の種類
 アルカリイオン整水器とは水に食品添加物用のカルシウム化合物をいれ、交流電流を直流電流に整流し、陰極、陽極間に透過分離膜を設けて電気分解し陰極側にアルカリイオン水を作る機械です。その構造によって、次の2種類があります。

イ)貯槽式電解水生成器
 1回の電解において、陽極室と陰極室の各々に水を入れて、陽極室に乳酸カルシウムなどを加え、一定時間電解して陰極側にアルカリイオン水を作るものです。
 水質によるpHの調節は電解時間と乳酸カルシウムなどの添加量で調整します。
ロ)連続式電解水生成器
 給水を水道に接続し、電解槽の前でグリセロリン酸カルシウムなどを加えた電解によって連続的にアルカリイオン水を作るものです。
 水質によるpHの調節は電解電圧を変えることとアルカリイオン水の水量を絞ることで調節します

(2).アルカリイオン整水器の効能
 電解槽又は原水に食品添加物用カルシウム化合物を加えたものを電気分解した場合、医療用具として承認を受けている効能効果は次のとおりです。

イ)アルカリイオン水(陰極側)
 胃腸内異常発酵、制酸、胃酸過多、消化不良、慢性下痢
ロ)酸性イオン水(陽極側)
 アストリンゼンとして、美容に用いる。


日本料理と水の技(わざ)
 料理をするには、水は不可欠なものである。
 特に、日本料理では、水は重要な役割があり豆腐や、湯葉などの大昔からある 長い歴史をもつ食品も良質の水があって、はじめて美味しいものが作られている。


 食品だけじゃなく酒などの、飲料も同じ事でよい水があるところでは沢山の銘酒が生まれている。

 「刺身の洗い」などもよい水でなければ、作ることが難しいし、海外で、本物の日本料理を作ろうと思っても水に恵まれないことが、障害となってるところも大いにある。
お料理に合う水は?

 日本料理には、「軟水」の水が合うと言われています。とくに硬度50度以下の水が適しています。

 日本料理によく使われる鰹節や煮干しなどのタンパク質は、硬水中に多く含まれるカルシウムと結合しやすく、「うまみ」を灰汁(アク)として出してしまうので、日本料理独特の微妙な味が出せなくなってしまいます。

 またお米を炊く場合や、野菜を茹でるときにも硬水を使うとカルシウムが植物組織を硬化させるため、パサパサに仕上がってしまうので気をつけるよう心がけましょう。

 一方、西洋料理には「硬水」が合うと言われています。とくに硬いスジ肉を柔らかく煮込みたいときには、硬度300度以上の硬水がよいと言われています。

 これは日本料理のときには悪影響を及ぼしたタンパク質とカルシウムが結合しやすいという性質を利用することで、肉を硬くする「硬タンパク質」と言われる物質を灰汁として煮汁に放出してくれるからです。ですが、逆に硬度が高すぎてもスープの味そのものに影響してしまいますので気をつけて下さい。 (参考:「歴史読本 辞典日本人と水」「ミネラルウォーター・ガイドブック」)


硬水と軟水について
蒸留水のように、何も含んでない水は味も臭いもないので特別な目的で使われるけど飲んでも、全然美味しい水ではない。

水には硬水と軟水がありカルシウムと、マグネシウムの化合物を含んでいる水を硬水といい、カルシウムやマグネシウムの塩基類が少ししか含まれてない水を、軟水という。まったく含まれてない場合も、軟水といいます

硬水の定義

水100mlの中に、酸化カルシウム(CaO)が1mg含まれている水の事を硬度1の水という。

マグネシウム塩は1.4MgO=1CaOとして、換算して 硬度を計算する。

普通は、硬度が20度以上の水を、硬水といい10度以下の水を、軟水といっている


水の中に、カルシウム塩やマグネシウム塩が入っている硬水はたんぱく質と結合して、たんぱく質を変性させかたくしてしまうので肉や大豆などの、たんぱく質を含む食品は料理しても、美味しく作れない。

ダシも同じで鰹節のたんぱく質を かたくしまらせて良いダシがとれない。

つまり水は軟水に変える必要があるのだ。

水の硬度ってなに?

水の味は、「硬度」に影響するとよく言われますが、硬度とは一体何でしょうか?

例えば、水の種類により、洗濯をしたときに石鹸の泡が立ちにくいものがあります。

これは石鹸の中の脂肪酸が水中のカルシウムやマグネシウムと結合して、洗浄力を低下させているからです。

このように多くの鉱物を含んだ水のことを「硬水」といいますが、正式には次のような硬度計算式から算出した単位に基づき、これが200度以上の硬度を持つ水(一部には100度以ともいわれています。)を「硬水」と判定します。

◇硬度計算式:水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計量をそれと同じ働きをする炭酸カルシウムの量に換算して1リットル中に何mgあるかで表します。 

    硬度=(カルシウム×2.5)+(マグネシウム×4)

硬水を軟水に変える方法
カルシウム塩や、マグネシウム塩が炭酸水素水という化合物として、含まれている場合には加熱して、沸騰させると、炭酸塩になって沈殿するので軟水に変えることができる。
 しかし沸騰させても、軟水にならない水もあり、このような場合はイオン交換樹脂を通さないと、軟水にはならない。沸騰させて、軟水にな水は一時硬水といい、沸騰させても、軟水にならない水は永久硬水とよんでいる。

自分の使っている水がどんな性質の水かを知り必要であれば、浄水器を使って軟水にするのもいいでしょう。

最近は、水道の水のカルキ臭が強くなり硬水・軟水の問題以前に料理には、好ましくない状態になっているところもあります

水の沸騰点と気圧

 水は一気圧の時に100℃になると沸騰する。これは、逆に考えてみると水が一気圧の時に沸騰する温度を 100℃としたのであり、水が 氷になるところを0℃と決めた。

水は気圧が高くなると、沸騰点が高くなり気圧が下がると沸騰点も下がることになる。

液体が沸騰するという現象は一定温度の時に一定の蒸気圧を持っており、この蒸気圧よりも、外気の圧力のほうが高い場合には、沸騰は起こらない。

料理に例えるなら圧力釜で食品を煮ると、水から蒸発した蒸気が釜の外に出られないので圧力が高くなって、沸騰点も高くなり普通より 高い温度で加熱ができるのだ。

100℃ではやわらかくならない物をやわらかくできます。

高い山なんて気圧が低いから、水が沸騰しても 100℃にならずにやわらかく煮えないし、実際、標高1500mのところは水の沸点が99℃なのだ。

水にほかの物質が 溶け込んでいる場合は水の沸点を上げることができます。また 氷点も低くできるしポタージュのようなとろみのあるスープは 沸騰点が高いのでアツアツだし、青菜を鮮やかないい色で ゆでる場合には鍋に塩を入れるテクニックがありますが、これは塩を入れて 水の沸点を上昇させクロロフィルの発色をよくさせる為なのです!

蒸発熱
水は蒸発するときに、蒸発熱を必要とするが蒸発が盛んになるほどその液体の温度は急激に下がっていきます。1gの水が蒸発するのには、539calの熱量が必要です。液体を冷ますには、表面積を大きくしておくと早く冷めます。

フタをして、お湯を沸かすと早く沸きますがフタを使わないと時間がかかるのは、そのためだからです。水が蒸発する時に放熱する熱を、利用すると効率よく加熱することができ料理の「蒸し物」はこの原理を 利用したものなのです。

調理法として蒸し物だけではなく、蒸し煮や地蒸しと呼ばれる煮物の技術があるけど蒸し器で 加熱する調理は天火や、ほかの熱源などを使うよりもずっと効率がいい場合があります。

浸透圧と水

青菜に塩をふると、青菜はしおれてぐったりとしてけど中の含まれている水分が 外に出てくるからです。このような現象を浸透圧と言いますが料理には この現象を利用した作業が多いです。

魚に塩を振ったり、漬け物をするときに塩を使うのは浸透圧を利用して中の水分を、外にしみ出させるのが目的だからです。

このような物理的な作用を利用して食材をしめたり水分と一緒に、魚の臭みや野菜の水分を取り除くなどいろいろな作業ができるのです。

膨潤と水

米や麦、豆などの穀物や、乾燥した昆布・ひじき・椎茸など水につけると 水分を吸収して何倍にも膨れるけど、このような現象を膨潤(ぼうじゅん)といって料理の過程で、素材に水をたっぷり吸収させる仕事はたくさんあります。

米を炊くのも膨潤を利用してやわらかく美味しいご飯にするわけで水がないと、美味しいご飯は炊くことが出来ません。

米や椎茸などは一定の所までふくらむと、それ以上、水を吸わないけど、それとは違ってゼラチンのようなものは水を加えていくと、無制限に膨潤していきゼラチンも 溶けてしまいます。

このようなものを無限膨潤といって一定のところで、膨潤がとまるものを有限膨潤といいます。

離漿と水

ゼリーを放置しておくと、水分が次第に分離してくる。このような現象を、離漿(りしょう)といいます。ゼリーの濃度が薄くなるほど、離漿の現象が強くなります。膨潤しているものから、水が分離してくるような現象も 離漿といいます。

豆腐などは水の中に入れておかないと離漿現象をおこして、中の水分が分離して外に流れ出てしまうので水の中に入れてあるのです。


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