管材資料館③  


鋳物の歴史  鋳物は人類の歴史そのものである。

 ○鋳物の歴史は古く、紀元前4,000年ごろ、メソポタミアで始まったといわれています。銅を溶かして型に流し込み、いろいろな器物をつくったのが始まりです。
 青銅鋳物は、メソポタミア地方でBC3000年頃始まり、東はインド・中国へ伝来し、西へはヨーロッパ各国へBC1000年頃までに伝わり、刀剣・容器などが多く作られた。鋳物は、人間のモノづくりの中で、最も古いもののひとつといえるでしょう。

 ○日本に鋳物づくりの技が伝わったのは紀元前数百年ごろ。1世紀に入ると、銅鐸、銅鏡、刀剣などがつくられるようになり、奈良時代になると、仏像や梵鐘などが盛んにつくられました。各地に鋳物づくりが広がったのは、平安時代なかば以降といわれています。

 ○鉄鋳物はBC800年頃、中国で始まりBC600年頃にはヨーロッパに於いても各種の武器や道具が鋳造されたが、銑鉄鋳物が本格的に作られるようになったのはAD1300年代のことであり大砲・ストーブ・パイプなど多数の工業用品が作られた。

 ○鋳物が現代の工業の形態をとるようになったきっかけは、18世紀なかばにイギリスで起きた産業革命です。工場制工業の発展とともに、鋳物が広く機械文明の中に採用されるようになりました。


 ○江戸時代までの我が国は、少なくても金属に関しては資源が充分にあった。金銀銅に到っては、資源小国どころか輸出国で、むしろ輸出量の多すぎる事の方が問題になっていた。
 鉄も当時の国際価格と比較して安く、品質が良かったから、オランダ人はヨーロッパ産の鉄を売り込もうとしなかった。重い割に安いから輸出にもならなかった。明治初期までのわが国は、国内の需要を充分に賄える量の鉄を生産していた。

  ○製鉄は主に中国地方で行われ、溶鉱炉ではなく、「たらら」という独自の炉を使う。この時代の「たらら吹き」は原始的な製鉄法と思うかも知れないが、19世紀中頃までは、能率の良い方法だった。経済的に効率が良いだけでなく、この和鋼の品質は世界でも群を抜いて優秀だった。

 ○江戸時代末期になって近代化への動きが活発になります。幕府はオランダから技術を導入してキュポラを建設しましたが、これが近代化へのさきがけとなりました。


錆(さび)という字

「さびる」という字は、本当は金偏に秀と書きます。(あるいは金偏に青と書き「錆」。)
「秀」「青」共に良くなるという意があります。よって、錆があるから悪いというのは間違いで、錆びることこそ本当の鉄なのです。

花瓶等の手入れにしてもやたら光らしたら終わりです。使い終わったら水を切って完全に湿気をとり中をお茶でたたく等して白く、鈍い光を出してこそ価値がでるのです。自然に被膜でおおっているわけですからワックス等をつけて光らせたりしたら鉄の味を壊します。

鉄の表面は錆びます。しかし、その錆はある程度錆びると中に浸透しないのです。

古い神社仏閣の金物・閂(かんぬき)・城門の金具等は自然にある程度錆びているから、そこに鉄の本当の味があるのです。鎌倉の美術館のサッシは、味を出すためにわざわざ人工的に錆びさせてあるのです。
「錆」こそが鉄の値打ちなのです


鉄の種類
①鋳鉄(=銑鉄ともいう) 
鋳物にする鉄。高熱の炉でどろどろに熔かした砂鉄、または鉄鉱石(これを湯という)を意図する鉄製品の鋳型に入れて冷まし冷え固まったら型からはずす。鋳物の鍋釜・浴槽などがある。
②鍛鉄 (鍛造する鉄の意で二種に分けられる)
◎錬鉄
熱い半分熔けた鉄を炉から取り出してよくたたき強くする。昔は農具や日常雑器・釘・鉄線・刀の心金などが作られた。
◎鋼鉄
錬鉄より硬く、刀剣や刃物など工具や武器として人間に最も密接する鉄。

鋳物はここがすごい  自由な造形
 砂や金属でつくった型の中に、溶かした金属を注ぎ込んで必要な形にする加工法のことを鋳造(ちゅうぞう)といい、この方法でつくられたものを鋳物(いもの)といいます。鋳造にはたくさんの方法がありますが、水が器の形にしたがうように、複雑な形状でも自由自在に造形できる点が大きな特長です。鋳物にも、使用する金属材料によっていくつかの種類があります。その中でもっとも広く使われているのが銑鉄(せんてつ)鋳物です。
 銑鉄は、鋼など他の鉄素材に比べて、より多くの炭素を含んでいることが特徴です。実は、この炭素が鋳造の重要な鍵をにぎっています。鉄に炭素が混じると融点が下がって鋳造しやすくなります。また、炭素は鉄が固まるとき結晶化して黒鉛になりますが、そのとき膨張して、全体の体積の縮みを補うことになります。
現代の銑鉄鋳物を材質でみると、ねずみ鋳鉄とダクタイル鋳鉄(JIS;球状黒鉛鋳鉄)が主流です。特に、ダクタイル鋳鉄は鋼に近い強さを鋳物にもたらしたという点で、鉄鋼における今世紀最大の発明といわれています。
▲ねずみ鋳鉄 ▲ダクタイル鋳鉄

鋳物に代わるものはない
 銑鉄鋳物は、硬さと粘り強さのバランスがとれた材料です。鉄と黒鉛の複合材料であるため、硬くても加工しやすく、しかも他の鉄にはみられない優れた性質をもっています。さまざまな用途に使われるのは、銑鉄鋳物でなければならない理由がそこにあるからです。


 銑鉄鋳物の性質を特徴づけているのも黒鉛です。この黒鉛が振動(音の発生)を抑えたり、潤滑剤の役目をはたして摩耗を防いだりします。鋳物が自動車や船のエンジン、あるいは音をださないブレーキ装置に欠かせない理由です。加えて、熱に強く腐食に強いといった性質が銑鉄鋳物の利用価値を高めているのです。



鋳物ができるまで
   
  1.鋳造方案
生産個数や要求される材質、形状、寸法精度などに応じて、どのように製造するかを決める。
 
2.模型製作
製品図面に忠実に、仕上げ代、寸法許容差、溶湯(溶かした金属)の凝固収縮などを考慮に入れて、主型、中子(空洞部をつくるための型)の模型をつくる。
量産品は金属型、単品・少量品は木型。
最近ではCAD/CAMを使って、自動加工も行われている。
3.鋳物砂調整
型をつくる鋳物専用の砂に粘結剤や添加剤を配合する。
型用の砂として、もっとも使われているのは“けい砂”で、その大部分が国産。オーストラリアからの輸入も増えている。
4.溶解
必要な化学成分をもつように配合した材料を、溶解炉で溶かして、高温の溶湯をつくる。
コークスを燃やして溶解するキュポラと、電気炉が主流。
5.主型造型
鉄製の枠の中に模型を置き、砂をつめて、上下型をつくる。
粘土を粘結剤にした“生型”と、熱硬化樹脂を粘結剤にした“自硬性型”がある。型の中に、砂を均一に詰めることがポイント。
6.中子造型
主型と同様に、中子をつくる。
溶湯に囲まれてかなりの高温にさらされるため、耐熱性の塗布材を塗ることが多い。
 
  7.型合わせ
下型に中子をセットし、上型をかぶせて、鋳型を組み立てる。
湯と粘結剤からでるガスを抜けやすくしておく。
 
   
  8.注湯
型に溶湯を注入する。注湯後は適切な時間で冷却。
注湯のコツは「静かに早く」。時間がかかりすぎると、トラブルの原因になる。冷却は時間が足りないと、製品が硬くなりすぎたり、変形したり、亀裂を生じたりする。
 
   
   
  9.型ばらし
上下の型を分離し、製品を取りだす。
中子はどうやって外すか。砂に加えた粘結剤や添加剤は、溶湯の高熱で硬くなると同時にもろくなるようになっている。衝撃を加えると、崩れ落ちるというわけ。役目を終えた砂は繰り返し利用される。
 
   
   
  10.鋳仕上げ
製品の表面についている砂を落とし、不要な突起などを削りとる。
 
   
 
検査

 
  完成品

日本人の3人に1人が貧血の理由??
 
昔の人は賢かった。いや、そうではない。今みたいに物が豊富でなかったから、日用品でも「鋳物」の鍋釜を多用した。綺麗好きが高じると、身体もダメになる。

お茶だって鉄瓶で沸かして飲めば、鉄イオンを胃腸から吸収して貧血は解消出来る。
お風呂だって鋳物の浴槽に入れば、流出した二価の鉄イオンを皮膚から吸収出来、温泉感覚で楽しみながら貧血対応が出来るのです。

貧血も一種の現代病だっていうから、あんまり便利になりすぎるっていうのも考えものですね。


鋳造と溶接って関係あるの?

“鋳物”は単体で使用されるもので、鋳物と溶接って関係あるの?" と思うだろう。ところが大有りで、様々なところに用いられている。
これが思いのほか困難なのだったのが、材質の開発、また現在の溶接技術の発展に支えられ溶接が容易に行えるようなったため、鋳物の活躍の場を広げている。

そこで、鋳物と溶接がどのように関っているかをみてみよう。  

一般に溶接は大別して二種類、補修溶接と組立溶接とに別けられる。そして鋳物はこの両者に関りを持つ。

鋳物のように形状複雑、かつ肉厚の異なるものは各所で様々な凝固過程が起こるため思いもよらぬワレなどを生じることがある。そこで活躍するのが補修溶接である。もちろん製品の使用用途でワレ厳禁なものワレの程度がひどいもの溶接困難な材質については製品となることはない。

後者の組立溶接は、構造物に使用されるもので皆さんが一般的に思い描く溶接でしょう。
信頼性、安全性が重視されるが、溶接技術の発展によりこれらをクリアし、多くの鋳物が構造物の一部として用いられている。
現在のように鋳物が多方面に需要を得ることができたのは、材質の改善と溶接の発展であり、両者がともに発展することにより可能性を広げてきた。
つまり、鋳物と溶接は切っても切れない間柄であり、今後の発展のために更なる可能性に向けて両者の開発,発展を願わずにはいられない。

鋳物製品とリサイクル
 ドイツでは徐々にプラスチック製の浴槽は使われなくなっています。
 フランスでは以前から、浴槽の90%は鉄板または鋳物のホーローが使われています。当然、ホーロー製は100%リサイクル可能ですがそれに比べてプラスチック製はリサイクルが難しいのです。

 便利でかつキレイだからの裏側には、必ずその逆のものがあるのです。日本でも人類が何千年もの間付き合ってきた鉄鋳物製品はもっと使われるようになるでしょう。

鋳鉄関連 諸規格一覧

規格 主な仕様製品
種類 番号 記号 名称
材料 JIS G 5501 FC150 ねずみ鋳鉄品2種 継手
FC200 ねずみ鋳鉄品3種 排水器具の本体、マンホール
JIS G 5502 FCD450 球状黒鉛鋳鉄品2種 フランジ
FCD500 球状黒鉛鋳鉄品3種 袋ナット、マンホールふた
JIS H 5101 YBsC2 黄銅鋳物2種 排水器具全般
JIS H 5202 AC7A アルミニウム合金鋳物7種A アルミ製ベントキャップ
JIS G 3101 SS400 一般構造用圧延鋼材 阻集器のマンホールふた
JIS G 4305 SUS304 冷間圧延ステンレス鋼板 阻集器の本体、部品、排水金具
JIS G 4309 SUS304 ステンレス鋼線 防虫網のあみ
JIS H 4100 A6063S-T5 アルミニウム合金押出形材 フロアーハッチ
JIS G 3452 SPG 配管用炭素鋼鋼管 排水器具の調節管等
WSP 042 D-VA 排水用硬質塩化ビニルライニング鋼管 <日本水道鋼管協会規格>
JIS K 6741 VP 硬質塩化ビニル管 阻集器のトラップ
VU ルーフドレンのスペーサー
JIS K 6380 A715 工業用ゴムパッキン材料 継手・排水器具・ふた等
ボルトナット JIS B 1180   六角ボルト 排水器具・継手等
JIS B 1181   六角ナット 排水器具・継手等
ねじ JIS B 0203   管用テーパネジ 排水器具
JIS B 0202   管用平行ねじ 排水器具・阻集器
表面処理 JIS H 8641 HDZ 溶融亜鉛めっき DF
JIS H 8617 MBNiU ニッケル及びニッケルクロームめっき 排水器具
MBCrU  
JIS H 8610 MFZnU 電気亜鉛めっき ボルト、ナット、くさり
JIS H 8602   アルミニウム及びアルミニウム合金の
陽極酸化塗装複合被膜
フロアーハッチ
製品 JIS B 2303   ねじ込み式排水管継手 DF
JIS A 4002   床排水トラップ 排水器具
HASS 209   マンホール及び格子ふた マンホール、格子ふた
HASS 217   グリース阻集器 グリーストラップ
MDJ002   排水鋼管用可とう継手 MD
JCW-202   流しトラップ 流しトラップ
JCW-203   床上掃除口 床上掃除口
JCW-204   排水金物 排水金物
JCW-205   通気金具 通気金物
JCW-103   弁桝ふた 弁桝ふた
JCW-104   弁きょう 弁きょう
JCW-105   量水器桝ふた 量水器桝ふた


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