水(回り)の設備館⑤  浴槽(風呂)エピソード 


五右衛門風呂
鉄砲風呂、ヘソ風呂とならんで据風呂には「五右衛門風呂」がある。
一返舎一九の代表作「東海道中膝栗毛」の中で『弥次さん喜多さんの二人は、小田原の旅籠宿に据えてあった五右衛門風呂の入り方が分からなくて、浮かせてあった底板を蓋と間違え取ってしまう。
それでは底が熱くて入れないのでそばにあった下駄をはいて入りついに、風呂釜の底を抜いてしまい大騒動になる。』という「小田原の条」の下りは有名である。
五右衛門風呂は、京都、大阪型の風呂桶だったようで「膝栗毛」によると津、大津あたりから五右衛門風呂圏内に入るらしい。
江戸の旅籠宿には入浴施設がなかったが、諸国の旅籠宿の風呂は五右衛門風呂であった。
これらの据風呂はどこへでも置くことが出来た。それまで家風呂は湯殿といっても湯を桶に入れ手桶でそれをすくって身体に流す「かかり湯式」のものだった。
入浴は「施浴」などの社会事業によって一般に広まり、公共的な銭湯に受継がれた。
そして、木製の桶が作られその中に加熱装置が組み込まれることによって「入浴」は個人的にも楽しむことができるようになった。

五右衛門風呂の由来

五右衛門風呂とは
膝栗毛-弥次・喜多  大盗賊・石川五右衛門が、京都の三条河原で釜ゆでの刑に処せられたという伝説にちなんで名付けられた、かまどの上に鉄釜を据え、下から直火で沸かす風呂。全体を鋳鉄でつくった長州風呂と呼ばれているものと、湯桶の下に鉄釜を取り付けたものとがあり、入浴の時は、浮いている底板を踏み沈めて入ります。これを知らずに下駄を履いてお風呂を壊したのは「東海道中膝栗毛」の主人公、弥次・喜多コンビです。

五右衛門風呂の起源と需要の推移
 12世紀頃、僧・重源(ちょうげん)が遊学先の宋(当時の中国)で見た鉄湯船を、帰国して周防(山口県)の地で作らせたのが始まりとされています。江戸末期頃から、主産地が安芸(広島県)に移り、戦前には全国の生産量の8割を占めるようになりました。その広島で明治20年頃から五右衛門風呂を作り続けているのが大和重工です。当社は昭和30年代前半までは年間約12万個を製造していましたが、現在では年間約2000個に減少し、五右衛門風呂を生産する工場は国内では1社だけとなりました。

石川五右衛門とは 石川五右衛門はそもそも石川明石という三好氏の家臣の子で、安土・桃山時代の大盗賊でした。文禄3年(1534)、三条河原で一子とともに釜煎りの刑に処せられました。江戸前期の俳諧師、井原西鶴の物語の中では、親不孝の限りを尽くし、最盛期には三百人からなる盗賊団の頭でしたが、ついに天運つきて逮捕され、京都の七条河原で釜ゆでの刑に処せられるという具合に描かれました。現在、石川五右衛門といえば、その破天荒な生き方を浄瑠璃や歌舞伎、新劇で演じられるにいたって、永遠のヒーローとして捉える人もいます。

東大寺と鋳造風呂
 東大寺は、聖武天皇の勅願によって建立された総国分寺である。創立後400年を経た治承4年(1180年)12月源氏に荷担したとして平重衡により焼き払われる。
しかし、後白河法皇により当時無名の俊乗坊重源(重源上人)を東大寺再建の大勧進に抜擢する。
重源上人は東大寺の復興の際、宋の建築様式を大胆に取り入れ今日、大仏様と呼ばれる独自の様式によって大規模な建築群を完成させた。
東大寺の大湯屋は東西六間、南北十六間で日本では最大最古の湯屋であった。
延応元年(1239年)に再建された東大寺の大湯屋の浴室は漆喰の叩きの床に鉄湯船を埋め込んである。鉄湯船の側面には刻銘があり、鎌倉初頭の建久8年(1197年)に重源上人によって鋳造されたことが分かる。
かつてはこの鉄湯船と2つの大釜があり大釜で湯を沸かし、湯船に移し入れていた。鉄湯船は外径2.3M 内径2M 深さ0.7Mで中央の排水用の小穴には栓が詰められている。
現在、湯場には何も残っていないが昭和の修理のとき煉瓦積みの焚口の遺構が見つかったことから明治にはいってからも釜場に釜を据えて湯を沸かしていたことが分かる。


24時間風呂の仕組みと管理

2000年6月に名古屋市内で24時間風呂で水中出産で生まれた女の子がレジオネラ菌による肺炎で死亡し ていたことが10月に新聞報道されました。現在まで24時間風呂は142万台の出荷数だそうだ。24 時間風呂でレジオネラ菌が繁殖する危険性が指摘され、業界団体が自主基準(「百ミリリットルにレジオ ネラ菌百個未満」)を設けて、装置の改良を進めていたが、今回の装置では基準の140倍以上の濃度で 菌が検出された。
 24時間風呂の仕組みと管理の方法は次のとおりです。

1 24時間風呂とは
  24時間風呂の浄化装置は、濾過材に微生物(バクテリアなど)住みつかせ、それがアカなどの老廃物を食べた結果、水がきれいに保もたれる仕組みである。多くは紫外線やオゾンなどを使って、殺菌もしている。これで、水を入れかえなくても、一般の細菌や大腸菌については、公衆浴場なみのきれいさを保つことができるというものである。レジオネラ菌は塩素か高温で殺すことができるが、現在の24時間風呂の殺菌装置は、紫外線かオゾンを使うものが多い。ここに矛盾が起きるのです。つまり、塩素や高温でレジオネラ菌を殺してしまうと、浄化してくれる微生物にも、影響があるためである。

2 24時間風呂の管理は
  今の24時間風呂は、どこの製品であつても、レジオネラ菌がふえる可能性が大きいことがわかります。東京都の調査でも24時間風呂の8割以上でレジオネラ菌が検出されれいます。便利さを取って使い続けるか、菌がいるとわかった以上、万が一でも危険は避けるべきだから、使うのをやめるか。この先、24時間風呂を使うかどうかは、自分で選択するしかない。
 レジオネラ属菌が増殖した24時間風呂では、(1)気泡発生装置を使用し、発生したエアロゾルを吸い込んだ場合、(2)浴槽で溺れ、肺に水が入った場合 に感染するおそれがあります。

 レジオネラ属菌を増やさない対策のポイントは、
(1)浴槽水を全部交換しましょう。(月1回程度)
(2)定期的に細菌膜浄化装置などを点検・清掃しましょう。(年4回程度)
(3)定期的に水質検査を行いましょう。(年2回程度)
(4)レジオネラ属菌が検出された場合は、専門業者に依頼し浄化装置などの点検・清掃を行いましょう。
(5)気泡発生装置や浴槽水を利用したシャワ−の使用は避けましょう。
24時間風呂とレジオネラ菌
24時間風呂は風呂水の交換の手間がいらず、いつでも入浴できる点をセールスポイントとして販売台数を伸ばしています。ところが、96年12月に新聞などが、24時間風呂でレジオネラ菌が高率で検出されたと報道し、衛生上の問題が投げかけられました。

24時間風呂は、ろ過材に微生物を住みつかせ、あかなどの汚染物を浄化しています。多くの機種は、オゾン、紫外線で消毒されているが、レジオネラ菌は生存していることがわかりました。ところで、レジオネラ菌はどんな菌でしょうか。発見されたのは、比較的最近の1976年である。アメリカ、フィラデルフィアで開かれた在郷軍人大会の参加者など221人が原因不明の肺炎にかかり、29人もの死者が出たことから知られるようになりました。この時は、ホテル空調の冷却塔でふえたレジオネラ菌が空気中にまき散らされ、吸い込まれたことが原因だとされました。
 レジオネラ菌は、自然界の土壌や淡水中に生息し、25〜43℃でも生息します。しかし、この菌は70℃の湯で5秒、あるいは0.4ppmの残留塩素があれば15分以内で死滅します。人へは、レジオネラ菌を含んだ微少な水滴(エアロゾル)を肺に吸い込むと感染しますが、水を飲んだだけでは感染しませんし、人から人へも感染しません。レジオネラ感染症は、乳幼児、高齢者、病人など抵抗力の低下している人がかかりやすいと言われています。

 現状での24時間風呂のレジオネラ菌抑制対策としては、利用者は次の点に注意して下さい。①説明書とおりにフィルターやろ過剤の洗浄、手入れをする。②体を洗ってから浴槽に入る。できれば 浴槽の湯でかけ湯をし、新しいお湯を足すようにする。③浴槽内の掃除、浴槽水の交換を最低1カ月に一度行う。加えて、レジオネラ菌はエアロゾルを吸入することによって感染する危険性が高いので、気泡発生器(ジェットバス)の使用は避ける、浴槽水を利用するシャワーは使用しないことです。

消費者は、利便性のみを追求するだけでなく、商品に対する正確な情報を持つことが必要でしょう。そのために、行政側が積極的に情報を提供していく責任があると思います。


(関連) レジオネラ・知識と対策 

レジオネラ症

レジオネラ症とは、レジオネラ属の細菌によつて引き起こされる感染症のことです。病気としては、レジ オネラ肺炎(肺炎型)とホンティアック熱(非肺炎型)とに分けられます。
レジオネラ肺炎は、高熱、悪寒、筋肉痛、吐き気、意識障害を主症状とする肺炎で、時として重症になる 場合もあります。
―方、ボンティアツク熱はインフル工ンザに似た熱生疾患で、悪寒、筋肉痛、発熱なとが見られ、―般に 軽症で済み予後は良好です。
レジオネラ症の集団発生は、共通の感染源から複数の人か感染し発病するものであり、人から人ヘと伝染 するものではありません。また通常の健康な人はかかりにくく、乳幼児や高齢者、病人なと体の抵坑刀の低い い人かかかりやすい傾向にあります。

レジオネラ菌
レジオネラ属菌は、土壌や河川、湖沼なと自然界に広く生息しています。レジオネラ属菌は、 他の細菌や藻類の代謝物質を利用し、またアメ―バその他の細菌捕食性原生動物に寄生して増殖します。

感染源
レジオネラ属菌か生息している土ほこりやこれに汚染された人工水から発生する工ア□ゾル(目に見えない ような細かい水滴)か感染源となります。
工ア□ゾルを発生させやすいものとして、空調用の冷却培、循環式給湯設備、加湿器、装飾用噴水なとがあ ります。

発生源対策
○冷却塔■■■
  冷却培の冷却水は循環利用するため汚れがたまりやすく、細菌やアメ―バが繁殖し、レジオネラ属菌も増え やすくなります。そのため定朗的な点検を行い使用期間中は月1回程度の清掃を行います。また必要に応じ て薬品を使つた化学的洗浄や、坑レジオネラ薬剤を使用します。さらに冷却塔と外気取り入れ□の位置関係 にも注意を払う必要があります。

○循環式給湯設備■■■
  循環式給湯水中からもレジオネラ属菌が検出されることがあります。レジオネラ属菌は熱には強<あ りませんので、給湯系統のすべてで温度を55℃以上に保つことにより繁殖を防ぐことができます。

○空調用加湿器■■■
   超音波式、通風気化式、水スプレ―式(循環利用)なと加湿水が滞留する夕イプの加湿器では、レジオネ ラ属菌が繁殖する可能性かあるので定期的な清掃を心がけましよう。

○装飾用噴水■■■
定朗的に清掃をするとともに、必要に応じて循環ろ過装置を設置したり、澱菌(塩素注入や薬剤投入) をします。


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