水の再利用館②  


下水道の有効利用

(1)下水道施設の多目的活用

 1)

 下水道管内の活用

 

 平成10年度末現在、全国の公道の下に埋められている下水道管の総延長は、292,000km(地球の約6周分)にも及んでいます。このうち、下水道管の中に光ファイバーケーブルを敷設して、ポンプ場や下水処理場などの遠隔操作、監視などを行っている地方公共団体は、次のとおりです。これらの地方公共団体においては、下水道管の空間の開放とともに、下水道管理用の光ファイバーを活用して高度情報化社会に役立てる新たな取り組みが行われています。

上部利用

2) 下水処理施設の上部活用

 下水処理場やポンプ場などの上部の活用状況は、平成9年度末現在で全国206箇所にものぼっており、主にテニスコート、野球場、ゲートボールコートなどのスポーツ施設や公園、温室、集会場などとして地域の方々に開放されています。
 また、最近では下水処理場を防災空間として活用したり、市民プラザや武道館を建設するなど、地域社会に貢献するため、新しい取り組みも行われています。


上部利用

(2)

 水の持つ貴重な資源の有効利用

 

 下水の処理水、汚泥、熱、消化ガスなど、下水の持つ貴重な資源をリサイクル社会に役立てるため、その有効利用が図られています。

 1)

 処理水

 

 平成9年度末現在、全国1,293の下水処理場での処理水量は、年間124億m3にものぼり、その多くは、公共用水域に放流されていますが、次のように下水処理場内での再利用のほか、電車、トイレなどの洗浄水、工業用水、公園などのせせらぎ復活用水、消火・防火水、農業用水、融雪用水などとして再利用されている量は、192の下水処理場において年間1.3億m3となっております。

下水処理水量

下水処理水の用途別利用状況


処理水の用途別再利用の状況(平成9年度末現在)

2)

 汚  泥

 

 平成9年度に下水処理場(終末処理場)で発生した汚泥の量は、56.7万トン(乾燥重量ベース)に達しています。その処分及び有効利用の状況は、次のとおりとなっています。
総発生汚泥量は、349,937千 m3ですが、このうち公共下水道で72%の252,630千 m3が発生しています。
 一方、最終処分汚泥量は2,396千tで、公共下水道では70%の1,704千tとなっています。
 処分方法では、民間・公社への処分委託が1,678千tで最も多く70%を占め、次いで他部局の施設での処分が425千tで18%となっています。


年度別発生汚泥量の推移

3)

 下水の熱

 

 下水の温度は、冬季でも一般に10°C以上あります。この熱を利 用して、全国50箇所以上のポンプ場や下水処理場において地域冷暖房などが 行われています。

4)

 消化ガス

 

  汚泥の容量を減量させ、かつ、安定化させるために汚泥消化タンクを設けている下水処理場があります。そのような全国20の下水処理場では、汚泥の有機物分解などによって発生するメタンを主とした消化ガスを、火力発電や加温用ボイラーの燃料として下水処理場内で利用しているほか、余った電力を周辺に配電などしています。


排水行方は?  
 私たちは、普段何げなく水を使っています。私たちが使って汚れた水は、どこへ行くか考えたことがあますか。毎日の生活や事業活動によって発生した汚れた水は、公共下水道を通って下水処理場できれいな水にされ、川や海に流されています。
 家庭のトイレや風呂、台所からでる汚水や屋根や庭に降った雨水を受入れ、公共下水道へ流す排水管やますなどを排水設備といいます。排水設備は、正しく設置され、使用されて初めて下水道の役割が果たされます。

公共下水道と排水設備の違い
  排水設備は、使った水を公共下水道へ流すための設備で、建物の設備の一部と考えられます。そのため、設置や維持管理は所有者・使用者が行います。
 一方、公共下水道の建設や維持管理は、下水道局が行っています。
排水設備は正しくできていますか
 排水設備を、公共下水道に接続しただけでは十分ではありません。汚れた水を公共下水道に流すことができても、下水の臭いが洗面台や風呂、台所から臭ってくるようでは、快適な生活は営めません。この臭気を止める器具をトラップと言います。洗面器の下にあるS字形に曲がった管や、風呂の排水口についている「おわん」を逆さにした形の器具がトラップです。水の流れが悪いからといって、この「おわん」を取外すと臭気や害虫が排水管から家の中に入ってきてしまいます。
 また、排水管の破損や管の接続部分にすき間があれば、そこから臭気が漏れてきます。もし、家の中で下水の臭いがしたら、まずこうした箇所を点検してください。
正しく使っていますか
 排水管、トラップ等が正しく設置されていても使い方を誤ると、下水が流れなくなります。たとえば、トイレでトイレットペーパー以外の紙を使用すると詰まりの原因となります。風呂場では、排水口に髪の毛などが入り込まないよう穴の開いた「目皿」がついていますが、これを取外すと色々なものが排水管に入って詰まりの原因となります。時々、目皿を掃除して水の流れを良くしてください。
 使い終わった天ぷら油は、いらなくなった紙に吸い取らせるなど、ゴミとして処分して下さい。下水に流すと、排水管を変形させたり、排水管に付着して管を詰まらせたり、下水処理場の負担を大きくし、きれいな水として川や海に戻すことを難しくします。
 また、ディスポーザー(生ゴミ粉砕器)は使わないでください。家庭の生ゴミを細かく砕いて水と一緒に下水道に流すので、汚濁物が増え、下水の処理が困難になり、川や海を汚す原因ともなります。

下水道の排除方式に合った排水設備ですか
 東京の下水道には、雨水と汚水を同じ下水道管で流す合流式と、雨水と汚水を別々の下水道管で流す分流式があります。
 分流式は、汚水を処理場できれいにし、雨水はそのまま川や海に流しています。排水設備も、下水道の排除方式に合わせる必要があります。
 自分の住んでいる地域が、合流式か分流式かを確認してください。もし、あなたが住んでいる地域が分流式であれば、汚水と雨水の排水には注意が必要です。たとえば、ベランダの雨水の排水口に洗濯機の汚水を流したり、庭先にある雨水ますに雨水以外の水を流さないでください。汚れた水がそのまま流れ、川や海が汚れてしまいます。


普及地域では排水設備を設置してください
 東京都区部の下水道は、ほぼ100%普及しました。下水道が普及すると、「遅滞なく」排水設備を設置することが法律で定められています。特に分流地域では、下水道に切り替える排水設備の工事をしないと、汚水が今までどおり雨水管を通って川や海に流れ出てしまうなど、生活環境は改善されません。下水道が普及したら、一日も早く排水設備を設置して下さい。
 下水道は、このように排水設備を正しく設置したり正しく使ってこそ、快適な生活のお役に立ちます。もう一度、ご自宅の排水設備を見直してみてください。

「再生水」って何だろう?
 皆さんの家庭や学校、仕事場で使用した水は、下水道管を通って下水処理場に送られます。そしてきれいな水に処理され、川や海に放流されます。
 東京では、この水が毎日約470万トンにもなります。
 この豊富な下水の処理水を、さらにきれいに処理して、リサイクルできるようにしたものが「再生水」です。
 東京は、毎日大量の水を消費していますが、その水源の多くを他の県に依存しており、その量も不足しています。
 水は、人々の暮らしや都市活動になくてはならないものです。
 私たちは、この貴重で有限な水を大切に使っていくとともに、循環利用を進めていかなければなりません。

品川駅東口地区に再生水の供給が始まります。
 現在この「再生水」は、水洗トイレの洗浄用水として西新宿及び中野坂上地区と臨海副都心地区に送られています。その使用量は、1日に4千m3に達しています。これだけの水道水を節約したことになります。
 12年10月から、これらの地域に続いて品川駅東口地区にも給水が始まりました。この地区は再開発が進行中で、近い将来は高層ビルが立ち並ぶビジネスセンターに変ぼうする計画です。



下水処理と自然環境 

 下水は家庭や工場から出てきます。工場からの排水は公害病などの悲惨な経験を経て、ほぼ浄化されるようになりました。しかし、家庭の台所、風呂場、洗面所、トイレから出てくる下水にはまだまだ垂れ流しもあります。
 さらに家庭からの下水の処理方法には、浄化槽、集落下水道、下水処理施設という3つの方法があり、それぞれ厚生省、農林水産省、建設省がバラバラに管理して統一されていません。

 浄化槽は各家庭で設置するものですが、これさえ設置されていない家庭もあります。設置はされているものの、合併浄化槽ではなく単独浄化槽しか設置されていなくて、トイレからの排水しか浄化されていない家庭もあります。つまり、台所、風呂場、洗面所からの排水が垂れ流しとなっていることに気付いていない人が、たくさんいます。

 下水の処理については、処理場の建設が唯一無二の手段であるかのように謳われ、それも流域下水道のように大規模施設ほど効率的であると考えられています。一般的にもこの下水道神話は信じられ、下水道普及率が問題になったりします。しかし、全国各地で計画された下水処理施設の建設はなかなか進まず、完成した施設からも数々の問題点が指摘されています。

 下水処理場は、水のリサイクルを考えた場合
1. 一般の流域下水道のように工場排水を受け入れると重金属類の除去が難しいことから農業用水への利用は困難となる。
2. 下水処理の対象が広範囲かつ多岐にわたるため、処理水の安全性が問題である。
3. 大量の処理水を再利用するためには新たな送水用配管を必要とし不合理である。
4. 水の循環を生活から遠ざけることにより、水の使い捨て感覚を助長し、浪費につながる。

 自然環境への影響を考えた場合
1. 下水管による送水のため河川に水が戻らず、河川の水量が減少する。
2. 大量の処理水を特定箇所に放流することにより富栄養化を生じさせる。
3. 汚泥利用や処分が容易でない。

 さらに、流域下水道等の大規模な公共下水処理施設はコスト面での自治体への負担が大きい事も考えあわせると、大規模施設より地域条件に応じた処理施設や方法を選択すべきです。

 具体的には、都市部では従来の公共下水道が、人口密度の低い地域では合併浄化槽の方が有利であり、その中間の集落では、集落下水道が適していると考えられます。

 下水処理の方法は年々進歩しているが、基本的には微生物の働きに頼っており、自然の水循環の一部であると考えるべきです。そう考えたとき、発生源の近くで、時間をかけ、機械に頼らず自然の作用を有効利用するという原則が成り立ちます。

 例えば毛管式土壌浄化法という、水を涵養し下水道を不要にする下水の浄化方法もあります。土壌を使った従来の方法は、汚水を土壌の表面に流すとか、あるいは土中に引き入れ垂直方向に浸透させる形が多いのですが、いずれも目詰まりしやすいという間題がありました。

 毛管式土壌浄化法は目詰まり間題を次のようなメカエズムで解決しようとしたものです。すなわち、水は土のなかでも毛細管現象を起こして、下から上に上がることも、横に広がることもできるという原理を利用して、重力によって下層の方に汚水が行けないように不透膜を置いてやり、土壌表面浄化方式のように土の上から流すのではなく、水を土の中へ入れるしくみを促すのです。

 そのために土中に素焼きの陶管を埋め、陶管から浸み出てくる汚水を毛細管現象によって四方に広げつつ、後で浄化された水だけが垂直に下へ流れることを許すという原理を構造的に造りだします。

 具体的には、地下60センチの溝の底に不透性膜をおき、その上に荒砂、次に砂利または小さな礫、その砂礫の間に陶管を置き、礫の上層に山型に網もしくは布、その上に畑からとった有機物の豊富な土壌を埋め戻します。陶管の位置は、この装置の垂直寸法のちようど真中の水準、すなわち30センチあたりに置きます。こうして水の毛細管現象を利用して、土壌の粒子の間にある酸素によって微生物を働かせ、浄化しつつ水をできるだけ広範囲に拡散させて、土壌の水吸収力を高めてやるのです。

 この方法には次のような効用があります。
悪臭対策
 臭気をもつイオンは土中の微粒のイオンと結合して、土壌に吸着される。
チッソ・リンの除去
 特にリンの除去率は極めて良い。脱リンのメカニズムは、土壌中の括性アルミニウムや鉄のイオンが汚水に含まれるリン酸イオンと化合して吸着される。
汚泥処理の簡易性
 活性汚泥法では、大量汚泥の処理にコスト(投棄場所・運搬等)がかかる。土壌浄化法は汚泥が少量であり、汚泥を汚泥として取り除く必要がない。原水に重金属物質が入っていない限り、土壌の肥沃度は増し、植物の生長繁殖に役立つ。
大腸菌等の科学的・生物的処理
 括性汚泥法による下水処理のように洗剤の泡が飛んだり、大腸菌が飛散したりすることがない。
塩素殺菌の必栗性がない (環境基準湖沼A類型を満足する)
 活性汚泥法の場合、大腸菌を塩素殺菌する必要があるが、土壌浄化法の場合、大腸菌数が低いので塩素殺菌の必要性をなくしトリハロメタンといったガン性物質を形成する危険性も少ない。
地下水の涵養
 土壌浄化法は浄化された水自身が土を豊かにするため、地下水の涵養に最も適している。
汚水量の流量管理が不必要
 活性汚泥法では汚水流量が一定に保たれて効果が上がるが、土壌浄化法では土壌中の汚水量の管理が不必要である。かえって水位が下がることにより土壌中に酸素が供給され、微生物の活性、分解が活発に促進される。
気温管理が不必要(土中微生物の括動に変動が少ない)
 土中は概して大気よりも気温が一定なので、微生物の活動に大きな変動がない。
管理費の軽減(自然自身浄化)
 自然自身が浄化するため、高度な教育管理者や機械コントロールが不必要。
10 日常生活圏内の自然空間確保(土壌面積確保)
 土壌浄化法に必要な土地面積は、緑の空間として花壇や菜園、庭木など緑の潤いや涼しさの空間を与える。

 この毛管浸潤トレンチの長さは、一人一日排出する有機物と1立方メートル当りの土壌が有機物を分解する能力との関係で決まります。ふつう、一人につき2メートルのトレンチでよいと言われています。


循環・・・東京都の場合  

水は循環している
 様々な資源の循環利用が求められる中、水については太古以来の自然の作用によって循環する流れがつくられています。
 雨は地下に浸透し地下水や湧き水となり、また一部は地表を流れて、河川や海へ流れ込んでいきます。そして、海の水が蒸発して雲となり、また雨を降らせます。こうした自然の水循環が繰り返される中で、私たちは水と様々なかたちで関わりながら豊かな暮らしを営んでいます。
 しかし、東京では、都市化が進む中で地表が建物や舗装で覆われ、雨が地下にしみ込みにくくなりました。地下にしみ込む雨の量が減ったために、湧き水が枯れたり、これを水源とする中小河川の流量が減少しています。また、大雨が降ると雨水が一挙に川や下水道に流れ込み、「都市型水害」といわれる新たな災害が発生しています。
 様々な制約条件の下で災害から守るべく、川岸はコンクリートなどで覆われ、水や緑とふれあう場も少なくなっています。一方、都民の大切な飲み水は、都内での水源開発が限界に達したため、他県にあるダム等の水源施設により開発された水を利用しています。
 上下水道の普及や河川の整備などによって、東京のまちは安全で衛生的な暮らしができるようになってきました。しかし、雨水は下水道に流れ込み、生活用水は離れた所で取水されていることなど、水の流れるしくみが身近に感じられない中で、私たちはともすれば自然の水循環や水の大切さを忘れてきてはいないでしょうか。 快適な都市環境をつくっていくために、水を大切に使うとともに、失われてきた自然の水循環を取り戻し、これまで以上に潤いある水辺、清らかな水の流れ、豊かな地下水脈の回復などに取り組むことが、これからの東京のまちに求められています。
今日の水循環
 今日の水循環は、自然の水循環に加えて、私たちが創り出している人為的な水循環の流れがあり、多様なものになっています。
東京の水循環の問題点  
 東京では都市活動が活発に行われているとともに、豊かな都市生活が営まれています。しかし、都市化の過程で様々な問題が生じてきていることも事実です。とりわけ水循環に着目した場合、今日の東京においては次のようなことが指摘できます。
1.雨が地面にしみ込まない
 第一には、東京のまちが建物や舗装に覆われて、雨水が地下にしみ込みにくくなっているということです。地面のうちで建物や舗装に覆われている面積の割合を地表面の「被覆率」といいますが、東京の被覆率は平成3年時点で区部は82%、多摩地域(山間部を除く)では53%になっています。昭和43年当時は区部で74%、多摩地域では30%であったので、それだけ雨が地下にしみ込まずに川や海に流れ込んでしまっているわけです。
 この背景には、土地利用の変化があります。昭和30年当時、東京都内で市街地となっていたのは、区部で64%、多摩で15%でした。それが平成7年には区部で93%、多摩で50%にもなっています。
 また、昭和30年当時、多摩では農地・山林・原野が合計で84%も占めていましたが、平成7年には42%になっています。自然の水循環が図られているために必要な地表や緑は、大きく減少しています。都内の緑被率も、昭和47年の65%から平成7年には60%に下がってしまいました。
2.都内に水源が少ない
 第二には、東京は都内で確保している水源が少なく、他県にあるダムに多くを依存していることです。東京では、都内での水源開発が限界に達したため、その後の水需要の増加に対しては国等が実施する利根川水系のダム開発に依存せざるを得ませんでした。
 その結果、現在、都では日量602万立方mの水源を確保していますが、そのうち都内にある水源は小河内ダムなどの118万立方mに過ぎず、残りは都外にある水源から引いているのが実状です。かつて、都内では地下水も井戸から汲み上げ、多く利用されていました。
 しかし、地盤沈下による汲み上げ規制や水質面での心配などもあり、今日では地下水は一部地域で68万立方m(平成8年)を利用しているに過ぎません。  また、新たな水利用として、東京都では下水処理水の再利用や雨水利用なども行っていますが、その量は水の使用量全体から見ればわずかです。
3.都内に降る雨が活かされていない
 第三には、東京には都内で使う水の量以上に雨が降っているのに、その雨の多くが活用されずに、下水道や川から海に流れ込んでしまっていることです。  東京には一年間に約1,405ミリの雨が降っています(昭和36年〜平成2年の平均値)。東京全域に降った雨水を集めたとした場合、その量は1日あたり685万立方mにもなります。東京全体で使う水の量が平均で約500万立方mですから、東京には水の使用量の1.4倍に相当する雨が降っていることになります。
 降雨のおおむね29%は水蒸気となって蒸発してしまいます。残りの71%のうち45%は、一部水道水として利用されたあと、下水道や川から海へと流れていきます。地下にしみ込んでいるのは26%に過ぎません。
 河川などにはその機能を維持するために一定の水量が必要ですが、地下水を増やすなど自然の恵みを活かす意味ではもっと地下にしみ込ませていく必要があります。 これらのことをあわせて考えると、東京では水循環の中で、都内に降る雨水や下水再生水などの水資源が十分に生かしきれていないということがいえます。東京は都内にある水ともっとうまく関わり、大切にしていく必要があるといえるのではないでしょうか。
東京におけるこれからの水循環
 これから東京のまちを環境と調和した「循環型」にしていくためには、水についても望ましい循環を創り出していく必要があります。
 水の循環は広い地域に関わりがあり、水の利用は多岐にわたっています。しかし、地下水を含めて水の流れは複雑でわかりにくく、十分に解明されていません。森林や田畑などの緑の空間も水量・水質に深く関わっていますが、その程度や仕組みは必ずしも明らかではありません。
 このように自然界の水循環にはまだわからないことが少なくありませんが、基本的には自然環境を極力損なわずにその恵みを活かすとともに、大切にして、自然と私たちの活動が共生していけるような水循環を創り出していくことが必要です。
 これを東京のまちにあてはめた場合、東京においては、自然の水循環の再生とともに、東京という都市にふさわしい水循環の創造が必要ではないかと考えます。例えば、東京に降る雨を地下にしみ込ませたり、雨水や下水を水資源としてもっと使っていってはどうでしょうか。
 こうしたことで都内にある様々な水資源を活かしていき、そして水と私たちの活動との良好な関係をつくり、豊かで快適な都市環境を創出していくことが、これからの東京が進むべき道ではないかと考えます。そのためには、これまで水に関する各分野で個別に進められてきた施策を、体系的、効率的に推進するとともに、都民の皆さんと共に次のことを進めていくことが必要です。
(ア)雨水浸透
 自然の水循環を再生していくためには、自然の恵みである東京に降る雨を活かしていくことが重要です。東京がもつ水資源として、雨を環境や私たちの暮らしに活かしていく必要があります。
 環境に活かすという意味では、雨はできるだけ地下にしみ込ませ、地下水を増やし、湧き水があふれるとともに、川の水が豊かになるような流れを創り出す必要があります。地下水が順調に増えていけば、将来的には地下水を都内の水源として利用していくことにもつなげていけるかもしれません。

(イ)緑の活用
 緑を保全し増やしていくことも、雨を活かしていくためには重要なことです。森林や緑地がもつ保水能力を活かして、地下水のかん養を図っていくとともに、ヒートアイランド現象を抑える一助としていくことが必要です。

(ウ)雨水利用
 雨水は、溜めることによって都内にある身近な水資源として利用できます。各家庭や事業者のみなさんが雨水を溜めて利用することによって、水道水を節水することに等しい効果が得られます。非常災害時の水を確保する意味でも、雨水の貯留・利用は重要です。

(エ)下水再生水等の活用
 自然の水循環とともに、東京では人為的な水循環が大きな比重を占めています。東京は膨大な量の下水を処理しています。
 すでに新宿副都心などでは下水を高度処理(砂ろ過方式)した「再生水」をトイレ用水などに使っていますが、こうした水のリサイクルを進めていけば、下水も水資源の一つになっていきます。まだまだ用途は限られていますが、技術開発が進めば21世紀の水資源として将来、幅広い用途に利用していくことも考えられます。

(オ)水質改善
 水の循環が再生、創造されたとしても、その流れが水質の悪いものであれば、循環させた意義も薄らいでしまいます。よりきれいな水の流れをつくりだすために、自然の浄化作用を活かすとともに人工的な水処理の充実を図っていくことが必要です。
 また、それとともに私たちが活動する中で水をできる限り汚さないように心がけていくことが何よりも大切です。油を流さない、ディスポーザーを使わないなど、私たち一人ひとりが注意して水を使えば、東京にきれいな水の流れを創り出すことができるに違いありません。

(カ)節水
 都内での水循環の取組みを進める一方、私たちは水をもっと大切にし、使い方を変えていく必要があります。私たちは、蛇口をひねれば簡単に水が出てくる今日の便利な暮らしの中で、ともすれば水を粗末に扱ってきてはいないでしょうか。
 ダムをつくるためには、環境への負荷とともに、水源地域に住む人たちの立ち退きなどの犠牲や建設経費の支出など多くの負担が伴います。無駄遣いをしないことはもちろんですが、効率良く使うことを心がけて、節水していかなければなりません。
 東京は他県にある水源施設に大きく依存しているという認識をもって、都民のみなさんと共に広く東京都全体の行動として節水に取り組みましょう。 道路や緑のオープンスペースから雨がしみ込むと地下水が豊かになり、枯れていた湧き水が再生される。下水再生水が都会のまちの水資源として利用され、川の水がきれいで、水に親しめる環境があるまちにしましょう。


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