水の考察館⑨ 『水』学問 その8 


 ミネラルウォーターで生まれ変わる②
水できれいになる
①ミネラルウォーターの正しい飲み方
水とのつきあい方を見直そう
 あなたは、毎日水をどのように飲んでいますか? おそらく、気のむくまま、気分次第で好きなように飲んでいる、という人がほとんどなのではないかと思います。
 よく観察してみると私たちはけっこう間違った水の飲み方をしています。たとえば、真夏の暑い日に水をガブ飲みして体調を崩してしまう、これは誰でも経験のあることでしょう。また「水を飲むと太る」と思って、ダイエットの時に水を飲まないという人もいると思います。中には汗をかいたりトイレに行くのが恥ずかしいからと、普段から水を飲まない習慣をつけてしまった人もいるのではないでしょうか。
 何度も説明したように、私たちは体の60パーセント以上が水でできている生物。それなのに一番大切なパートナーである水とのつきあい方がとても下手です。どうしたわけか美容と健康に関心の高い女性ほど、水について多くのことを誤解している傾向があります。


 美しくなりたい人は、化粧水や美容液などには高い関心と知識を持っています。しかし本当に自分の肌を美しく保ちたいのなら、皮膚の表面ばかりをいくらケアしても、それだけでは十分とはいえません。なぜなら、皮膚の角質層とその下の真皮の間にはバリアー・ゾーンがあって、外側からいくら水分補給をしてもそれは真皮には届かないからです。肌の内側の水分は、飲み水から補給しなくてはいけないのです。
 しかし、コスメにお金をかけているという女性は多くても、飲み水に対して投資をしている人はまだまだ少数派なのではないでしょうか。「スーパーモデルがミネラルウォーターを飲んでいる」という話には関心があっても、実際に彼女たちがどのくらいの量の水をどのように飲んでいるかについては、ほとんど知られていないと思います。
 ここでは・きれいになるための水の正しい飲み方・について説明します。水には、その人の目的や体調に合った、正しい量と飲むタイミングというものがあるのです。それを知れば、高価なミネラルウォーターを効果的、かつ経済的に使いこなすことができます。そして何より大切なのは、それを続けることです。飲み水は人間の体内で約1ヵ月をかけて循環しますから、最低でも1ヵ月は続けないと、美容や健康への効果は期待できないと考えて下さい。


ウォーターローデイングとは
 数年前から、スポーツ医学の世界で注日されている水分補給法に「ウォーターローディング」というものがあります。これは順天堂大学の高岡郁夫助教授が提唱している方法で、運動選手に水を計画的に摂取させることで、疲労回復を早め、試合中の運動能力の低下を防ごうとするものです。高岡助教授はトライアスロンの選手にこの方法を指導し、高い実績を上げているそうです。
 これまでのスポーツの世界では、運動中の水分補給は極力控えた方がいい、という考え方が主流でした。運動中に水分を摂りすぎると体の疲労感が増し、時にはおなかが痛くなることもあるからです。
 しかし、現在はこうした考えは否定されつつあります。10年くらい前から運動中に水を飲むことの大切さが指摘されるようになり、今では運動中は積極的に水分補給をするべきだといわれるようになりました。かつては、水を一滴も飲ませないまま何時間も続けて練習させるというのが普通だった高校や大学の運動部でも、練習にインターバルをもうけ、こまめな水分補給を心がけるスタイルに変わってきています。

 その最も大きな理由は、発汗によって失われた水分の補給です。人間は運動すると体温が上昇し、下げるために汁をかきます。それでもなお運動を続ければまた汗をかきます。バレーボールやマラソンのように連続して数時間も運動を続ける場合は、なんと数リットルもの汗をかくといわれています。
 先に説明したように、人間は体内の2パーセントの水が不足しただけでも脱水症状を起こしますから、数リットルもの汗が出ていったまま補給されなければ、やがては危険な状態に陥ってしまいます。それを防ぐためにもこまめな水分補給は不可欠なのです。
 しかし、運動中の水分補給の意味はそれだけではありません。運動によって排出される汗は休内の水ですから、さまざまなミネラル分を含んでいます。つまり汁をかくことで人間は水分だけでなく、貴重なミネラル分も失ってしまいます。
 ことに、筋肉や心臓の機能維持にとって不可欠なミネラルであるカルシウムやナトリウムなどが、汗によって体外に出て不足すると、筋肉が痙攣(けいれん)してこむら返りが起きたり、急激に心搏数(しんぱくすう)が上がったりします。またカルシウムやマグネシウムの不足は精神の不安定を招きますから、競技に集中できなくなったり、イライラが高じます。長時間運動を続けるテニスブレーヤーの足が突然痙攣したり、審判の判定にいきなり怒りだしたりするのも、ミネラル不足が原因と考えられています。

 そこで効果的なのが、運動中にミネラルがたくさん入った水で水分補給をすること。ただし、この場合大事なのは、ひとつのミネラルだけが多すぎたりしない、ミネラルバランスのいい水を飲むことです。
 運動中に水分とミネラルを同時に補給できる飲み物としては、スポーツドリンクが知られています。しかし最近では、スポーツドリンクは味を整えるための糖分が水分吸収の妨げとなることから、ミネラルウォーターを選ぶスポーツマンが増えてきました。有名なプロスポーツ選手が試合の合間にミネラルウォーターを口にする姿も、よく目にするようになりました。


水できれいになる
②ミネラルウォーターの正しい飲み方
水を飲んで美しくなる
 ウォーターローディングが運動選手だけに有効な水分補給法なのかといえば、決してそんなことはありません。
 こまめな水分補給によって、体内を常に水分で満ちた状態にしておくことは、どんな人にとっても大切です。人間が汗をかくのは運動をしている時ばかりではないからです。
 私たちは常に汗をかいています。人間は寝ている間にもコップ1杯程度の汗をかきますし、何もしていなくても汗を絶えず皮膚から出しています。もちろん出勤や通学で歩いたり、暖房のきいた部屋にいたり、ゆったりとお風呂に入ったりすれば、かなりの量の汗をかきます。
 こうした発汗や排尿、そして呼吸によって常に水分が失われ続けているため、私たちはいつも慢性的な水分不足の状態にあります。それでも水分を控えたりしていると、肉体はやがて軽い脱水状態に陥ってしまいます。脱水状態が続くと人間は正常な代謝活動が維持できなくなり、老廃物の排泄がうまくいかなくなります。そしてやがては便秘がちになったり、肌荒れしやすい不安定な体質になっていきます。
 ですから美容と健康のことを考えれば、汗や尿によって失われる水分をこまめに補給した方がいいのです。習慣的に過不足なく水分を摂取することで、肉体が正常な代謝活動を維持しようとするからです。
 ただし、常に水分補給が必要だからといってむやみに水を飲むのは逆効果。いっぺんに大量の水を飲んでも体内に貯えられることはなく、ただ排泄されるだけだからです。とくに寝る前にたくさん水分を摂ると、腎臓に負担をかけてしまいます。


 ウォーターローディングの考え方では、水は少量ずつ、何回にも分けて飲むことが大切としています。飲む量はその人の体調によっても異なりますが、内臓に負担をかけないためには、1回の摂取量は250ミリリットル以下に抑えるのがベター。人間が1日に排出する水分は2〜3リットルですが、前に説明したように食べ物にも水分が含まれていますから、飲み水としては1日1.5〜2リットルを補給するのが基本です。ということは1回250ミリリットルを1日6〜8回に分けて飲むのが、理想的な水分補給の仕方といえるでしょう。
 こうして常に水分が体に満ちている状態を作ると、新陳代謝がスムーズになり、老廃物が排泄され、細胞にも水がいきわたって、肌がみずみずしくなってきます。また便秘が治ったり、イライラがおさまったりすることもあるはずです。
 ここまで読んで「やってみよう!」と思っても、早まってはいけません。まだ、どういうタイミングで飲むかについて説明していないからです。本当に重要なのはここから先の部分です。


大切なのは、飲むタイミング
 ウォーターローディングでは、運動選手に1日1.5〜2リットルの水を、少しずつ分けて飲むように指導しています。またフランスのコントレックスやエビアンにある、テルマリズム・センターでも、だいたい1日1.5リットルの水を飲むことをすすめています。
 しかし「毎日毎日、そんなにたくさんの水を飲み続けることができるだろうか」と考える人は多いことでしょう。1日1.5リットルといえばあの大きなペットボトル1本分もあるのですから。
 私個人の経験でいえば、最初は1日1.5リットルの水を飲むということに精神的な負担がありました。ところが実際にやってみると、それは思っていたよりずっと簡単なことでした。
 水には、飲むタイミングというものがあります。基本的にはこれさえきちんと守っていれば、1日1.5リットルくらいは楽に飲むことができるのです。
 どんな人でも、1日のうち、体が水を必要としている時が6回はあります。それは朝起きた時、朝昼晩の食事の時、通勤や通学で歩いた時、そして入浴後です。ジョギングを習慣にしていたりスポーツジムに通っている人ならその運動中、肉体を動かす仕事をしている人ならその合間に、最低1回は水分補給が必要になります。また夏の暑い時や空気の乾燥している冬場なら、あと1回くらいは補給した方がいいでしょう。そう考えれば、誰でも毎日6〜8回は水分補給をするタイミングがあるのです。この時に1回200〜250ミリリットル、つまりコップ1杯程度の水を飲めば、単純計算で合計1.5リットルになります。

 それでも、毎日飲み続けるのはつらいという人もいると思います。そういう人はまず最初に、水以外の飲み物の量を少しずつ減らしていくことから始めましょう。私たちは、糖分をたくさん含んだ缶入り清涼飲料水はもちろん、コーヒー、紅茶、中国茶、そしてワインやビールに至るまで、多種多様な飲み物に囲まれて生活しています。まず、こうした飲み物のうち、自分の体に不必要と思うものをひとつやめて、そのかわりに水を飲むようにしましょう。また、食事の時だけは水以外のものを飲まないようにするとか、お風呂上がりには必ず水を飲むといったように、少しずつ習慣づけていくのもいい方法です。


水できれいになる
③ミネラルウォーターの正しい飲み方
どんな水を選ぶか
 毎日水を飲むことを習慣づける上で、飲むタイミングと同じくらい大切なのが、どんな水を飲むかです。
 先に、最も・体にいい水・ は〈ナチュラルミネラルウォーター〉であると書きました。しかし〈ナチュラルミネラルウォーター〉なら何でもいいというわけではありません。水分の補給だけが目的なら軟水でもいいのですが、同時にミネラルを補給したいのであればカルシウムやマグネシウムをバランスよく含んだ硬水を飲むべきです。ただし硬水には独特のクセがありますから、飲みにくいと感じる人もいることでしょう。
 ですから、これから少しずつ正しい水の飲み方を実践していアうというビギナーなら、硬度150くらいの中硬水から始めることをおすすめします。まずは近くのスーパーで、ラベルに書かれたカルシウムとマグネシウムの数値を参考に、数種類の ・中硬水ミネラルウォーター・ を買ってきて下さい。そして実際に飲み比べてみておいしいと思うものを選びましょう。
 もしあなたが、これからダイエットに取り組みたい、あるいは出産をひかえてカルシウム補給をしたい、といった具体的な目的を持っているなら、思いきって硬度300以上の硬水を飲むのもいいでしょう。ヨーロッパ産のミネラルウォーターの中には、日本の水の数十倍ものカルシウム、マグネシウムを含む水もあります。ただし、日本人が飲み慣れていない硬水をいきなり大量に飲むと、腸が驚いておなかをこわす場合もありますから、それだけは気をつけて下さい。
 これらのミネラルウォーターを飲む際に注意したいのは、ボトルに直接口をつけないこと。口をつけると口内の雑菌がボトルの中で繁殖する恐れがあるからです。特に大きなペットボトルの場合は、必ずコップに注いでから飲むようにして下さい。最近は小さいボトルを持ち歩いて飲む人をよく見かけますが、この場合は雑菌が繁殖しない数時間のうちに飲み切ってしまうことが肝心です。


朝の一杯から始める
 朝は、1日のうちでも体が最も水を求めている時です。
 人間は睡眠中、とくに暑さを感じていない時でもコップ1杯程度の汗をかきます。さらに目が覚めると尿として水分を排出しますから、朝いちばんは体が乾ききってしまって、まるで乾燥したスポンジのような状態にあります。
 体が脱水状態になっトいるということは、血液の水分の割合が減って、粘度が増してドロドロになっているということ。従って朝は血液の流れが悪いため、臓器の活動も鈍く、頭もぼんやりしています。また、血液の流れと関係の深い病気である脳卒中や心臓病も、起床後数時間内の発生率が高いことが知られています。
 ですから、朝に1杯の水を飲むことは、水不足で粘り気が強くなっている血液をサラサラにして、血流を正常にし、体をリフレッシュさせてくれるのです。
 また、水は胃や腸を刺激し目覚めさせる役割も果たします。朝起きた時には胃は空っぽの状態ですから、水を飲むことが胃にとっては目覚めの合図となるのです。するとそれにともない腸もぜん動運動を起こす準備を始めます。ぜん動運動とは、食物を上から下へと送るため腸壁の筋肉が波のように動くことですが、このぜん動連動が活発化することによって、朝の排便もスムーズにいく場合が多いのです。つまり、起きがけのコップ1杯の冷たい水は、胃や腸を動かすスターターの役目をするというわけです。
 しかし、夏場ならまだしも、冬の寒い時に冷たい水を飲むのはつらいという人は多いと思います。そういう場合はミネラルウォーターをヤカンなどで少し温めてから飲むのもいいでしょう。そして一気に飲み干さず、少しずつ味わうようにして飲みましょう。そうすることで水分が体に浸透しやすくなるからです。
 ただし沸騰させてしまうと、水に含まれるミネラル分が減少したり変質したりしてしまいますから、体温よりも少し熱い程度に温めるのがコツです。保温機能のついた電気温水器にミネラルウォーターを入れたままにしておいたり、お茶やコーヒーにして飲むのは、ミネラル摂取の上ではおすすめできません。


水できれいになる
④ミネラルウォーターの正しい飲み方
朝昼晩、食事の時に飲む
 1日3回の食事の時、あなたはきちんと水を飲んでいますか?それ以前に、朝ごはんを食べなかったり、お昼を間食だけですましてしまったりしている人もたくさんいることでしょう。
 人間は規則正しい生活をしていないと、少しずつ体内のリズムが狂ってきます。とりわけ食事が不規則になると、消化吸収のリズムが狂って、それが肥満や痩せすぎの原因になったりします。ですから朝昼晩の3回の食事をきちんと摂ることは、健康維持の上で最も大切なことです。
 そして、もっと大切なのは、その3回の食事と一緒に、水を飲むことです。そもそも食物に含まれる栄養素やビタミン、ミネラルなどは、水に溶けた状態で体内に吸収されるわけですから、水を飲むことで食物の消化はスムーズになり、吸収きれやすくなります。そして水には分泌された胃酸を薄めて胃もたれを防いだり、塩分の摂りすぎを抑止するはたらきもあるのです。
 また水を飲むことは、食べすぎの防止にも役立ちます。人間の食欲は胃液の酸度と密接に関わっており、水を飲んで胃液が薄められると食欲が抑えられるからです。また食物が水分を吸って胃の中でふくらむことで、少ない量でも満腹感が得られます。とりわけミネラル分を多く含む水は、空腹感を抑えるのに効果的といわれています。
 ただし食事の時に飲む水の量はコップ1杯程度に抑えておいたほうがいいでしょう。たくさん飲みすぎると胃液が薄まりすぎて、かえって消化の妨げとなることもあります。
 ヨーロッパ、とりわけイタリアでは食事の時に炭酸ガスを含む発泡水をよく飲みますが、これは炭酸の泡が適度に胃を刺激して、食欲増進に効果があると考えられているからです。

入浴後に飲もう
 毎日のパスタイム、特にお風呂上がりはミネラルウォーターを飲むのにはベストのタイミングです。お風呂に入ると体温が上昇しますし、血管が広がって新陳代謝が高まるため、汗として水分がどんどん外に出ていって、体の中が乾いてしまうからです。
 よく「風呂上がりのヒールがうまいから」と、水を飲まず、喉の渇きをじっと我慢したまま、長時間お風呂に入ったり、サウナで汗をかく人がいますが、健康面を考えればこれは大変危険な行為です。
 お風呂やサウナでは、肌の角質層が水分を吸ってふやけるため、見た目には体が吸収しているかのように錯覚します。しかし、実際は水分は出ていく一方ですから、長時間入っているとどんどん脱水症状が進行し、血液も粘性を帯びてきます。そこにビールを飲むとアルコールの作用によって血圧が上がりますから、血管にすごいストレスがかかることになるのです。またビールには利尿作用もあるため、水分を補給する前に尿として出ていってしまい、脱水症状をさらにひどくする場合さえあります。
 ですから入浴後に飲むのは、ミネラルウォーターが一番いいのです。特にミネラルをたくさん含んだ硬水は、汗と一緒に失われたミネラルを補給してくれますから、一石二烏というわけです。サウナに長時間入った後などは1リットル近い汗をかく場合もありますから、速やかに水分とミネラルを補給することは体調維持の上でも大切です。
 毎日のパスタイムでは、必ず入浴後にコップ1杯の水を飲みましょう。また、お風呂場にペットボトルを持っていって、ゆったりと湯船につかりながら飲むのも、水分とミネラル補給の両方に効果的です。
 健康にいいのは、熱いお風呂よりも、ぬるめのお風呂に長時間つかることだといわれています。体温より少し高いくらいのぬるめのお湯は自然な発汗を促し、体をリラックスさせ、疲れを癒してくれます。その入浴中にミネラルウォーターを飲むことで、より発汗を促進され、新陳代謝が高まって、老廃物が排出されやすくなります。


水できれいになる
⑤ミネラルウォーターの正しい飲み方
お酒を飲んだあとは水を飲む
 日本人はお酒をよく飲みます。しかし、飲む量のわりに、本当にお酒に強い人は数少ないといわれています。ほとんどの日本人は欧米人と異なり、体内にアルコールを分解する酵素を少ししか持っていないからです。
 飲酒によって体内に入ったアルコール分は胃や腸で消化され、その一部は尿や汗として体外に排出されます。そして残りが肝臓に運ばれ、酵素によって分解される仕組みになっています。しかし酵素が少ない人は、一度に分解できるアルコールの量が少ないため、たくさんお酒を飲むと血液中にアルコールが残ってしまいます。
 また、肝臓でアルコールが分解される時に、アセドアルデヒドという物質が生じますが、この物質には毒性があり、それが頭痛や吐き気といった症状を引き起こします。このアセドアルデヒドもやがて酵素によって分解されますが、すべてが分解されるまでには時間がかかり、その間に胃腸や肝臓、そして筋肉など、体の各所がダメージを受けます。このダメージが残った状態を・二日酔い・というのです。
 この二日酔いを防止するのにも、水を飲むことが効果的です。なぜなら、お酒と水を同時に飲むことで、アルコール濃度が薄まり、血液中のアルコール濃度が急激に上がることを防ぎ、胃の粘膜への刺激を抑えてくれるからです。そしてたくさん水を飲めば尿の回数も増えますから、尿と一緒に体外に出ていくアルコールが増え、肝臓の負担も少なくなります。
 お酒が健康によくないことはわかっていても、日常生活の中でお酒をまったく飲まないことは難しいと思います。ですから、お酒を飲む時には必ず一緒に水を飲む、あるいは外でお酒を飲んで帰宅したらまず水を飲む、ということを習慣づけましょう。それが二日酔いを防止し、ひいては肝硬変や肝臓ガンといった致命的な病気から身を守ることにつながるのです。
 お酒と一緒に飲む水としては、マグネシウムやカリウムをたくさん含む硬水が適しています。マグネシウムやカリウムはお酒を飲むことで体外に排出されやすくなるミネラルだからです。アルコール度数の高いウイスキーや焼酎を飲む時はもちろん、日本酒やワインを飲んだ後にも、コップ1杯の水を飲むことを心がけて下さい。


ミネラルウォーターを使いこなす
①水の特徴を知る
ミネラルウォーターを使い分ける
 私たちの生活の中で、ミネラルウォーターを使う用途を書き出してみると、主なものだけでも以下の8つが挙げられます。
 ・ごはんを炊く
 ・和風だしを取る
 ・紅茶、緑茶をいれる
 ・コーヒーをいれる
 ・鋼料理、煮物に使う
 ・洋風だし(スープストック)を取る
 ・お酒を割る
 ・健康維持のために飲む
 じつは、この8つの用途は、それぞれ適している水が違います。ごはんを炊くにはそれにふさわしい水が、洋風だしを取るのにもそれにぴったりの水があるのです。その使い分けをマスターすることで、よりムダなく効率的に、ミネラルウォーターを活用することができます。
 しかし、だからといって、一般家庭で8種類ものミネラルウォーターを揃えるというのは、経済的にも無理があります。ですから、ここでは市販のミネラルウォーターを大まかに軟水、中硬水、硬水の3つに分けることにしました。(理化学辞典の分類では硬度178未満を軟水、357以上を硬水、178以上357未満を中間の水と定めていますが、わかりにくいので独自の分け方を採用しています。)まず、この3つの水について、もう一度復習してみましょう。
軟水……硬度がl00未満の水。国産のミネラルウォーターや、水道水のほとんどがこれに当たる。ミネラル分が少なく、味にクセがないため、炊飯、和風だし、緑茶をいれるのに向く。

中硬水……硬度がl00〜300未満の水。国産のミネラルウォーターには少ないが、外国産人気ブランドの水の多くがこれ。ほどよいミネラルバランスで、飲み水としてもおいしく、アクの強い肉や野菜を煮たり、洋風だしを取るのにも向く。

硬水……硬度が300以上の水。ヨーロッパ産ミネラルウォーターに多い。ミネラルが豊富であり、体質改善や健康維持のために飲むのには最適だが、料理全般には不向き。

 ただし、この3つの分類は、ミネラルウォーターのラベルには書いてありません。従って、スーパーの棚に並んでいるミネラルウォーターが飲水なのか、硬水なのかは、消費者が自分で調べるしかありません。スーパーの店員さんに質問したところで、おそらく「国産の水は軟水で、外国産の水は硬水」といった、大雑把な説明しかしてくれないと思います。でも、実際は国産の水でも硬度150の〈高千穂〉や〈信玄〉といった中硬水がありますし、ヨーロッパ産の水にも硬度8.4〈ルソ〉や硬度14〈スパ〉といった軟水があるのです。
 それでは、いったいどのようにしたら、軟水と硬水を見きわめられるのでしょうか。


ミネラルウォーターを使いこなす
②水の特徴を知る
水の・硬度・の調べ方
 そのミネラルウォーターが、軟水か硬水か中破水かを調べる、一番確実な方法は、ラベルに書かれている・カルシウム・と・マグネシウム・の含有量を見ることです。
 前にも説明した通り、硬度とは、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの合計値のことです。ですから単純にいえば、ラベルに書いてあるカルシウムとマグネシウムの量が多ければ硬水、少なければ軟水ということになります。
 しかし、厳密にいうと、少しややこしいのですが、硬度を算出するための計算式というものがあります。
 それは(カルシウム量×2.5)十(マグネシウム量×4)です。
 たとえば、そのミネラルウォーターのラベルに「水1・中のカルシウム20ミリグラム」「マグネシウム10ミリグラム」と書いてあった場合、その硬度は(20ミリグラム×2.5)+(10ミリグラム×4)=90、つまり硬度90ということになります(ミネラルウォーターの種類によっては100・中のミネラル含有量を表示しているものもありますから、注意して下さい)。
 そして、この計算式によってわかった硬度がl00未満なら軟水、l00〜300未満なら中硬水、300以上なら硬水に分類されるというわけです。
 ひとつ注意しておきたいのは、硬度はあくまで、ミネラルウォーターに含まれるカルシウムとマグネシウムの合計値であり、ミネラルの総量ではないということです。
 ですから、軟水であってもナトリウムが非常に多く含まれている水もあります。スウェーデンの〈ラムローサ〉などがそうです。
 反対に、硬水でもナトリウムががほとんど入っていない水もあるのです。ナトリウムの量は水の味を決める大切な要素ですから、硬度だけでなく、ナトリウムの数値も注意して
見るようにして下さい。


水の賞味、保存期限
 ミネラルウォーターの賞味期限についてもだいたいはラベルに記載されています。国産の水の場合は1年間、輸入品の場合は2年間というものが多いようです。国産の水の賞味期限が短いのは保存性に問題があるからではなく、日本ではペットボトルは水蒸気の透過性があり中の水が減少するため、水だけでなくウーロン茶やジュース類など、ほとんどの商品が保存期間を約1年間と定めているからです。
 しかし、中身は同じミネラルウォーターですから、国産の水でも開封をケずに冷暗所で保存すれば、2年間はまったく問題なく飲めます。
 反対に一度開封してボトルの中身が外気に触れてしまうと、ミネラルウォーターはあまり長持ちしません。きちんとフタをして冷蔵庫で保存したとしても、賞味期限はだいたい1週間と考えて下さい。特に加熱殺菌をしているミネラルウォーターは、雑菌やカビに対する抵抗力がありませんから、早いうちに使いきってしまった方がいいでしょう。
 もし、ペットボトルに直接口をつけてしまったら、安全に飲めるのはその日のうちだけと考えて下さい。人間の口の中には雑菌がうようよしていますから、それがミネラルウォーターの中で繁殖してしまうからです。夏の暑い日などは冷蔵庫から取り出したまま、つい口をつけてゴクゴク飲んでしまいがちですが、気温の高い時は雑菌も繁殖しやすいので注意しましょう。


ミネラルウォーターを使いこなす
①実践、水の使い分け
料理と水の関係
 世界中のあらゆる料理の中でも、日本料理ほど水が重要な位置を占める料理はありません。特に日本料理の基本であるごはんとだしは、水がその味を決めるといっても過言ではないほど。
 ですから日本料理の世界では、昔から水のさまざまな利用法が考えられてきました。たとえば、ほうれんそうや小松菜などの緑の野菜を茹でてから冷たい流水にさらすのは、葉緑素を冷やして色止めし、緑の鮮やかさを失わないようにするための技術。鯉の刺身を水にさらす・洗い・やあわびなどの貝を用いた・水貝・も、生臭さを洗い落とすのと同時に刺身の鮮度を保つための先人の知恵です。
 しかし、こうした日本料理は、生活廃水や化学物質に汚染されていない・美しい水・が生み出した文化。塩素たっぷりの水道水や、有機物に汚されたマンションの貯水槽の水では、その本当の味わいを生かすことはできません。また、こうした水道水に含まれる化学物質は、米や野菜に含まれる貴重なビタミンまで破壊してしまいます。
 そこで提案したいのが、料理にミネラルウォーターを使うこと。しかし、それでも水の使い方を誤って、硬水で和風だしを取ってしまったり、軟水で洋風だしを取ってしまったりすると、素材の旨味を十分に引き出せないことがあります。また紅茶や緑茶をいれる場合も、その茶葉にふさわしい水を選んだ方がより深く、香りや味わいを引き出すことができるのです。
 それでは、私たちに身近な料理について、水の使い分けを説明していきましょう。


軟水が引き立てる、和風だしの味
 和風だしの取り方には、大きく分けて2つの方法があります。干し海老や干ししいたけなど常温の水で戻すやり方と、昆布やかつおぶしなどお湯で煮出すやり方です。
 戻す場合は、熱を加えないわけですから、水そのものの質がだしの味を大きく左右します。塩素の強い臭いのついた水道水をそのまま使ったりすれば、だしの微妙な風味が打ち消されてしまいます。ミネラルウォーターでも個性の強い硬水は不向きです。最適なのは抽出力の高い軟水、それも硬度が50以下のもので、無殺菌やフィルター除菌のフレシュな水を使うのがベター。市販のミネラルウォーターでは〈南アルプスの天然水〉や〈スパ〉などがいいでしょう。
 ただし煮干しのように臭みが出やすいだし材は、やや硬度の高い水、〈六甲のおいしい水〉竅qパンナ〉などを使った方がそれを抑えることができます。
 煮出す場合は、加熱することが前提なので加熱殺菌のミネラルウォーターでも問題ありませんが、硬水を使うのはやめましょう。旨味のもととなるアミノ酸や核酸系の物質がカルシウムと結合して、アクとなって出てしまうからです。また、かつおぶしに含まれるたんぱく質もカルシウムやマグネシウムと結合しやすく、昆布のグルタミン酸も水に溶け出しやすい特徴を持っているので、くせのない軟水、〈屋久島縄文水〉や〈ルソ〉などが向いています。それでもあまり沸騰させすぎたり長時間煮出したりすると、素材の臭みまでだしの中に溶け出してしまうので、タイミングには十分注意して下さい。


ミネラルウォーターを使いこなす
②実践、水の使い分け
炊飯にはこの水がいい
 夏場のカビ臭の強い水道水で炊いたら、ごはんまでカビ臭くなってしまった、という経験をした人は多いのではないでしょうか。家庭用浄水器を使っても、カルキ臭は抜けますが、カビ臭はなかなか取れません。水道水の質の悪い団地やマンションで生活している人なら、多少コストは高くても、ふっくらつややかなごはんを炊くには、ミネラルウォーターを使うことをおすすめします。
 昔から、ごはんを炊くにはその米が穫れた産地の水、新潟の米なら新潟の、岡山の米なら岡山の水を使うと、現地で食べるのと同じ味わいになるといわれています。また海外で生活する人が、ごはんがうまく炊けなくて困るという話もよく聞きます。
 しかし実際は、日本の水でも外国の水でもあまり硬度が高すぎなければ、同じようにおいしく炊けます。炊飯は数十分も加熱を続けるため水のミネラル分が失われてしまうことが多く、軟水でも中硬水でもそれほど炊き上がりに差はありません。ただし〈コントレックス〉のように極端に硬度の高い水を使用すると、ごはんがパサパサになってしまう場合があります。これはカルシウムに植物組織を固くする作用があるためです。ふっくらしたごはんを炊くなら〈ボルヴィック〉、粒の立ったごはんにするならカルシウムの多い〈龍泉洞の水〉などと、使い分けるのもいいでしょう。
 しかし、ごはんを炊く場合、最も大切なのは、炊く時に使う水ではなく、洗米に使う水です。天日乾燥をしていた昔の米に比べ、今の米は機械乾燥していますから、含んでいる水分が少なく、乾いたスポンジのようになっています。従って、洗米の時に水につけると米はあっという間に吸収します。この時水道水を使うと塩素まで吸収して、米のビタミンが破壊されてしまうのです。精白した米を15分間水道水につけたところ、ビタミンB1が減少したというデータもあります。
 ですから、本当に米のおいしさを味わいたいのなら、洗米もすべてミネラルウォーターでした方がいいのです。でも、それはどう考えてもコスト的に無埋があります。そこでおすすめしたいのが、米を研ぐ前に数十分間、ミネラルウォーターに浸すこと。こうして米にミネラルウォーターを吸水させれば、研ぐ水は水道水でも、ビタミンの破壊を抑えることができます。


洋風だしには中硬水を使う
 スープやシチューなど、洋風だしを使う機会は意外に多いもの。それでも使っているのは市販の固形スープ、という人がほとんどかもしれません。
 本格的な料理を作りたいと思うなら、牛肉や鶏ガラ、野菜などを手間ひまかけて煮込んだ、本当の洋風だしを使ってみたいもの。
 しかし、料理の本を見ながら頑張ってスープを作ってみたのに、少しもおいしくならない、という経験をした人も多いと思います。その原因は、じつは水にあるのです。
 水道水や国産ミネラルウォーターのような軟水で肉を長時間煮込むと、肉の臭み成分まで抽出してしまいます。もちろん質のいい肉を使えば問題はないのですが、ヨーロッパ式に骨つきの硬い牛スジ肉を使ったりすると、旨味よりも臭みが勝ったスープになる場合さえあります。
 固いスジ肉を長時間煮込むなら硬度300くらいの中硬水、〈エビアン〉や〈ヴィッテル〉がベスト。それは、水に含まれるカルシウムと肉を固くする・硬たんぱく質・や肉の臭みのもととなる成分が結合して、アクとして出てしまうからです。ただし、カルシウム自体にも肉を固くする性質がありますから、あまり硬度の高すぎる水は使わない方がいいでしょう。
 また、アクがたくさん出ることで、水に直接臭みや濁りが溶け込みませんから、アクをこまめにすくえばすくうほど、澄んだ美しいスープが出来上がります。


ミネラルウォーターを使いこなす
③実践、水の使い分け
煮物は軟水と中硬水を使い分けて
 洋風スープを取るのには中硬水がいいのですが、単純に肉を柔らかく煮込むという目的に使うのなら軟水の方がいいでしょう。カルシウムやマグネシウムにはたんぱく質を硬くする作用もあるからです。
 ヨーロッパの料理では、肉をいきなり水で煮込んだりせず、スープストックで煮込むことが多いのですが、これはヨーロッパの水が硬水であるため、スープストックを用いた方が、肉が固くならないからです。
 ということは煮込みや肉じゃがも軟水で作った方がおいしく仕上がります。また魚を用いた煮物の場合も、軟水の方が柔らかく煮上がります。〈南アルプスの天然水〉や〈仙人秘水〉、〈こんこん水〉などは煮物向きの水です。
 野菜を煮る場合も、できれば軟水を使う方がいいでしょう。カルシウムには植物の組織も固くする作用があります。特にくたくたに煮込むという場合は、軟水の方が効果的です。また日本の野菜にはもともとアクが少ないので、硬水を使わなくても十分にアク抜きができます。
 ただし、野菜を煮崩れしないようにしたい場合は、〈ハイランドスブリング〉や〈バルヴェール〉といった、カルシウムが多すぎない程度の中硬水を使う方が、シャキシャキとした歯応えに仕上がります。そして、アクの強い洋風野菜などを煮込む時も中硬水が向いています。ヨーロッパでも野菜を煮込む時はそのまま水を使いますが、それはヨーロッパの野菜が日本のものに比べてアクが強いため。もちろん水のミネラルと野菜のアクが結びついて、煮汁の表面にたくさんのアクが浮かびますが、これをていねいにすくうと、すっきりしたクセのない味に仕上がります。加えて中硬水には、野菜の中のミネラルが溶け出しにくいという利点もあります。


鍋物、しゃぶしゃぶは中硬水がいい
 冬場の食卓の主役は何といっても鍋物、という方は多いことと思います。たらちり、ふぐちり、鶏の水炊き、かに鍋と、鍋物は日本の風物詩といつてもいいほど。
 しかし、この日本を代表する料理である鍋物には、意外にも中硬水が合います。なぜなら、鍋物は煮物と違って、素材そのものの味わいや歯応えを楽しむ料理ですから、肉や野菜が柔らかくなりすぎてしまう軟水よりは、シャキッとさせる中硬水の方か、より素材の持ち味を生かせるからです。
 とりわけ、短時間のうちに肉に火を通してしまうしゃぶしゃぶは、中硬水を使うとスープに肉の臭みが移らず、旨味だけが溶け込むので、おいしさがぐっと増します。そのかわりアクはたくさん出ますが、丹念にアクをすくえば、良質なスープが後に残ります。このスープで味わうお粥やうどんはまさに絶品。
 ただしカルシウムの多い硬水を用いると、アクがたくさん出て、スープ自体も濁ってきますから、アクをすくうのが面倒という人は軟水を使って下さい。また、鍋に豆腐を入れる場合も硬水は向きません。豆腐を固めるニガリの主成分は塩化マグネシウムなので、マグネシウムの多い水を使うと、豆腐が固くなってしまうからです。
 カルシウムに対してマグネシウムの少ない〈バルヴェール〉や〈磁気ミネラル74 成羽の水〉などは、鍋物やしゃぶしゃぶに適した中硬水です。


ミネラルウォーターを使いこなす
④実践、水の使い分け
日本茶の香りは軟水で引き立つ
 緑茶はグルタミン酸や甘みの成分であるテアニンといった物質を含み、また若葉の爽やかな芳香を残す、非常にデリケートなもの。この微妙な味わいと香りは、それにふさわしい水を使わないかぎり引き出せません。塩素やカビ臭、鉄サヒ臭がある水道水はもってのほかです。よく「都会のお茶はまずい」といわれますが、これは大都市の水道水、特にマンションや団地などの集合住宅の水道水がお茶をいれるのに不向きな水だからです。
 お茶の繊細な味と香りを生かすためにふさわしい水は、軟水のミネラルウォーター。それも硬度50前後の〈ボルヴィック〉や〈富士水峠の自然水〉などがいいでしょう。あまり硬度が高いとお茶に含まれているタンニンがうまく抽出されませんし、反対に低すぎても香りが出てきません。
 そして、硬度と同等に大切なのが、水の温度です。緑茶は抽出する水の温度が高いと、苦みばかりが強く出てしまい、甘みが感じられなくなります。ですから沸騰したお湯でそのままいれたりせず、必ず摂氏80度以下に温度を下げてから使うようにしましょう。上質な煎茶や玉露などは摂氏60度くらいまで湯温を下げて入れるのが一般的です。


紅茶は茶葉によって水を選ぶ
 コーヒーが盛んなヨーロッパにあって、イギリスでのみ、紅茶の文化が生まれたのにはじつは理由があります。硬水が多い他のヨーロッパ大陸の国々と違って、島国であるイギリスの水は、日本の水に近い硬度l00くらいの中硬水が多いため、紅茶をいれるのに適しているのです。
 紅茶は発酵の過程が加わるだけで、基本的には緑茶と同じ植物です。ですから紅茶も緑茶と同様に、硬水でいれるとタンニンとカルシウムが結合して味や香りが損なわれ、濁った色になってしまいます。イギリス以外の国で紅茶を注文すると、たまに黒っぽい色をしたお茶が出てくることがありますが、これも水の性質と関係しています。
 しかし、紅茶は緑茶と違って沸騰したお湯で煮出すやり方でいれますから、軟水でもあまり硬度が低すぎる水は向きませんし、また茶葉の種類によっても、適する硬度が微妙に違います。
 まず ・紅茶の王様・と呼ばれるダージリンは、〈六甲のおいしい水〉や〈龍泉洞の水〉など硬度l00未満の水がベター。硬度が高すぎると・マスカット・フレーバー・と称される独特の芳≠ェ引き立ちません。ただし、テイストした結果では、硬度297の〈エビアン〉でもおいしく飲めました。
 これがセイロン茶になるともっと硬度に敏感で、硬度が高いと香りが出す、低すぎると苦みが出てしまいます。テイストの結果では緑茶と同じく〈ボルヴィック〉や〈富士水峠の自然水〉など硬度50前後の軟水が、一番おいしく感じられました。
 反対にやや硬度が高い中硬水が向いているのが、アッサム。アッサムはミルクティーに合う紅茶といわれ、もともと色も香りも濃厚なので、軟水でいれるとそれが強く出すぎてしまうからです。テイストの結果では〈ハイランドスプリング〉や〈バルヴェール〉あたりが合っています。


コーヒーはいれ方に合わせて
 コーヒーは南米原産の飲み物であり、どちらかといえば水のよくない地域で広く飲まれてきました。ですから、本質的には、水の質や硬度にはあまり影響されません。インスタントコーヒーをいれるのであれば、極端に硬度が高い水を使わないかぎり、それほど味に差は出ません。
 しかし、コーヒー豆の種類やローストの仕方にこだわり、必ずドリップでいれるというコーヒー党であれば、硬水よりは軟水をおすすめします。〈南アルプスの天然水〉や〈ボルヴィック〉といった味にクセのない軟水は、ていねいにドリップをすることによって、その豆の苦味や酸味、香りをそのまま抽出してくれます。
 ただし、フレンチローストやイタリアンローストといった深煎りの豆を使う場合は、中硬水が向いています。カルシウムが多い硬水だと苦味が十分に出ない半面、硬度が低すぎると苦味ばかりが強く出て、香りが消えてしまうからです。特にエスプレッソのように高温、高圧でいれるものは、軟水だとただ苦いばかりになってしまいます。イタリアの現地で飲むエスプレッソは味わい深くておいしいのに、日本で飲むエスプレッソが苦いばかりでおいしくないことが多いのは、入れる水の違いにも起因しているのです。私が試した限りでは、深煎り豆には〈エビアン〉が最も合っていると思います。
 コーヒーメーカーでいれる場合はそれほど硬度を気にする必要はありませんが、深煎りの豆を使うなら、やはり中硬水を使う方がベターです。私個人は硬度110の〈NO.1〉を使っています。ただしコーヒーメーカーで硬水を使い続けると、結晶化したカルシウムが機械の中に沈着してしまう場合がありますから注意して下さい。


ミネラルウォーターを使いこなす
ミネラルウォーター活用術
白ワインを発泡水で割る
 日本ではウイスキーを水割りにして飲むのが普通です。ウイスキーやジン、焼酎といった蒸留酒は、そのままではアルコール度数が高すぎて、アルコールに弱い体質の人が多い日本人には合いません。そこで水で割ることによってアルコール度数を下げ、飲みやすくするのです。
 お酒にこだわりを持つ人の中には、バーボンならソーダ割り、スコッチは水割りが合うという意見が多いようです。バーボンのクセの強い味には刺激の強い炭酸水が、スコッチのまろやかさを生かすには軟水が合う、というわけです。また反対に「スコッチには硬水が合う」というウイスキーの専門家もいるそうです。
 スコッチの本場であるイギリスには、水割りという習慣はありません。だいたいはストレートのウイスキーと、チェイサーと呼ばれる水を別々に飲みます。その方がウイスキーの味がよくわかるからです。このチェイサーに使う水は、ウイスキーの仕込みに使われる自然水がウイスキーとの相性がいいとされています。
 一方、日本酒やワインといった醸造酒は、日本では水で割るということをあまりしません。それはもちろん、アルコール度数が低くそのままでも十分飲みやすいからであり、また、水で割ることで日本酒やワインの味が薄められ、壊されてしまうからです。
 しかし、意外なことにヨーロッパ諸国、特にドイツの南部では、ワインを水で割って飲むことが日常的に行なわれています。最もポピュラーなのは白ワインを発泡水で割ることです。ドイツには硬度が高く、炭酸の泡が強いミネラルウォーターを使うことが多いのですが、こうした個性の強い水だと、ワインを割っても薄まった感じがあまりしないし、長い間酔いが持続するわりに後に残らないといわれています。
 私もときどき、甘口の白ワインを〈サンベレグリノ〉や〈べリエ〉といった発泡水で割って、シャンパンがわりに飲むことがありますが、これがじつにさっぱりして、いけます。ワインと水を一緒に飲むことは利尿作用を高め、二日酔いの原因となるアセドアルデヒドという物質を体外に出すのを助けますから、お酒の弱い人や、つい飲みすぎてしまいがちな人にはおすすめです。


本格派・水出しコーヒー・をいれてみる
 コーヒーのいれ方の好みは人それぞれ違います。コーヒー好きの人に聞いても「サイフォンがいい」「ネルドリップでなければ」と意見は異なるところですが、唯一、共通しているのは「アイスコーヒーにするなら、やはり水出しが一番うまい」ということではないでしょうか。
 19世紀に旧オランダ領のインドネシアで誕生したことから・ダッチコーヒー・とも呼ばれる水出しの技術は、熱湯のかわりに常温の水滴を使い、時間をかけて抽出することから、コーヒーの渋みの原因であるコーヒー豆中の脂肪分がほとんど溶解せず、また酸化しにくいため濁りが出ないことが、最大の長所といわれています。
 これまではコーヒー専門店、それもこだわりを持つ店でしか飲めなかった、この水出しコーヒーですが、最近では家庭用の・水出しコーヒーポット・が市販されていることもあり、一般家庭でも飲まれるようになってきました。
 本格派の水出しコーヒーをいれるのに最も大切なのは豆。種類は酸味よりも苦味の強いマンデリンなどが適していますが、それより大事なのはローストの度合い。やはりフレンチローストやイタリアンローストといった深煎りのものが向いています。そして挽き方も微粉状態になるくらいに細かくないと、抽出されません。ここまで細かく挽くと、短時間のうちに香りが失われてしまうので、できれば使う直前に挽く方がいいでしょう。
 そして、肝心の水ですが、これは軟水のミネラルウォーターがベスト。水道水やクセの強い硬水を使うと、コーヒー豆の繊細な香りが死んでしまうからです。抽出時間はコップ1杯分でも最低1〜2時間は必要。いい水でじっくりと抽出することで、コーヒー本来の甘みや深い味わいが引き出せるのです。


 ミネラルウォーター市場は急成長を続けています。
 日本ミネラルウォーター協会のまとめによれば、1999年のミネラルウォーターの国内生産量と輸入量の合計は、過去最高の113万キロリットルにも達しました。94年の統計が55万9千キロリットルですから、この5年間でおよそ2倍の成長を遂げたことになります。これを国民ひとりあたりの年間消費量に換算すると、8.9リットルとなり、ほぼイギリスと肩を並べる数字です。もはやミネラルウォーターはただの嗜好品ではなく、生活必需品のひニつとして一般家庭に広く浸透したと言えるでしょう。
 しかし、ほんの15年ほど前まで、日本で“ミネラルウォーター”と言えば、ウイスキーの水割り用の水のことでした。私が『ミネラルウォーターガイドブック』を上梓した6年前ですら「タダの水が牛乳より高いなんて冗談じゃない」と憤慨する人の方が多数派でした。そうした偏見は今ではかなり改善されたとはいえ、まだまだ多くの市民の中に根づいています。それはミネラルウォーターについての正しい知識や情報が十分に浸透していないからだと思います。(早川 光)


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