水のバリアフリー館  


 バリアフリー住宅について

 住まいの中で障害となるものを解消して、より快適に生活できるように配慮する。これがバリアフリー住宅を設計する上で最も基本となる考え方です。段差の解消や手すりの設置など、方法論はいろいろありますが、住む人に合わせて工夫する意味では、通常の住宅と同じです。
杖などの補助具と、その使用状況の把握
杖歩行の状態による
最低歩行スペース幅 単位:mm
杖歩行 750
杖に体重をかけて歩く 900
2本使う 800
松葉杖 950
歩行器 800
 出入り口や廊下の巾、通路の長さ、スイッチの位置など、様々な寸法を決定する際に注意したいのは、現在使用している補助具の有無、あればその種類、大きさです。例えば車いすの場合、大別して自走型(手動、電動)と介助型がありますが、それぞれに色々な種類があり、幅や奥行、アームレストの位置なども異なります。また自力走行しているか、介助が必要な走行なのかという点や、使用者の体力や操作能力も関わってくる為、方向転換のために必要なスペース等も差があります。杖歩行の場合も、杖の種類、杖先の位置・姿勢などを知る必要があります。

下半身まひなどで、排泄が困難な場合
 脊髄損傷などで下半身に障害のある人は、トイレでの排泄に長時間を要します。そこで、障害者優先のものとは別に、家族用のトイレも必要になります。
 また、車いすを使用している人にとって、車いすは身体の一部も同然です。用を足した後、車いすに移乗する前に手を洗いたいという方も多いようです。便器に腰掛けたままの状態で使える位置に、手洗い器を設けることも配慮のひとつです。

基本的な考え方 
「すべての住宅で共通」
 ●段差は自立した生活や行動のバリアとなりやすい。屋内や家屋の周囲、道路との間に、できるかぎり段差をつくらないようにする。
「車いす使用者の住宅」
 ●車いすで不自由なく移動できるように、廊下の幅や戸などの開口部の寸法に留意し、方向転換のスペースも確保する。
「高齢者・杖使用者の住宅」
 ●手すりを設置する。

居室 
「手すり」
 ●高さは、使用している杖の高さを目安にし、杖の種類や歩行能力により調節する。
 ●着衣の引っ掛かり防止のために、終始点はエルボ等で壁に曲げ込むとよい。
 ●支持金物はL型を用い、手を滑らせながら移動できるようにする。
 ●扉の開閉時に身体を支える為の、縦手すりの設置や袖壁を検討する。
「壁」
 ●高齢化に備える住宅の場合、将来、手すりを設置する事を考慮し、壁には下地を入れておくこと。
「スイッチ類」
 ●照明等のスイッチは指先の力のあまり必要の無いものが望ましい。
 ●スイッチやコンセントは、車いす使用者や杖使用者が使いやすい位置や高さに設置する。

洗面所
「洗面器」
 ●大きめのもので、カウンタータイプがよい。
 <車いす使用の場合>
  ●カウンターの高さとニースペースの確保に注意する。」
  ●排泄管はできるだけPトラップとし、車いすのフットレストの可動域を確保したい。
 <杖歩行の場合>
  ●手すりの使用杖の高さとし、洗面器の上端と同じ高さにする。また、手すりは、洗面器またはカウンターから100〜150mm(=使用者が身体をあずけられる長さ)突出させるものがよい。
「水栓金具」
 ●吐水、止水が、簡単なレバー操作でできる、シングルレバー水栓がよい。
 ●手を差し出すだけで吐水する自動水栓もある。
「鏡」
 ●洗面器の上端を、鏡の下端とし、立位の状態でも映る大型の鏡を使用するのが望ましい。

浴室

「防水」
 ●浴室と脱衣室の段差を解消することとあわせて、脱衣室側への水の浸入を防ぐ工夫が必要。
「ベンチ」
 ●脱衣場から洗い場、浴槽への移動が困難の場合、浴槽と同じ高さのベンチを設置して、洗い場台とし、身体を滑らせて移動できるように配慮する。
 ●下半身麻痺がある場合、車いすから移乗しやすい高さとしておおむね400〜500mm前後の高さとし、フットレストの可動域確保のために、下部に300mm程度の蹴込みを設けるとよい。
 ●車いす使用者で長座位移動が可能な人の場合は、浴槽のエプロンステージと面一で設置する。
 ●脱衣室に脱衣台を設置する場合は、サッシのスリットを確保した上で、脱衣台から連続して洗い場台を設置したい。
 ●じよくそう(とこずれ)の原因になるような傷をつくらないようにするため、お尻が当たる部分の仕上げは十分に注意する。
 ●近い将来、介助入浴となることが予想される場合は、ベンチは簡易に撤去できるものにして、介助スペースを確保できるようにしたい。
「洗い場」
 ●シャワーチェア使用の場合、床面の凹凸を避けるために、床タイルは平目地とし、水勾配1/50〜1/100程度がよい。
「浴槽まわり」
 ●介助入浴の場合、浴槽の3方向を空けて介助スペースを確保する事が望ましい。
「浴槽」
 ●エプロンステージの高さは400〜450mmとする。
 ●大きさは1200〜1300サイズくらいのものがよい。
 ●浴槽の中で座った姿勢を保つ為、ハンドグリップ付の浴槽が望ましい。
「給湯方法」
 ●知覚麻痺がある場合は、追い焚き式より給湯式のほうがよい。
「シャワー」
 ●入浴は体力を消耗する為、シャワーを多用する場合も多いので、温度変化が少ないサーモスタットタイプを選ぶようにしたい。
「鏡」
 ●ベンチの壁面に設置し、とこずれのチェックができるようにする。
 トイレ 
「建具」
 ●引き戸もしくは外開き戸で、万一の場合に外から解錠できるものを選ぶ。
「便器」
 ●便器の形、高さは障害の種類と程度を考慮して選ぶ。一般に車いす使用者で自力排便ができる人の場合は、便器前部分の出が長いほうが便器にアプローチしやすい。また高さは、車いすの座面と差が無い方がよい。
 ●ウォシュレットは、座位バランスを保持しつつ後始末ができるのでよい。また介助者の労力を軽減するすることもできる。
 ●巧緻性障害(間接の変形や拘縮などによる手や指先の運動制限。この場合、レバーをつかんだり、握ったりするのが難しくなる。)のある場合、洗浄レバーの柄を長めにしたい。
「ペーパーホルダー」
 ●片手でカットできるものが望ましい。
「手洗い器」
 ●車いす使用者の場合、手を洗ってから車いすに移乗できるように、手洗い器は便器に座ったままで手が洗える位置と高さが望ましい。


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