管材資料館④  


金属の知識・・・① 金属の性質

金属名

融点

比電気抵抗

µΩ/cm

線膨張係数

µm/℃

比重

1,539

8.71

11.7

7.9

1,083

1.55

16.5

9.0

アルミニウム

660

2.50

23.9

2.7

亜鉛

420

5.45

39.7

7.1

カドミウム

321

6.73

29.8

8.7

1,063

2.04

14.2

19.3

961

1.50

19.7

10.5

すず

232

10.10

23.0

7.3

チタン

1,820

4.20

8.5

4.5

327

19.30

29.3

11.3

ニッケル

1,455

6.58

13.3

8.9

白金

1,774

9.81

8.9

21.5

マグネシウム

650

26.00

4.2

1.7

マンガン

1.245

185.00

22.0

7.4

クロム

1.890

13.00

6.2

7.2

モリブデン

2,625

5.03

4.9

10.2



金属の知識・・・②について
   鉄は、主に”鋼”、”鋳物”、”特殊鋼”に大別されます。
(1) 鋼  鉄(Fe)に炭素(C)が混ざる割合で、鋼・鋳物の区別ができ、その分量は、

       炭素C:  0〜0.04%    0.04〜2.1%    2.1〜6.7%

       分 類:  鉄(工業上)      鋼         鋳物

     のようになり、鉄はC%が少なすぎて柔らかく、鋳鉄はC%が多すぎて脆く、鋼がちょうど中間で手ごろなC%ということになります。 

     

  鋼の5元素

 鋼は鉄(Fe)と炭素(C)の合金であるが、正確にいうとその他に、けい素(Siマンガン(Mn)・燐(P)・硫黄(S)が混ざっていて、これを鋼の5元素といいます。  普通の鋼には下記の表−2に示す程度入っています。

鋼の5元素

炭素(C)%

けい素(Si)%

マンガン(Mn)%

燐(P)%

硫黄(S)%

0.11.5 0.10.4 0.50.8 0.03以下 0.03以下

     それぞれ、5元素の作用は、  

 炭素(C):

 鋼にとってなくてはならない大切な元素で、硬さや強さを増すもので、これがないと鋼になりません。 C1%につき、引張強度が約100kgf/mm増加します。

 けい素(Si):

 強さや硬さを増す元素で、Si1%につき引張強度10kgf/mm増加する。

 マンガン(Mn):

 焼きがよく入るようになる元素で、値段が安い割にキキメがあるものです。また、鋼に強靭性を与える元素で、ハイテン(高張力鋼)には1.2 〜 1.5%入っている。

 燐(P):

 鋼には有害な元素で、冷間脆性つまり寒い時に鋼を脆くさせる性質がある。集団結合(偏析)する性質が強いので、含有量は少ないことが必要です。

 硫黄(S):

 これも燐(P)と同じく好ましくない有害元素で、熱間脆性つまり赤熱状態の時脆くさせる性質があるので、含有量を極力抑えることが必要です。

         

     @)一般構造用圧延鋼材(SS材)

 これは、JIS鋼材のうちで、もっとも多く使われている鋼種で、その代表的な物はSS41です。これは、引張強さの最低が41kgf/mmということで、化学成分、特にC%は規定されていません。
 
SS材は主要強度部材を除くほかほとんどの機械及び構造物の補助部材として、鋼板・平鋼・棒鋼・形鋼などに使用されます。

     

     A)機械構造用炭素鋼材(S―C材)

 これは、起重機・生産機械・自動車・エンジン部品などに非常に多く使われています。熱処理としては焼きならし・焼入れ・焼戻し(調質)あるいは表面焼入れ(高周波焼入・火炎焼入)・浸炭肌焼きなどが施されます。S−C材のうちで一番多く使われるのがS45C(炭素C:0.45%含有)です。S−C材は焼入れ性があまりよくないので、太物の調質には向いていません。太物には合金鋼(SCr・SCM)を使う必要があります。

(2) 鋳物  鋳物の性質は、かたくてもろい・摩耗しにくいなどがあります、特に鋼材とはまったく違った性質がありそれは、「減衰能」及び「吸振性」で振動を吸収する性質があり、主に工作機械・測定器・水道管・マンホールの蓋などによく使われます。

     

(3) 特殊鋼   鋼にニッケル(Ni)・クロム(Cr)・モリブデン(Mo)・バナジウム(V)・タングステン(W)・コバルト(Co)・銅(Cu)・ボロン(B)・チタニウム(Ti)の特殊元素が入り特殊な性質を発揮する鋼を特殊鋼と言います。これら特殊元素の効用を以下に説明します。

     

マンガン(Mn):   これはごくありふれた安い合金元素ですが、きわめて重要ななくてはならないものです。これは、1.2%以上含まれるとマンガン鋼といって、合金鋼の仲間入りをするわけです。MnCほどではありませんが、強さと硬さを増し、そのわりに粘さを損わないもので、また、焼きが入り易くなるので、調質用鋼には欠かせない元素です。

     

クロム(Cr):    これは多才な元素です。なかでも代表的な効能は、摩耗に強く、さびにくくなることです。ボールベアリング鋼(SUJ)にはCr1%・ダイス鋼(SKD11)にはCr13%・ステンレス鋼(SUS)にはCr13%以上入っています。また焼きが入り易くなり浸炭を促進する有用な元素でもあります。さらに、値段も手頃なので重宝な元素です。

 

モリブデン(Mo): これはいろいろな合金鋼に使われ、非常に信頼性のある働きをします。その効能も優秀なので、数ある合金元素のなかで最も尊重されている元素の一つです。鋼の焼入性、つまり焼きの入る深さを増す第一線級の元素で、高温に加熱された時結晶粒の粗大化を防ぎ、高温張力強さを増大します。さらにステンレス鋼の耐食性を向上させる能力を持っています。ただ国産でないので、値段が高いのが欠点です。

  

ニッケル(Ni):  これは鋼の粘さ、つまり耐ショック性を増す有力な元素で、熱処理し易くさせるし耐食性も向上させます。昔は合金元素のトップクラスでしたが近年は資源的にも少なく、値段も高いので首位の座をCrMoに譲っています。

 

バナジウム(V): これは結晶粒を細かくし、強靭性を発揮させる効果をもち、非常に硬い炭化物をつくるので、耐摩耗性を向上させます。したがって、強力な切削工具鋼には欠かせない元素です。

     

タングステン(W): これは温度が上がってもなかなか軟らかくならない性質、つまり耐熱性を発揮し、硬くて減らない特性を付与します。Moと同じ作用で、Mo1%とW2%が同じ効能です。 工具鋼、特に高速度鋼には絶対必要な元素で、タングステン系高速度鋼とモリブデン系高速度鋼の二つのタイプがあります。

  

コバルト(Co):  鋼が赤熱された時でも軟らかくならない性質、つまり、赤熱硬性を増す有力な元素で、高級工具鋼や磁石鋼には欠かせない元素です。ただ、価格が高価なのが欠点です。

 

(Cu)  これは、あまり多く添加されると割れ易くなりますが、0.4%くらいまでは空気中でさびにくい性質、つまり耐食性を発揮するようになります。

 

ボロン(B)  これはごく微量(0.003%以下)添加しただけで、鋼の焼入れ性を増大し、焼きが入り易くなる。現在、合金鋼の焼入れ性を増すために必ず添加されこれをB鋼といって 鋼種記号にBを付記します。

 

チタニウム(Ti): これは鋼の焼きを入り易くすると同時に、ステンレス鋼に添加すると耐食性を増す効能をもっています。

  

     @)機械構造用合金鋼材(SA材)

 これは、前に出てきたSC材にCrMoNiなどの特殊元素の入ったもので、その代表的なものがSCM(クロムモリブデン鋼:パイプレンチのあご,シュレッダーライナなど)・SCr(クロム鋼:プライヤーなど)・SNCM(ニッケルクロムモリブデン鋼:ピッケルなど)などです。これらは皆焼入れ・焼戻し(調質)・あるいは表面硬化して使用します。焼入れ性がよいので、熱処理による機械的性質の向上は非常に大きいものがあります。

 

     A)工具用鋼材(SK材)

 これは、工具に使われる工具鋼で、一般にC0.6%の高炭素鋼です。摩耗に強く、切削性能が大きい。工具鋼は、炭素工具鋼(SK:ボルトクリッパの刃,ニッパの刃など)・合金工具鋼(SKS:ネジのタップ,ポンチ,ヤスリなどSKD:熱間押出し用ダイスなど)・高速度鋼(SKH:フライス,バイト,ドリルなど)の3種類あります。
 炭素工具鋼は硬いけれども熱に弱いので、低速切削工具・手動工具・木工具などに使います。合金工具鋼は硬くて、衝撃に強く、摩耗や熱にも強いので、特殊な用途の工具に使用され、用途により切削工具用・耐衝撃工具用・冷間金型用・熱間金型用の四つに分類されます。

 

     B)特殊用途鋼材(SU材)

 この代表的なものは、ステンレス鋼材(SUS)です。その他に、耐熱鋼材(SUH)、高炭素―高クロム軸受鋼材(SUJ)・ばね鋼材(SUP)があります。
 SUSには18クロムステンレス鋼(SUS430)・13クロムステンレス鋼(SUS410、420J2)・18-8ステンレス鋼(SUS304)の3種類があります。
 18Cr系は軟らかいだけが取りえなので食器類などにつかわれます。13Cr系は、焼きが入って硬くなるので、刃物や耐食機械部品に賞用されます。18-8系は軟らかいけれども粘く、さびには非常につよいので、いたるところで使用されている。また、マグネットに吸着しない性質があるので、用途によっては、便利なことがあります。しかし、18-8系にも弱点があります。600700℃に加熱されると、さび易く(粒界腐食)なって破損することがあります。また、ハンマで叩いたり、折り曲げたりすると、その部分はマグネットにつくようになるので注意が必要です。
 耐熱鋼材(SUH)は、600℃以上の熱に強くフェライト系(SUH446),マルテンサイト系SUH4),オーステナイト系(SUH310)の3種類があります。耐熱を必要とする部品、自動車エンジン用排気弁・舶用蒸気タービン・ジェットエンジンなどに使用しています。

 高炭素―高クロム軸受鋼材(SUJ)は、耐摩耗性の大きい鋼種で、ボールベアリングやローラーベアリングに賞用されます。

 ばね鋼材(SUP)は、炭素鋼のSUP3(貨車の板バネなど)とシリコンマンガン鋼のSUP6(トーションバーなど)が代表的なもので、焼入れ・焼戻しすると弾性限や疲労限が高く、耐衝撃値も大きいのが特徴です。

     

 


金属の知識・・・③非鉄について

非鉄品目

( 1) ( 2)アルミニウム ( 3)鉛 ( 4)亜鉛
( 5)すず ( 6)クロム ( 7)ニッケル ( 8)マンガン
( 9)タングステン (10)モリブデン (11)バナジウム (12)コバルト
(13)タンタル (14)金 (15)銀 (16)白金
(17)水銀 (18)黄銅 (19)青銅 (20)丹銅
(21)白銅 (22)洋白 (23)チタン  
(1) 銅  元素記号Cu、電気抵抗が小さい・熱の伝導もよい・耐食性がよい・塑性加工しやすいなどの性質をもち、電気関係の用途に広く使われている。 (被覆電線の導体・湯沸器の熱交換器・キュービクルのブスバーなど)

 

(2)アルミニウム  元素記号Al、金属の中では軽く、耐食性がよい(さびにくい)、電気をよく通す熱を伝えやすい、また、やわらかく加工性のよいこと、融点が低く鋳造に有利である。
 ただし、機械的性質は低いので強度を必要とするところには使われませんが、ジュラルミンのようにSS材なみの引張り強度をもつアルミニウム合金もあります。
 アルミニウムは、展伸材と鋳造材の2種類に分けられます。 展伸材とは、圧延・押出し・引抜きなどによって広げ(展)たり、伸ばしたりしたものです。 展伸材の規格は、4ケタの数字であらわされます。(1000番台〜7000番台)

       1000番:  純アルミニウム系―強度は低い、耐食性がよく、溶接しやすい、熱・電気の良導体である。

              (用途例:ブスバー,電線,ネームプレート,キャップ,印刷板など)

       2000番:  銅系―耐食性が悪く、溶接しにくい。強度は鋼材と同等のものもある。削りやすい。

              (用途例:ねじ,航空機,ギャー,シリンダーヘッド,ピストン,リベット用材など)

       3000番:  マンガン系―耐食性を悪くしないで、1000番台より強度を増したもの。

              (用途例:飲料缶,屋根板,電球口金,化粧板など)

       4000番:  シリコン系―融点が低く、熱膨張率が小さい。

              (用途例:ピストン,シリンダーヘッド,溶接線,など)

       5000番:  マグネシウム系―耐食性がよく、溶接しやすい、比較的強く最も種類が多い。

              (用途例:車輌,船舶,缶エンド,ファスナー,圧力容器など)

       6000番:  マグネシウム・シリコン系―耐食性がよく、押出し加工によい。

              (用途例:サッシ,自動車部品,ガス器具など)

       7000番:  亜鉛・マグネシウム系―アルミニウム合金の中でもっとも強いが、耐食性は落ちる。
              (用途例:航空機,スキーストック,熱交換フィン)

 

     鋳造材は1〜9種に分けられます。それぞれつぎのようになっています。

1種AAC1A1種BAC1B 2種AAC2A2種BAC2B 3種AAC3A4種AAC4A 4種BAC4B4種CAC4C4種CHAC4CH4種DAC4D 5種AAC5A 7種AAC7A7種BAC7B8種AAC8A 8種BAC8B8種CAC8C 9種AAC9A9種BAC9B

合金系

特色

用途例

Al−Cu系

機械的性質が優れ、切削性もよいが、鋳造性がよくない。

架線用部品,自転車部品,航空機用油圧部品,電装品

Al−Cu系

同上

架線用部品,自転車部品,航空機部品,重量機部品

Al−Cu−Si系

鋳造性がよく、引張り強さはよいが、伸びが少ない。

マニホールド,デフキャリヤ,ポンプボデー,シリンダーヘッド

Al−Cu−Si系

鋳造性がよく、一般用として広く用いられる。

バルブボデー,クランクケース,クラッチハウジング

Al−Si系

流動性が優れ、耐食性もよよいが、耐力が低い。

ケース,カーテンウォール,複雑な形状なもの

Al−Si−Mg系

鋳造性がよく、じん性がすぐれ、強度を要する大型鋳物に用いられる。

ブレーキドラム,ミッションケース,クランクケース,ギヤボックス,エンジン部品

Al−Si−Cu系

鋳造性がよく、引張り強さがよいが、伸びは少ない。

クランクケース,シリンダーヘッド,マニホールド,航空機用電装品

Al−Si−Mg系

鋳造性が優れ、耐圧性、耐食性もよい。

油圧部品、ミッションケース,フライホイルハウジング,航空機用機体部品,

Al−Si−Mg系

鋳造性がAC4Cと同様に優れ、機械的性質も優れている。高級鋳物に用いられる。

アルミホイル,架線金具,航空機用エンジン部品及び油圧部品

Al-Si-Cu-Mg系

鋳造性がよく、機械的性質もよい。耐圧性を要するものに用いられる。

水冷シリンダーヘッド,クランクケース,シリンダーブロック,航空機用油圧部品及び電装品

Al-Cu-Ni-Mg系

高温で引張強さがよい。鋳造性はよくない。

空冷シリンダーヘッド,ディーゼル機関用ピストン,航空機用エンジン部品

Al-Mg系

耐食性が優れ、じん性がよく、陽極酸化性がよい。鋳造性がよくない。

架線金具,舶用部品,とって,彫刻素材、事務機器、いす、

Al-Mg系

耐食性が優れ、機械的性質もよいが、鋳造性がよくない。経年変化により引張強さは増すが伸びが特に減少する。

光学機械フレーム,ケース,航空機部品,航空機用機体部品

Al-Si-Cu-Ni-Mg系

耐熱性が優れ、耐摩耗性もよく熱膨張係数が小さい。引張強さも高い。

自動車・ディーゼル機関用ピストン,舶用ピストン,プーリー,軸受

Al-Si-Cu-Mg系

同上

自動車用ピストン,プーリー,軸受

Al-Si-Cu-Mg系

同上

同上

Al-Si-Cu-Mg系

耐熱性が優れ、熱膨張係数が小さい。耐摩耗性はよいが、鋳造性や切削性はよくない。

ピストン(空冷2サイクル用)

Al-Si-Cu-Mg系

同上

ピストン(ディーゼル機関用)空冷シリンダー

(3) 鉛  元素記号Pb。 比重が大きく、やわらかく低融点であり、展性が大きく潤滑性があり耐食性が優れています。機械関係ではそのまま使われることはあまりなく、快削鋼や快削黄銅被削性をよくするために添加する。軸受合金に使われるのは潤滑性をよくするためです。  用途例:はんだ・活字合金・ヒューズ・スプリンクラー・絵の具のチューブなど

 

(4)亜鉛  元素記号はZnです。腐食しやすく、弱いので亜鉛そのものとしてはほとんど使われません。鉄板の錆どめのメッキ材料、印刷の製版用、電池のマイナス電極、黄銅などの合金材料として広く使われています。亜鉛合金の特徴は、時間の経過と共に収縮する(5週間くらいで止まる)。

 

(5)すず  元素記号はSnです。低融点でわらかく、弱い金属です。ブリキ版のメッキに使用されくらいで、ほかに合金材料としていろいろなものに利用されています。

 

(6)クロム  元素記号はCrです。ステンレス鋼をはじめ各種合金に使用されます。ふつうよく見られるのが錆止めのメッキです。鉄にクロムを加えたものは電熱線として使われたり、鉄にクロム14〜15%を加え電車の抵抗器に使用したりもします。

 

(7)ニッケル  元素記号はNiです。耐食性の優れた金属で、メッキ・合金材料として使用されます。単体としては、真空管の電極などに使用される。合金材料としては、Ni(40〜50%)と銅の合金は、電気抵抗体材料として使用されます。
 また、Ni(63〜70%)と銅の合金としては「モネルメタル」で耐食性・耐酸性がよく、機械的性質もよく、耐熱性もよい。
 モリブデン・クロム・鉄・けい素などを加えたものとして「ハステロイA〜D」「インコネル」と呼ばれるものもあります。そのほか、ニクロム線(NCHW)、点火栓の中心電極に使用されています。

 

(8)マンガン  元素記号はMnです。各種合金に少しずつ加えられて、焼入れ性をよくするのに有用な金属です。乾電池のプラス電極に二酸化マンガンMnO2として使用されています。

 

(9)タングステン  元素記号はWです。高融点金属でほかの金属のように溶かして製錬できないので粉末を精製しています。白熱電球のフィラメント、電気の接触機、自動車エンジンの高圧回路などに使用されています。

 

(10)モリブデン  元素記号Moです。特殊鋼に添加され焼入性がよくなり、ねばりがでる。高融点ということで電球、真空管内のタングステン線支持体、電極に使われる。また硬質ガラスの熱膨張係数とほとんど同じで、その酸化物がガラスによくとけるので気密封着に都合がよく、ガラス封入導線として使用される。また、ガラス溶融電極にも使用されている。

 

(11)バナジウム  元素記号Vです。これは合金用材料です。耐摩耗性をよくし、ねばり強さも大きくする。

 

(12)コバルト  元素記号Coです。これも単体では使われず、合金元素として耐熱合金・永久磁石・ハイス・超硬合金などに添加される。
 耐熱合金には、耐熱鋼・耐食耐熱超合金(スーパーアロイ,インコネル,インコロイ)があるが、加工が難しいので、ロストワックス鋳造法などで成形される。
 ジェットエンジン,ターボ過給機,タービンなどに使われる。また、ステライトと呼ばれるものも耐摩耗,耐熱を目的として肉盛して使われるコバルト合金です。このなかでCo(60%前後),Cr(30%前後),Mo(5〜6%)の合金は歯科用合金として使われます。

 

(13)タンタル  元素記号はTaです。高融点金属で、電子ビームで溶かす方法で作られる。炭素と化合させた炭化タンタルとして超硬合金に加えて、高温での摩耗性を高めるのに使われています。
 タンタルそのものとしては、耐酸性がいちばんよいので薄板として化学装置に使われますが、よく知られているのは、電子部品としてのタンタルコンデンサです。

 

(14)金  元素記号はAuです。金はむかしから装飾品として使われてきました。これは、金がやわらかく展延性の最もよい金属であり、耐食性にも最も優れているからです。また、現在は電子部品のリード線,接点,歯,金貨などに多く使われています。
 金にはカラット(K)という成分比を表わす単位が習慣的に使われます。これは24カラット(K)を100%としたものです。

 

(15)銀  元素記号はAgです。銀も金と同じようにむかしから貨幣や装飾用に使われてきました。使用量でいちばん多いのはフィルムなどの感光材料です。あと電気器具の接点などです。

 

(16)白金  元素記号はPtです。耐食(酸)性がよいので化学工業のるつぼなどにつかわれます。工場で知られているのは、熱電対としての高温温度計がある。電気抵抗が広い範囲で温度に比例することと、融点が高いからです。特殊なところで、メートル原器は白金に10%のイリジウムを加えたものです。

 

(17)水銀  元素記号はHgです。これは常温で液体の金属です。温度計,水銀スイッチ,水銀灯,水銀電池などに使用されています。

 

(18)黄銅  これは銅と亜鉛の合金で、通称「しんちゅう」「真鍮」,英語では「ブラス=Brass」といいます。
 黄銅はやわらかい銅と亜鉛との合金ですが、この合金になるとどちらよりも硬くなり、伸びは小さくなり、引張り強さも強くなります。六四黄銅(Cu:60%,Zn:40%)は機械部品としてよいものになり、切削性もよいが、熱膨張率も大きいので切削熱による寸法誤作がよく起るのが欠点です。用途例は、船のスクリュー,管楽器,時計用歯車,自動車のラジエター,水道の蛇口,仏具などがあります。
 また、銅よりも安く、融点も低いため鋳物としても便利で、展延性もよく、錆にくく、見た目も良いため、機械部品以外にも広く使われています。

     黄銅はふつう黄銅のほかに、他の元素を加え特殊な性質をもたせたものがいくつもあります。

快削黄銅     鉛を0.6〜3.0%加えて削りやすくしたもので、精密な加工を必要とする歯車などに使われます。JISの棒材記号はC3600番台で、板材はC3500番台、とくに打抜性のよい時計歯車用はC3710番台がある。

ネーバル黄銅   六四黄銅にすずを0.5〜1.5%加えたもので、腐食に強いので船舶用部品に使われます。JIS記号はC4600番台です。

高力黄銅     六四黄銅にアルミ,鉄,マンガン,鉛などを加えたもので、引張強さ・かたさを向上させたものです。JIS記号はC6700番台と高力黄銅鋳物HBsCです。

鍛造用黄銅    六四黄銅に鉛,鉄,すずをいれたもので、熱間鍛造性がよく、被削性もよい。JIS記号はC3700番台です。

 

(19)青銅  これは銅とすずの合金です。むかし大砲の砲身がこの青銅の鋳物でつくられていたことから通称「砲金」と呼ばれます。用途例は、給排水用栓,彫像,軸受ポンプ胴体,ブッシュ,ギヤ,シールリング,水道メーターなど

すず青銅     実際上鋳造にしかつかわれないので「青銅鋳物」として規格があるだけで、亜鉛・鉛もはいっている。JIS記号はBCです。

りん青銅     すずを3〜9%,りんを0.03〜0.35%加えたもので、かたく、引張強さも大きいので、機械部品としてこれが多く使われます。ウォームギヤや電導性がよいのでスイッチ関係に広く使われている。

快削りん青銅  鉛をいれて削りやすくしたもの。

アルミニウム青銅  銅を80〜90%にし、アルミニウムのほか鉄、ニッケル、マンガンをくわえたもので、引張り強さ、かたさが、ともにりん青銅より大きく機械部品としてよく使用される。

鉛青銅      すず青銅に、すずと等量以上の鉛を加えたもので、ニッケルもはいっている。潤滑性がよくほとんどが軸受類の鋳物として使用されている。

シルジン青銅  けい素と亜鉛の入った鋳物用合金です。亜鉛を少なくしているので海水に強く、引張り強さもネーバル黄銅より大きいので、船舶部品の材料となります。けい素黄銅ともよばれます。

 

(20)丹銅  銅(80〜95%)と亜鉛(20〜5%)の合金です。展延性が大きいので板材からの絞り加工,装飾金具に使われます。用途例:口紅のケースなど

 

(21)白銅  ニッケル(9〜33%)と銅の合金で、耐食性特に耐海水性がよく、高温での使用に強い。貨幣(100円玉)にも使用され銀貨の記念硬貨はほとんどこれです。

 

(22)洋白  黄銅にニッケルを10〜20%いれたもので、装飾品、食器、楽器などに使われています。耐疲労性・耐食性もよいことから小さい機械部品にもつかわれたり、また、ばね性もよいので、ばね材にも使われます。

 

(23)チタン   元素記号はTiです。これは新しい実用金具です。特徴は、なんといっても耐食性が非常によく、比重も小さい割にかたく、高温にも耐える金属です。ただ加工性が非常に悪く、熱伝導も悪く、ねばりがあり、加工硬化起こすなどの欠点もある。用途は、ジェットエンジン部品、航空機の構造体、ロケット関係に使用される。


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