水回りの材料館⑤ メッキ その2 


日本の貨幣の成分表
現在の日本の貨幣は、1円玉がアルミニウムであとはみな銅合金である。
現在使われている貨幣の銅を集めると10万トン以上になるといわれている。
これは1人当りよく1キログラム以上のコインを持っているという計算になる。
貨幣 成分 サイズ
500円
白銅 ・銅 75%
・ニッケル 25%
重さ 7.2g 直径 26.5mm
100円
白銅 ・銅 75%
・ニッケル 25%
重さ 4.8g 直径 22.6mm
50円
白銅 ・銅 75%
・ニッケル 25%
重さ 4.0g 直径 21.0mm
10円
青銅 ・銅 95%
・亜鉛 3〜4%
・錫 2〜1%
重さ 4.5g 直径 23.5mm
5円
黄銅 ・銅 60〜70%
・亜鉛 40〜30%
重さ 3.75g 直径 22.0mm
1円
アルミニウム 100%
重さ 1.0g 直径 20.0mm
奈良と鎌倉の大仏の比較
  奈良の大仏 鎌倉の大仏
創建年 745年 1252年
事業のかたち 聖武天皇の発願による国家的事業 浄光僧侶の勧進による民間事業
技術 大陸技術の導入による青銅鋳造 わが国独自の技術による青銅鋳造
材料の成分 銅が93.15%含まれた青銅 錫と鉛の含有量が多い青銅(29%)で、当時さかんに輸入されていた宋の貨幣を使用
造り方 8回の積層法 7回の積層法
サイズ 高さ 14.21m
重さ 250t
11.4m
110t

黄鐘(おおじき)調の音色を求めて
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。

 だれもが一度は、あのゴォーンと低くこもった梵鐘の響きに、思わず壮厳な気持ちになった思い出があるのではないでしょうか。

 そこには、日本古来の音律「十二律」でいう黄鐘調のあの音色を求めて、鐘師の大変な苦労があるようです。

 梵鐘は鋳造によって造られますが、鳴るものであるだけにその製造は極めてむずかしいようです。一般に鋳造物には 気泡や巣がどうしても存在しますが、気泡は水素ガスや空中の酸素が、溶けた合金に吸収されて発生するものであり、巣とは、溶けた合金が収縮して 固まる時にできるものです。これは現代の技術をもってしても完全に除去することはできません。仏像などの場合、この気泡が内部にできれば構いま せんが、表面に大きくできてしまえば失敗であり壊してやり直しです。推定するところ、現在に残されている仏像の数倍の失敗作があったものと考えられます

 梵鐘は鳴器であるため、この気泡や巣を嫌い、また、物が大きいため極めて高度な技術を必要としたようです。地金の質、配合、鐘の肉厚などが音色 に微妙に影響します。図に示すように、笠の部分が厚く、その下から乳の間にかけて薄く、また下にいって厚くなり、駒の爪で最大厚になっています。 この厚みの割合は7:5:3とか5:3:2とかいわれ、その割合に鋳造師の秘術があるようです。このように肉の厚さが音色にとって微妙であるた め、気泡や巣があっては意味がなくなります。昔、鐘師の重なる失敗を見かねたその娘が溶けた合金の中に身を投じて人身御供になったら良い鐘がや っとできたという伝説がありますが、そんなことからも、そのむずかしさがうかがわれます。

 鐘は仏教の伝来とともに大陸から伝わったものですが、銘文をもつ日本製の鐘として現存する最古のものは、京都花園妙心寺 にある鐘で、697年である。我国における銅の発見が708年ですから、その10年前になります。朝鮮半島から原料を輸入し、技術者も半島からの 渡来人であったと思われますが、それにしても当時にしてはよくこんな傑作が造れたものだといわれています。

 最近は、除夜の鐘くらいしか鐘の音を聴く機会もなくなりましたが鐘師の苦労も思い併せながら、あの黄鐘調の「無常の響き」をじっくりと聴いてみ るのもよいかもしれません。


さびの話 
「鉄はさびる」とか「ステンレス鋼はさびない」とかいいます
 「さび」とは何かといいますと、「酸化皮膜」すなわち金属が酸素などと化合した化合物のことです。
 銅の場合は緑青色の酸化皮膜ができ、鉄の場合は赤茶色の酸化皮膜ができるということになります。ステンレス鋼の場合は「さびない」のではなくて、その表面に酸化皮膜、つまり一種のさびである透明で薄い膜が安定して変化しない状態になっているということです。アルミニウムの場合も、やはりごく薄い酸化皮膜ができ、この皮膜が緻密で無色透明で、しかも地金にしっかりと固く密着しているのです。クローム、ニッケルなども同様です。
 同じ「酸化皮膜」でも、「さび」といわれるものと「さびない」といわれるものとがありますが、その区別は「きれい」か「きたない」かということによるようです。


金物に用いる代表的なメッキ
GBメッキ(銅古美)
硫酸系の着色剤を使った銅のイブシ仕上げで、長年に亘って、家具や建具の金物に広く用いられてきた代表的な仕上げです。
最近では、薬品で黒染めせずに、銅上に直接、黒ニッケルメッキを施してこれにバフ研磨で下層の銅を表出させるという方法を取っています。
GBとは、Germanic Bronze の略称です。GBは、防錆性よりも装飾性を主な目的としたメッキのため、仕上げには保護コーティングが必要になります。
このメッキの欠点は、高温で変色しやすいため、高温の焼き付け乾燥仕上げができないことです。
GBメッキの工程
素材 ⇒ 脱脂 ⇒ 銅メッキ ⇒ 薬品着色 ⇒ バフ研磨 ⇒ クリヤー塗装 ⇒ 乾燥

仙徳メッキ
「せんとく」と読みます。語源は、中国の明の宣徳年間(1426〜1435)に研究。製作された青銅器の着色法に由来しています。
この着色法は、我が国でも江戸時代から鋳金の最も代表的な着色法となって今日に至っています。
本来の宣徳色は、古書によると、「青銅器を100℃以上に加熱しておき、その表面を鉄錆汁や植物染料汁で何回も何回も刷いては強固で美麗な皮膜を作り上げ、その後イボタロウで磨き出す」となっています。
しかし、現在このような工程を取り入れることはとても不可能です。現在では、化学薬品による着色でこの工程を短時間で仕上げて同じような色合いを出すように工夫されています。
なお、宣徳の「宣」の字が「仙」に替わっているのは、原因不明ですが、ホンノ愛嬌といったことでしょうか。
仙徳メッキの工程
素材 → 脱脂 → 銅メッキ → 真鍮メッキ → 薬品着色 → バフ研磨 → クリヤー塗装 → 乾燥

銀古美色メッキ
古来我が国では、金や銀に古色をつける「古手処理」という加工技術がありました。これが現在、古美(ふるび)と呼ばれている色の源流です。現在では、一般に銀古美メッキは、ニッケルメッキの上に銀メッキをして、そのまた上に黒ニッケルメッキを施し、それから部分的に黒ニッケルメッキを剥がして下の銀層を出すという方法により、本来の銀古美に近い色調に仕上げています。
銀古美色メッキの工程
素材 → 脱脂 → 銅メッキ → ニッケルメッキ → 銀メッキ → 黒ニッケルメッキ → バフ研磨 → クリヤー塗装 → 乾燥

WBメッキ(ホワイトブロンズ)
ニッケルメッキを施した上に、サテーナ研磨剤によるバフ研磨をして、製品を艶消しの状態に仕上げたものをホワイトブロンズメッキ、略してWBメッキといっています。古くから用いられてきた表面処理の方法で、その落着いた色調はさまざまな分野で好まれてきました。
モダンでシンプルな家具や建築に似合うため、それらが多くなってきた現在、最も多用されているメッキのひとつです。また、耐蝕性も良好です。
 なお、ニッケルを含んだ銅合金の「ホワイトブロンズ」(銅65%、ニッケル20%、亜鉛6%の合金)をメッキしたものということではありません。
WBメッキの工程
素材 → 脱脂 → 銅メッキ → ニッケルメッキ → サテーナバフ研磨 → クリヤー塗装 → 乾燥

ニッケル・クロームメッキ
一般にはクロームメッキと呼ばれており、ピカピカして冷たくシャープな感じで、最も金属感のあるメッキといえるでしょう。
クロームは単独で用いられることは少なく、下地としては銅やニッケルメッキが併用されます。特徴は、非常に硬く、光沢があり大気中での腐食が少ないことですが、難点としては、割れとかピンホールが生じ易い事で、それをカバーするため、下地処理として銅やニッケルメッキが必要となります。
なお、クロームメッキは最終メッキとしてのみ使用されます。
ニッケルメッキは均一電着性にすぐれ、ピンホールも少なく、素地の保護能力にたいへん優れています。下地・中間・最終、いずれのメッキにも利用されています。
ニッケル・クロームメッキの工程
素材 → 生地研磨 → 脱脂 → 銅メッキ → 研磨 → ニッケルメッキ → クロームメッキ

金色メッキ
メッキのことを漢字で「滅金」とか「塗金」、「鍍金」と書くように、メッキといえば、やはり何といっても昔から「金」ということになり、金メッキがメッキの代表ということになります。
しかし、金はご存知のように大変高価なため、建具金物や家具金物の場合では、その使用は希で、多くは、本金をメッキする変わりに、似た色合いの真鍮合金をメッキしています。
金色とは、「金のような色をした」という意味になります。耐蝕性は一般に銅メッキよりは優れていますが、ニッケルやクロームメッキよりは劣ります。塗料による保護コーティングが必要になります。
金色メッキ
素材 → 脱脂 → 銅メッキ → ニッケルメッキ → 金メッキ → クリヤー塗装 → 乾燥

亜鉛メッキクローム処理
鉄鋼の防錆を目的とするもので、美装効果を目的とするものではありません。一般には、亜鉛メッキの後にクロメート処理と呼ばれる化学処理をして仕上げています。
これは、耐蝕性の向上を目的として、クローム酸液中に一瞬時浸漬する方法で、表面は黄系色で虹が掛かったような光沢面を作ります。
金物としては、鉄鋼製品で表面に出ない箇所の仕上げや、塗装仕上げの下処理として使用しています。
また、クロメート処理後に、皮膜中の黄色成分を取り除き脱脂したものがユニクロ処理です。これは、苛性ソーダ液に浸漬後水洗いを充分にします。耐蝕性はクロメート処理よりも劣化します。

GBメッキその他の銅着色について
 銅の着色は、製品を薬液中に浸漬する時間の長短によって、(薬品にもよりますが)概ね、艶のない赤色−茶色−褐色−黒色へと変化の過程を辿ります。これにバフ研磨の研磨布や研磨剤を変える事により、様々な、美麗な仕上り色が得られます。
 赤色に変化した段階で浸漬を止めて、バフ研磨仕上げをすると「赤GB」になります。同じように褐色で止めれば「マホガニー色」になり、黒まで変化させてからバフ研磨で光沢を出せば「銅古美色(ブロンズ色)」が得られます。

仙徳メッキその他の真鍮メッキについて
 仙徳その他真鍮のイブシ仕上げは、黒の濃淡ぼかしの色調と黄とがアンティークな雰囲気を醸し出し、照明器具などのインテリア商品、装飾品、美術工芸品、建築金物等に広く利用されています。
 仙徳とは、もともと中国・明の宣徳時代に造られた宣徳銅器の色に由来する着色法ですが、この宣徳色も戦後さまざまな色合いのものが生まれ、今ではどれが本当の宣徳色なのか分からないほどに同系色の多色化が進んでいます。明るい色の線特色で飾ると映えるデザインもあれば、落ち着きのある沈んだ宣徳色で飾ると重厚さを増すデザインもあります。こうした理由から、明るい色調から暗い色調までさまざまな宣徳色が研究され生まれてきました。
 また、いろいろな薬液の開発により、同じ作業方法なのに全然異なる色感の宣徳色を作り出してきました。

銀古美色メッキその他の銀のめっきについて
銀の独特な色調は古来より尊ばれ、金同様、装飾品全般に応用されてきました。
 広く、装身具・食器・バッジ・メダル・楽器などに光沢銀メッキが利用されています。また、フルートなどの管楽器に銀メッキを施すと音色が良くなることとか、食器類に銀メッキをすることで水分中の微生物が殺菌されて衛生上きわめて好ましいなどの利点もあります。
 銀メッキの最大の弱点は、大気中の硫化物によって褐色に容易に変色してしまうことです。この変色を防止するために、ロジウムを薄くつけるとか、クロメート処理をするとか、樹脂塗装を施すとか、様々な変色防止方法が考案されてきています。
 しかし半面、着色技術の点からいうと、この変色し易いという欠点は逆に利点になります。
 銀には古来よりいろいろな着色方法がありますが、その中心は銀古美色です。

WBメッキその他のニッケルメッキの応用例
 黒ニッケルは、メッキ直後の皮膜が脆くて光沢がないため、一般には膜厚2ミクロン(1ミクロン=1000分の1ミリメートル)以下でラッカー仕上げをしたものが精密光学機器の内部製品になどに利用されています。
耐食性は黒クロームに比べて劣りますが、軟質である点など、着色の分野では利用しやすい利点を多く備えたメッキです。
近年では、従来の薬品着色に変わって、黒ニッケルメッキを使用することが多くなっています。ことに、バフ研磨で黒の層をある程度削って仕上るとなれば、色が均一である点、シミが少ない点、バフ研磨後の変色が少ない点など、逆に利点となっています。
そんなことから、銅古美、真鍮古美、銀古美等、多くはこの黒ニッケルを着けて古美と称しています。

腐食について ふしょく Corrosion  
 いろいろな物質が周囲の環境から、化学的あるいは電気化学的な反応による溶解や変質などで部分的あるいは 完全に消耗していく現象。とくに、空気や海水などの自然な要因により金属が徐々に反応する場合に腐食とい う言葉がつかわれる。
 もっとも身近な例は鉄などに発生するさびである。複雑な反応により水と酸素をふくんだ鉄の水酸化物が生成する。
 鉄の酸化物は固体であり、鉄と同様金属の一般的性質をもっているが、多孔性でもろくかさばってきて、強度や硬度が大きく低下する。

鉄のさび止め鉄のさびをふせぐ方法としては、合金化、金属被膜、非金属の被膜の3種類がある。

合金化
 合金化では鉄そのものに化学的な耐食性がそなわり、他の方法にくらべてもっとも防さび効果が高いが、高価な方法である。
 ステンレス鋼はその好例で、鉄とクロムの合金を主体に、ニッケルなどの成分をくわえて製造される。ステンレス鋼はひじょうにさびにくく、さらに熱濃硝酸など腐食性の化学薬品に対しても耐性がある。

金属皮膜

 金属被膜による方法は、合金にくらべて効果はおとるが、より安価である。
 鉄板表面を亜鉛の被膜でメッキした亜鉛メッキ鉄(→ ガルバナイジング)がその代表例であり、傷や磨耗で内部の鉄が露出した場合にも防さび効果をもつ。これは亜鉛が鉄より高い化学反応性をもつためで、イオンをふくむ天然水が付着すると、亜鉛と鉄の間に微少な電位差が生じ、化学電池と同じ作用で亜鉛の溶出がおこる。その結果、亜鉛が先に腐食され、亜鉛のすべてが消費されるまで、鉄は保護されることになる。
 クロムやスズなど、鉄よりも反応性の小さい金属で被覆した場合には、被覆が完全なうちは鉄が保護される。
 しかし亜鉛メッキ鉄とは逆の電位差が生じるので、傷などで内部の鉄が露出すると、被覆金属よりも先に鉄が溶出し、鉄の腐食が急速に進行する。

非金属の被膜
 非金属の被膜はもっとも安価で、もっともひろく利用される方法である。この方法では、非浸透性の物質で鉄の表面をおおい、空気や水との接触をふせぐ。
 被膜が完全なうちは防さび効果があるが、被膜が損傷すると、損傷箇所からさびが発生する。腐食の進行速度はふつう、被膜がない場合とそれほどかわらない。
 焼結したエナメルは、非金属の被膜のなかでもっとも防さび効果が高い。また、もっとも安価なものは、赤色酸化鉛PbO3のような塗料である。

アルミニウム・銅の腐食
 アルミニウムは鉄よりも化学的反応性が高いが、通常の環境では、アルミニウムの腐食は、鉄よりもはるかにおこりにくい。
実際には、空気中の酸素との反応で、金属アルミニウムの表面には、酸化アルミニウムの被膜が形成される。
 ただし酸化アルミニウムの被膜は構造が緻密で、酸素や水を透過せず、腐食が内部のアルミニウムにまで進行することはない。
 鉛や亜鉛の反応性も比較的大きいが、アルミニウムと同様に、酸化物の被膜によって腐食が防止される。銅の反応性はほかの金属にくらべて小さく、乾燥した空気中では安定である。
 しかし湿気をおびると、二酸化炭素と水から生じる炭酸の影響で、ゆっくりと腐食が進行し緑色で多孔性のさびが生じる。銅のさびは緑青(ろくしょう)とよばれ、主成分は塩基性炭酸銅CuCO3・Cu(OH)2である。緑青は真鍮(しんちゅう)や青銅のような銅合金にも発生する。

貴金属の腐食
 貴金属とよばれる少数の金属は、化学的にひじょうに不活性で、大気によって腐食されにくい。
 通常は銀、金、白金などを貴金属とよぶ。銀の反応性はこれらの金属中もっとも高く、湿気をおびた空気に硫化水素がくわわると、硫化銀の生成による腐食がおきる。しかし通常の大気中にふくまれる硫化水素はきわめて微量なので、腐食は黒色に変色する程度におさまる。

金属以外の腐食
 腐食が問題になることは、金属の場合がもっとも多い。金属ほどではないが、ガラスも空気、水、酸、アルカリなどによって、ゆっくりと腐食する(→ 酸と塩基)。
 ケイ酸塩を成分とする一般のガラスは、酸による腐食には強いが、強アルカリでは腐食がよりはやく進行し、フッ化水素酸には急激に腐食される。しかしリン酸塩を成分にすれば、フッ化水素酸の腐食にたえるガラスを製造できる。
 コンクリートは硫酸塩をふくむ水によって徐々に腐食するが、ガラスと同様、組成をかえることによって耐食性を強めることができる。


別角度から見たメッキ 
ネジにはいろいろな目的でメッキなどの表面処理が施されます。
材質が鉄だと防触に ユニクロメッキ(青白い色)やクロメートメッキ(虹色ぽい黄色)などの亜鉛メッキがもっとも利用されます。
外観はクロメートに似ていますが、より耐候性のあるストロンジンク(亜鉛−鉄合金メッキ)やジンロイ(亜鉛−ニッケル合金メッキ)も車の下回りになどに使われているようです。
ステンコートと呼ばれるジンロイに光沢クロメートして、透明な防錆コーティングをした、見た目がステンレスに似た表面処理は耐食性も良好です。ステンコートには黒色もあります。
亜鉛メッキなどは、電機メッキと呼ばれるメッキ方法でメッキされます。
これは、電極を利用して 溶液中で亜鉛などの金属をネジの表面へ移動させるわけですが、長いものへ電気メッキする場合は、端が厚く 中央は薄く付く傾向がありますので、メッキ膜の管理には注意する必要があります。
 耐候性を求める屋外施設などの大きめのボルトにはグレー色のブツブツした肌をした溶融亜鉛メッキ(ドブ、てんぷら などと呼ばれる)が使われます。
この溶融メッキと呼ぶ 高温で溶かした金属の池に部品を浸して厚みのあるメッキをつける方法では、(このためドブとか てんぷら などと呼ばれる) ナットと組み合わせるときにメッキ厚で勘合出来なくなるので ナットはオーバータップを利用して作った大きめの雌ネジ穴を持つ物を使います。
ワッシャーなどは、浸した後に遠心分離器で余分な亜鉛をとばしているようですが、重量の軽いものはくっついてしまうことがあります。
また、少ないですがメッキ方法上、ねじ山などに亜鉛が余計に付着してナットの入らないものなども発生してしまうこともあります。 (このようなときは、固定したボルトに ナットが入るところまでいれてナットをハンマーで軽く叩きながら廻していくと亜鉛はやわらかいのでつぶれて支障なく利用できるようになります。)
スポット溶接を目的としたスタッドでは電気の流れにムラがないように 銅めっきしたりねじ頭が目につくような場所にある場合、装飾用にクロームメッキ(輝いた銀色)や周りが黒い色なら 黒いメッキをします。
家具などに利用される茶色のねじは、茶ブロンズと言いますこの茶ブロンズはステンレスでは熱処理により茶色に変色させ鉄では下地に銅メッキをして、薬品で色づけ研磨します。
.塗装された場所にとりつけるときは、頭だけ焼き入れ塗装をすることもあります。
機能的に たとえば表面を堅く滑らかにしたくて ニッケルメッキやクロームメッキを使用する事もあります。
ステンレスでもパシペート処理という不動態処理をして更に錆びにくくしています。
ステンレスでは、含まれるクロムが酸素と結合した酸化クロム皮膜(不動態皮膜)を表面に作ることで錆びにい鋼になっていますがパシペート処理では、希硝酸に浸すことで科学的に不動態皮膜をつくります。
ステンレスは熱伝導率が悪くて ボルトとナットのあわせがきつかったり、急激に勘合したり、強い力が加わって、熱が溜まると その部分が溶接されたようになってどうしようもない事態になります。これを避けるためにナットに潤滑剤をコーティングすることが多くなりました。
端子などでは真鍮や銅にニッケルメッキした物が多く利用され 導通の関係で金、銀メッキなどもします。アクセサリーにも金や銀などの装飾メッキが使われます。
真鍮メッキは、下地にニッケルメッキを施しその上に真鍮をメッキするもので、黄色っぽい金色です。
代用金メッキは真鍮メッキと同じように下地にニッケルメッキをして真鍮でメッキするのですが、本来の真鍮よりも銅の比率の高い銅と亜鉛の合金でメッキするもので、より本物の金に近い色がでます。
下地に亜鉛メッキをつけて染色タイプのクロム酸によるクロメート皮膜で金色に色づけするものもあります。こちらは安っぽい感じのものです。
本金メッキは、本ものの金を利用したものです。上の代用と区別するために本をつけています。下地にはニッケルメッキをつけます。錆びにくく熱や電気の良導体で高温の酸化にも強く、電子部品のコネクターに多く利用されています。
真鍮材に対するキリンスという処理は、錆落としと同時に光沢を出す酸処理です。黄色っぽいですが、金のようにピカピカです。
バンパーやオートバイのマフラーなどの銀色のぴかぴかのやつはクロームメッキでクロームよりやや光沢がなくて、少し黒っぽいメッキが錫コバルトメッキです。
クロームメッキはバレルに適さないので小物や量産は錫コバルトの方が良いようです。
普通クロームと呼んでいるガラクロームはクロ−ム3号、メッキ前にバフ研磨して素材の表面をピカピカにしたものがクローム2号です。下地はニッケルメッキです。
クロムメッキは空気中で表面に酸化膜をつくります。不動態化しやすいので光沢も長持ちし、硬度も高く耐摩耗性があります。
黒色の黒クロームは、他の黒色メッキに比べもっとも黒い色が長持ちします。耐食性もありますが他のクロームメッキよりも摩耗性が劣ります。
黒亜鉛などは、やや茶色がかった黒色で経年とともに黒色が薄くなるのに比べ黒クロームでは漆黒の皮膜ができます。
クロームメッキは廃水処理がたいへんで 公害対策によりクロームメッキを他に代替したりしてきましたので現在は少なくなっています
 電気メッキにはバレルに入れてガラガラと回しながら溶液に浸してメッキする方法(回転メッキ 小さな部品の大量処理に向く ガラとも言う)とひっかけ(タコとも言う)てする方法があります。(静止メッキ  大物に向く)電気メッキは長い物をメッキすると両端が厚く付く傾向があります
電気メッキは もっとも一般的で 簡単に安定した多くのメッキが出来ますが大量の水を使用するので 処理をしないと排水できませんこのため、施設に大きな資金が必要で小さなメッキ工場は減っている。
電気を使用しないでメッキするのに 無電解メッキ という物があります。深い穴や袋状のものも 奥までメッキがつき 膜圧が管理出来るそうですニッケルとリンの合金メッキで、溶液中での還元反応を利用して表面にメッキ金属を析出させる方法です。
電気メッキよりコスト高で、光沢も電気メッキほどありませんカニゼンメッキとも呼びます。
鉄とステンレスのアッセンブルされたものをメッキしたい場合なども無電解メッキが利用されます。
特殊な方法では 金属を真空中で蒸発させてメッキする 真空蒸着 PVD などの気相メッキがあり これは電気が流れなくてもメッキできて いろいろな色が可能です。チタンなども使われます。
ねじの製造工程や保管のための油脂ぶんを除くために酸洗いをしたり、電気メッキすると 発生した水素が金属内部の結晶の隙間に入り込み、組織をもろくする水素脆性がおこります。これがひどいと頭飛びの原因になったりすることがあるので特に高炭素鋼の場合、電気亜鉛メッキ後に、200度で3〜4時間加熱して水素を追い出す水素脆性除去処理を行います。この熱処理をベーキングといいます。近年は、酸洗いだけではなく水溶性の油取りなどもあります。

 また、ダクロダイズドやポリシールしいったコーティング方式の、電解を必要としない表面処理もあります。ダクロダイズドは、簡単に言えば塗装のようなもので液にネジを沈めてから 余分な液は振り切ります。大阪のほうでは最大2メートルぐらいまで処理可能な施設もあるようです。


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