水回りの材料館② プラスチック その1  


プラスチックの知識
 奥様方の会話の中に「プラスチックスってなあに?」 「あら、プラスチックスはプラスチックスじゃないの」とか「合成樹脂のことじゃないの」、ビニールのことよ」などというやりとりを耳にします。
 一般消費者、特に家庭の主婦にはプラスチックスという言葉ほど内容のはっきりしないものも少ないと思われます。それにもかかわらずプラスチック製品はどんどん私達の日常生の中に浸透して、巌然と自己の存在を主張しているから否が応でも「プラスチックスって何かしか」ということになるわけです。
 「プラスチックス」という言葉は、語源的には「塑造できるもの」という程の意味で、熱や圧力又はその両方によって形を造ることのできる物質を総称する言葉であり、広い意味ではゴムや石膏などもそのうちに含まれる訳ですが、今日一般に使用されている用法ではプラスチックスは所詮合成樹脂と同義語と考えて良いように思われます。
 それでは、合成樹脂とは何か、ということになりますが、これも文字の解釈からすれば、「人間が合成した松脂のような物質」という程の意味で、松脂をご存知の方には凡そ御見当がつくかと思います。ここで一番大きな違いはゴムや松脂のように天然にできたものではなくて、人間が化学的に合成したものであるということです。

プラスチック製品について
 
プラスチック製品は近代科学が生んだ材料であり、建築設備にも利用価値が認められつつある材料である。生まれでたのが戦後のもので本格的に使用してから40年前後なので、いまだに色々な難点はあるが、研究の結果、しだいに改良されて将来大いに普及される可能性は十分に備えている。
 現在使用されているプラスチック製品はFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製が多い。製法としてガラス繊維(ガラスの太さ約7〜9μm)におもに不飽和ポリエステル樹脂(エポキシまたはフェノール樹脂)を含浸したものを成形したもので、ガラス繊維は鉄筋コンクリートの鉄筋の役をしていてプラスチックを強化している。ガラス繊維と樹脂の成層は厚さ3〜5mmで、製品の表面はガラス繊維のない「ゲルコート」と称する層で仕上げられており、その厚みは0.25〜1mmであるが、この部分を自由に着色することができる。そして、その表面をつや出しバフを掛けて仕上げるのである。現在、市販品としてはバス、流し、シスタン、水槽類などで製作容易で比較的大型のものが主である。洗面器、大便器などは目下研究中で、市販品としてはない。
 次に、長所と短所としては次のとうりであるが、プラスチック製品は科学合成品であるので材質にばらつきがあり、材質の疲労、色あせなど研究余地があり、現場取り付け施工上にもまだ研究余地が多分にある。

長所
1 軽量である事。運搬・取り付けに非常に便利である。
2 保温性があり、感触が柔らかく快適である。
3 カラーデザインが自由である。
4 強アルカリ性以外の化学性に強く、耐久性が長い

短所
1 有機物であるので材質の疲労、色あせがある。
2 傷がつきやすく、熱に対して弱い。
3 強アルカリ性に弱い。


プラスチック Q&A  
  プラスチックと環境の問題がクローズアップされて久しいですが、最近特に新聞紙上で、包装材のリサイクル、地球温暖化、ダイオキシンなどに関する記事が目立つようになり、そのたびにプラスチックの悪い面ばかりに焦点が当てられ、包装材がいっそう悪者になる傾向があるように思われます。
 もしプラスチックがなくなれば、あらゆる工業・流通が成り立たないといっても過言ではありません。経済の発展、快適で便利な生活に大きく貢献していることも強調しておく必要があります。
プラスチックは何からつくるのですか。
 プラスチックのほとんどは石油から作られますが、一部天然ガスも利用しています。
 原油からガソリン、灯油、ナフサ、軽油、重油などに加熱分解され、さらにナフサから、エチレン、プロピレン、スチレン等のモノマーを分離精製あるいは化学反応を利用して製造します。これらのモノマーは常温でガス状または液状ですが、触媒等を添加して高圧や熱をかけると分子が長くつながったポリマーになります。
 プラスチックという言葉は可塑性(plasticity)をもつものという意味のギリシャ語からきています。なお、セロハン(パルプが原料)やアルミ箔(軽金属)はプラスチックではありません。
(エチレンモノマー)       (ポリエチレン)
  H  H            H   H  H  H  H
  | |   重合      |  | | | |
  C=C   →    ・・・−C−C−C−C−C−・・・
  | |            |  | | | |
  H  H            H  H   H  H  H
プラスチックの種類(包装用途)にはどんなものがありますか。
工業用途、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)、熱硬化性樹脂も含めると種類は非常に多くなりますが、包装用途としての主要なものは次の通りです。
・ポリエチレン(HDPE、LLDPE、EVA等)
 ポリエチレン袋、ごみ袋、ポリ容器、その他ラミネート用等。柔軟性、耐衝撃性、シール性に優れています。
・ポリプロピレン(PP)
 OPP、CPP、耐熱成型容器等。耐熱性、防湿性に優れています。
・ポリスチレン(PS、発泡PS)
 カップ麺容器、トレイ、成型容器等。バリヤー性、耐衝撃性に劣り、フイルムとしてはあまり使用されません。
・ポリ塩化ビニル(軟質、硬質PVC)
 業務用ラップフイルム、シート、成型容器、トレイ、その他工業用途、家庭用品に多数使用。強度、バリヤー性に特徴がなく、熱シールもしにくいので ラミネート用フイルムとしてはほとんど使用されません。
・ポリエステル(PET、ポリエチレンテレフタレート) 
 ペットボトル、包装用フイルムなど。強度、耐熱、耐寒性に優れます。工業的にも繊維、磁気テープ、絶縁材等に多数使用されています。
・ナイロン(Ny、ポリアミド---PA)
 ONやCNなどの包装フイルム、ロープ、繊維。強度、耐寒性、耐衝撃性、耐ピンホール性に特徴があります。
・ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
 家庭用ラップフイルム、Kコートフイルムのコーティング剤などに使用されています。バリヤー性に優れます。
・ビニロン系(PVA、EVOH)
 プラスチックフイルム中最高のガスバリヤー性を持ち、ガス充填包装などに使用されています。
 このうち、最初の4種類は四大プラスチックと呼ばれ、容器包装、工業用などに多く生産されています。

プラスチックは屋外に放置するとどうなりますか。
 プラスチックは屋外放置で太陽光線にさらしておくと、長い分子が切れてぼろぼろになります。
 特にポリプロピレン(OPP,CPP)は、プラスチックの中でも耐候性(耐光性)に劣り、1年ぐらい経つと手で揉んだだけで粉々になるくらい劣化します。ポリエチレンもポリプロピレンほどではありませんが、やはり劣化します。しかし、ポリエステルは1年後でもほとんど変化がなく、耐候性に優れています。このように、耐候性はプラスチックの種類によって異なります。

プラスチックは埋め立てるとどうなりますか。
 プラスチックは光や熱(300〜400℃)で劣化しますが、埋め立てた場合、熱もかからず、光にもさらされないので急速に劣化することはないはずです。
 プラスチックの歴史が短いのでデータはありませんが、少なくとも半永久的にそのまま残ると思われます。

生分解性プラスチックとは何ですか。
 野山などに散乱したプラスチックごみが紙・木材のように比較的短期間で土に戻れば環境や美観に大きな支障はないという考えがあります。
 放置された、あるいは、土中に埋められたプラスチックが、自然分解し、最終的には二酸化炭素と水になって、消滅するように工夫されたものが分解性プラスチックで、光で分解する光分解性と、微生物などの作用によって分解する生分解性があります。
 現在は生分解性プラスチックが未来のプラスチックとして有望視され、すでにいくつか実用化されています。しかし、価格的に10倍くらい高価である、性能的に劣る、中間生成物の安全性が不明等、本格使用には多くの課題があります。
プラスチックは燃やすとどうなりますか。また、環境に対する影響はありますか。
<燃焼カロリー表>
材料 発熱量(kcal/kg)
低密度ポリエチレン   11,140
高密度ポリエチレン   10,965
ポリプロピレン    10,506
ポリスチレン    9,604
ナイロン    7,371
ポリ塩化ビニル    4,315
ポリエステル    5,600
ポリ塩化ビニリデン    2,600
都市ゴミ  700-2,000
木材    4,500
木炭  3,000-4,000
石炭  5,000-7,500
灯油   10,500
紙類    3,868
 ほとんどの包装用プラスチックはよく燃え、PE、PP、PETなどは有害物質も悪臭も出しません。最終的には二酸化炭素(炭酸ガス)と水になります。
 しかし、PSは黒いススを大量に発生します。PVCとPVDCは刺激のある塩化水素ガスを出し、黒煙を出して燃えますが、自燃性がなく、炎から取り出すと自己消火します。
 プラスチックの燃焼による環境への影響として、高熱のため焼却炉を傷める、PVCとPVDCは塩化水素ガスを発生するので炉を傷めたり酸性雨の原因になる二酸化炭素を発生するので地球温暖化を促進するなどが指摘されています。
 次表に各種材料の燃焼カロリーを示しました。一般の都市ゴミに比べてプラスチックの発熱量が高くなっていますが、近代的な都市ゴミ焼却炉は、高発熱による炉壁破損に対応しており、逆に、適当量のプラスチックが混入したほうが、よく燃え、助燃のための灯油や重油の使用量を減らすことができます。

 ポリ塩化ビニル(PVC)とポリ塩化ビニリデン(PVDC)には塩素が含まれており、焼却すると塩化水素ガスが発生します。
 これが焼却炉を腐食させたり、酸性雨の原因といわれました。しかし、都市焼却炉の多くは塩化水素などによるパイプ腐食防止や排ガス処理装置が整備されています。また、酸性雨の原因としては窒素酸化物の影響のほうがはるかに大きいと考えられており、一時ほどPVCに対する風当たりは強くなくなりました。
 つぎに地球温暖化についてですが、プラスチックの燃焼は大気中の二酸化酸素濃度を上昇させることになり、地球温暖化を加速させると考えられています。プラスチックの影響度を測る方法や評価に異論はありますが、疑いを軽減させるためにもリサイクルは必要と考えます。

ダイオキシンとはなんですか。
 ダイオキシンとは、有機塩素化合物のポリ塩化ジベンゾパラジオキシンとポリ塩化ジベンゾフランを「ダイオキシン類」と総称し、多くの異性体があります。
 中でも2・3・7・8四塩化ダイオキシンは人類が作り出した最強の毒物といわれ、発ガン性その他の障害が報告されています。この猛毒ダイオキシンによる環境汚染が広がりつつあり、厚生省では2000年4月、ダイオキシンの法規制を発表したところです。
 ダイオキシンの発生源はいろいろありますが、もっとも多いのは塩素を含んだ一般ごみの焼却炉からといわれています。原因となる塩素は食品中の塩分やPVCから供給されるので、ここでもPVCを含めて、プラスチックを分別再利用するべきであるといわれています。
 ダイオキシンは本来自然界にはない物質で、時間が経っても分解しないで、主に魚介類の食事から人体に取り込まれるところはPCBとおなじです。広い意味でPCBもダイオキシン類です。

プラスチックの材質識別マークとは何ですか。
 アメリカが業界の自主規制で制定していたのを法制化したもので、容器包装の材質識別のためのマークです。ヨーロッパでも広く使われるようになり、我国でもリサイクル法で、一部のペットボトルにこの識別マークをつけることを義務つけています。このマークは自由に使えます。

1.ポリエステル PET           
2.高密度ポリエチレン HDPE      
3.ポリ塩化ビニル PVC          
4.低密度ポリエチレン LDPE       
5.ポリプロピレン PP           
6.ポリスチレン PS            
7.その他の樹脂(積層フイルムも含む)

包装リサイクル法とはどんなものですか。
 正式名称は「容器包装に係わる分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」で、ビン、缶を含めたあらゆる容器や包装の廃棄物を、市町村が分別収集し、包装材の製造者、使用者等の事業者が再生利用することを義務付けた法律です。
 1995年6月に公布され、ガラスびんとペットボトルが97年4月から施行されており、その他のプラスチックは2000年から実施されます。
 資源の再利用、プラスチックごみの減量化、最終処分場の延命を図ることを目的としています。廃プラスチックは油化し、燃料として再利用することになっています。ペットボトルでは、市町村の分別収集が進んでおらず、まだ本格的には機能していません。

LCAとはなんですか。
 Life Cycle Assessmentのことで、エコバランス、ライフサイクルアナリシスなどとも呼ばれます。環境への負荷の低減に資する製品としての評価を示します。
 つまり、ある製品が、生産から流通、消費、廃棄、再資源化、廃棄処理までの過程で、どれだけのエネルギーを消費し、環境にどれだけの影響を与えたかを分析・評価するものです。
 ISO14000Sや環境基本法で定義付けられており、その製品がどれだけ環境に優しいのかという評価の基準になります。このLCAによる裏付けがなければエコマークの表示や「地球に優しい」「環境に優しい」という表現は使えません。

プラスチックの資源はいつまでありますか。
 ずいぶん前に石油はあと20年しか持たないといわれましたが、20年経ってもあと20年とか40年とかいわれています。これは油田開発や石油採掘技術の進歩によるものです。現在ではあと40年ぐらいといわれています。石油がだめなら石炭、天然ガスも使えます。動植物油脂、微生物を利用して農産物などからもプラスチックができる可能性があります。

環境保全に適した包装とはどんなものですか。
 包装コストの負担を大きくしないためにも、環境負荷低減のためにも、次のことに留意したいものです。
・LCAを考慮してフイルムの材質を決定、全体の厚みも減らして軽量化する。容器をフイルムに変更する。
・最低限必要な商品保護機能は備えるが、過剰な高機能化は避ける。包装食品の主役はあくまでも食品です。
・材質は分別しやすい、リサイクルに適したものにする。また識別マークもつける。



プラスチック物性表(熱可塑樹脂及び熱硬化樹脂について)
ABS樹脂 高密度ポリエチレン ポリプロピレン ポリスチレン 塩化ビニル ポリカーボネート アクリル シリコーン
(熱硬化樹脂)
ウレタン
(熱硬化樹脂)
略号 ABS PE PP PS PVC PC MMA - -
特性 耐候・着色性 耐薬品性 成形性 成形性 耐磨耗性 耐熱性 透明・耐候性 - -
使用されている部品例 樹脂ハンドル
シャワヘッド
ボールタップ浮玉
ホース接手
カラーリングポイント ペーパーホルダー スリップパッキング インサート等の機械的強度のかかるパーツ 透明ハンドル - -
用語 アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂 ポリエチレン樹脂 ポリプロピレン樹脂 ポリスチレン樹脂(スチロール) 塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル) ポリカーボネート樹脂 - - -
強度 鋭い衝撃に強く、強靭 硬く、強靭 堅硬 堅硬 柔軟 強靭 堅硬 広範囲に渡る 強靭で衝撃に強い
熱変形温度(℃) +66〜+107 +60〜+82 +99〜+116 +66〜+91 +54〜+74 +130〜+138 +66〜+99 - -
燃焼速度 遅燃 遅燃 遅燃 灯 直接焔に触れると遅燃 遅燃または自己消火 自己消火 遅燃 難燃または遅燃 燃焼を助成することはない
電気的特性 高抵抗性 良誘電体 誘電率高 絶縁性良 良好な誘電体
低い力率
絶縁性優秀
耐酸性 大部分には抵抗力あり ほとんど変化なし 侵される 酸化性酸にのみ侵される 抵抗あり 酸化性酸により侵蝕 弱酸には抵抗力あり 強酸にてわずかに侵蝕 弱酸にては変化なし
耐アルカリ性 変化なし 非常に抵抗力あり 強アルカリに抵抗力あり 変化なし 抵抗力あり 強アルカリで徐々に侵蝕 弱アルカリに抵抗し、強アルカリで侵蝕 強いアルカリで変化を呈す -
耐候性 優秀 特殊の組成の場合、いく分侵される 特殊の組成の場合、いく分侵される 連続使用はよくない あまり推薦できない 連続しようはよくない 優秀 - 自己に抵抗力なし
成形性 優秀 優秀 優秀 -
比重 1.01〜1.15 0,941〜0.965 0.90〜0.91 0.98〜1.10 1.35〜1.45 1.20 1.17〜1.20 1.60〜2.0 -


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