水(回り)の設備館⑤  


厨房設計のポイント
「今度のキッチンはドライキッチンシステムになっていますか」 と打合せ途中によく質問を受ける。もちろん私の指定する方法をそのまま採用していただけるのならいままでのように水浸しの中で長靴をはいて作業するような状態にはならないとは思いますが、と答えると、それなのに床に排水(フロアドレン)がとってあるのはなぜですかと必ず続けて尋ねられる。このようなときにどうも双方の考え方やキッチンの施工に対するイメージに差がありそうだと感じるのであるが、私としては、先方のドライキッチンというものに対する考え方がどの程度のことかよくわからないので、説明のことばにつまることが多い。

 ドライキッチンというからにはもともとアメリカの方から伝わってきたことばであろうし、日本の業界の人が見学に行ってアメリカやヨーロッパのホテルやレストランの状況を見て思い浮かべた造語なのかもしれない。そもそもその方式の本場とそれらの人々から考えられているアメリカにおいて、ドライキッチンなんていうことばは会話中に聞いたこともないし、日本でよく口にされるドライキッチンとはいったい何なのであろうか。

 彼らのいうドライキッチンが、水浸しになることなく乾燥した床の状態で作業が続けられるか否かということであれば、私の提案するキッチンシステムのその質問に対する答えは断然イエスであるが、一切の水洗いや水も洗剤も使用しない方式であるかないかとなればノーである。つまり床や壁は必要に応じて洗浄ができる条件としておかなければならないというのが私の考えである。
 こぼれたりあふれて床に落ちた水滴や汚れや食品くずは、モップなどで拭きとればよいではないかという考えもないではないが、そのためには拭き取るモップそのものに除菌装置が付属していたり、あるいは一度拭きとるごとに殺菌処理を行っておくとかの処理が必要で、かえって水洗いして乾燥させる方法よりも手間がかかってしまう。あるいはその方式を基本とするのなら、食材の下ごしらえは必要としないほど作業が区分され、調理中の油煙や水蒸気が空中に浮遊しない完全な換気システムを完備していることなど、単に床から排水口をなくすということだけではない多くの条件を整備しなければならない。
加熱中に発生した油煙や水蒸気は、キッチン内を漂っているうちに温度が下がり、凝縮した水分とくっついて霧状の水滴となり、壁や器具や床の上に付着して次第にすべりやすくさせたり、ほこりや汚れを付着させる要因となってしまうからだ。このようになったものを、表面をモップで拭くだけで清掃が完了するとは考えにくい。やはり定期的に床の汚れを洗い流し、水分を拭きとり、乾燥させておくという、オーソドックスな清掃方法を考えた方が面倒なようであるが実効はあがるであろう。
かといって従来の施工方法のようにキッチンの中に縦横に排水溝を走らせ、床を常時水浸しにしておく方法を推奨しているのではない。私自身わが国のキッチンの衛生管理や環境改善が容易に進まない諸悪の根源は、このオープンな排水溝をキッチン内に設けることだと考えており、レイアウトや機能を考える前に、わが国のキッチンから排水溝を排除すべきだというのが長年の私の主張である。
あちこちに排水溝が設けられていると、キッチンで作業している人々の意識の中に、食器や什器備品を洗ったあとは床にひっくり返して水を捨てればよい、ということが固定概念として植えつけられ、水浸しの環境を当然として考えるようになってくる。そのためにゴム引きのエプロンに長靴というスタイルがまるで保健所や文部省や厚生省が推薦するユニフォームのように理解されてしまう。この服装を基本としてキッチンを考えれば当然床にはできるだけ広範囲に、あちこちに排水溝が走ってなければならず、それでまた床に水を流し捨てる作業が当たり前と考えられるようになり……このプロセスを繰り返してきたのが日本のキッチン内の調理作業であり、設備設計や施工であったのである。
第一調理施設の中に下水溝がオープンな形で口を開けていれば大変不潔であるし、困ったことではないか。しかしながらその状況を標準とし、排水溝を設けてあれば、常に床は水を流して洗うことができ、したがって、清掃する習慣がつくからなどという見解はいったい誰が言い始めたのであろうか。
床や壁は水洗いが可能な構造とし、排水は作業エリアごとに設けたフロアドレンから排出し、排水主管は床下に埋設してしまうというのが私の推奨する方式である。大型のキッチンになると、排水主管の勾配がとりにくくなったりゆるくなってしまうので、床仕上げは軽量コンクリートで配管を埋め戻す方法ではなく、スリーブを通し、床下に抜いてそこに横引きする間に勾配をとることが望ましい。
建築工事や設備配管工事を含めた施工方式の再検討を行うべき時期であるし、あわせてグリストラップもキッチン外に出し、清掃はキッチンとは別スタッフが行うことを標準化すべきときに来ている。コックや調理作業員には、排水管やグリストラップには触れさせないように作業範囲も区分することが必要となる。そこまですることによって(私にはそれでも業界の人々のことばの概念がよく理解できないけれども)、ドライキッチンシステムというのが完成することになると思われる。
配管工事・床仕上げ工事の改善
スラブ上に配管し、軽量コンクリートで埋め戻す方式は、天井有効高を小さくし、キッチンのフロアが一般の床レベルから300〜350mmも高くなってしまう。排水主管は床下に抜いて横引きし、グリストラップも1フロア下の階に設けるか屋外へ出し、キッチン作業員は手を触れなくてよいようにするのも床をドライな状態に保つのに有効な方法である。もちろん排水溝は中止して、フロアドレンをところどころに設けるのがよい。 (塚本貞省)



日本料理の厨房の問題点と改善のポイント

 日本料理の厨房の問題点は土間における、かまど、と、流しによる、調理方法を引きずっているという点だ。だから水を流しっぱなしの厨房で下駄を履いて平気なのだ。 まずドライキッチンにする必要がある。ドライキッチンにするためには一カ所で全ての調理をするのは無理だ。フランス料理のように下拵えの厨房と、調理の厨房を分けるべきだ。下拵えの厨房で魚をおろし、野菜の準備をする、フランス料理の厨房を学ぶ必要があるだろう。

日本料理の厨房の技術革新は簡単だ。技術革新をしたいという気持ちあれば直ぐに出来る。一番肝心なのは経営者、調理人、従業員全員が技術革新をするという気持ちだ。 厨房のドライキッチンは簡単だ。水を流さないと言う決断が重要なだけだ。休みを人並みに取りたければ真空調理が必要だ。レシピーをちゃんと作成したければ、調理温度と時間管理(TT管理)が大事だ。



厨房機器の関連設備 
厨房設備 建築設備
機器






備考
熱機器 ガスレンジ
ガステーブル
中華用レンジ バーナー火力を
最も強く要求
ガスフライヤー 大量に仕上がる
ガスサラマンダー 強い火が必要な焼物
万能焼物機 卵からステーキまで
ガスブロイラー 上火、下火
小型スチーマー
直火式スチマー
冷凍食品の解凍
連続自動
ブロイラー
大量給食
蒸 回転釜 煮炊料理
そば釜
電子レンジ
冷機器 冷蔵庫、冷凍庫
コールドテーブル ドロワータイプ
冷蔵配膳車
牛乳保冷車 大量の冷蔵
調理・
作業機器
シンク
舟形流し
水切り台
グラスシンク
ワークテーブル 据置き式・移動式
調理機械 ピーラー 洗いながら皮むき
合成調理機 野菜の切裁
ミートチョッパー 肉挽き
ケーキミキサー
炊飯器 洗米器 水圧式・電気式
ガス自動炊飯器 炊飯器
洗浄 食器洗浄機
電気式消毒
保管庫
サービス
機器
サービス
ステーション
アイスメーカー 製氷機
ティサーバー
酒燗器









厨房面積所要基準 
厨房の名称 (A)厨房面積 事務厚生施設、機械
電気室、車庫など
備考
組合給食センター 0.1m²/喫食者1人 0.1m²/喫食者1人 Aに冷蔵庫含む
学校給食(各校) 0.1m²/児童1人 A×1/3以上 事務厚生のみ
学校給食センター 0.1m²/児童1人 A×1/2以上
産業給食 食堂面積×1/3 A×1/3以上 ボイラー、電気
室含まず
病院給食 0.7〜1.0m²/ベット 0.27〜0.3m²/ベット当り
0.3m²/寮生1人 機械、電気室
含まず
一般食堂 食堂面積×1/3 A×1/3〜1/2
喫茶店 食堂面積×1/5 A×1/3〜1/2
旅館 0.3〜0.6m²/定員1人 A×1/2以上
ホテル 食堂面積×1/2〜1/3 A×1/3〜1/5

●大厨房の場合(集団給食向け) 厨房面積/機器面積=2.5〜3.0〜3.5倍以内
●小厨房の場合(飲食店向け)    厨房面積/機器面積=2.0〜2.5〜3.0倍以内



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