管材資料館②  


材料を科学する必要性 

 人類と金属材料との出会いを年代順にみると6000年以上の歴史があり、 鉄鋼材料を始めとするいろいろな金属材料は、現代の生活を支える重要な役割を担っ ている。
 現代社会と共に生きる鉄鋼材料についても2000年近い歴史があり、実用に供 されるに至ったのは大量生産が可能になった高々200年来のことである。
 20世紀に 入ってからは、鉄鋼材料の生産技術が進歩し、性質の安定性が著しく進歩する一方で、 アルミニウムおよぴチタンなどの新材料、あるいはプラスチックなどが登場し、鉄鋼 の時代は新しい時代に入ったと言える。
 今後は、プラスチック、セラミックスあるい は金属間化合物などの新索材が活躍するケースも増えると考えられているが、重化学 工業などでは依然として鉄鋼材料の役割も重要で、材料の更なる多様化が予想される。
 このように、材料の利用・開発にも多様な変化が予想される訳であるが、「材料を科学する」とは具体的にはどのような意昧を持つのであろうか。
 金属材料は目的の形状 に加工し易く、大きな強度を有することが特徴の一つである。また、同一の金属材料 であっても、熱処理およぴ加工等により異なる性質を示すことがあると同時に、長期 間使用すると性質が劣化することがある。これは金属材料の微細組織に特徴があり、 内部構造の変化に基づいている。
 「不老不死」とは言わないまでも、何時までも丈夫で長 持ちし、くたばらない(劣化しない)材料を得るため、またいろいろな要求に耐え得 る材料を得るためにはどうしたらよいであろうか。この目的を達成するためには材料を科学することが必要となる。

金物で使用するおもな材料 
金属の性質について 
「モース硬さ」というのは物同士をぶつけ合ってその破損の度合いにより硬さを判定する方法です。
モース硬さ
10
ダイヤモンド
コランダム
トパーズ
石英
生長石
燐灰石
ほたる石
方解石
石膏
滑石
 
(イ) 金属元素の物理的性質
元素名
記号 比重(20゜C) 融点(゜C) モース硬さ
亜鉛 Zn 7.1 420 2.5
アルミニウム Al 2.7 660 2.9
アンチモン Sb 6.6 631 3.0
Au 19.3 1063 2.5
Ag 10.5 961 2.7
クロム Cr 7.2 1875 9.0
コバルト Co 8.9 1495 5.5
すず Sn 7.3 232 1.8
タングステン 19.3 3410 6.5-7.5
チタン Ti 4.5 1668 -
Fe 7.9 1540 4.5
Cu 9.0 1083 3.0
Pb 11.4 327 1.5
ニッケル Ni 8.9 1435 3.5
白金 Pt 21.5 1774 4.3
マグネシウム Mg 1.7 650 2.0
マンガン Mn 7.4 1245 5.0
モリブデン Mo 10.2 2610 -
(ロ) 合金について
金属材料として実用されているものは、ほとんどが「合金」である

 純金属は一般に軟らか過ぎたり脆かったりするため、そのままでは実用に供することができません。
 そこで実際には、純金属の欠点を改善するために母体金属に他の金属などを溶かし合わせて「合金」とし、使用しています。
 金物によく用いる材料である鋼は、鉄に炭素を加えた「鉄合金」ということになります。
 真鍮は銅に亜鉛を加えた「銅合金」、その他、アルミニウム合金、亜鉛合金、といったぐあいになります。
(ハ) 金属の性質とその利用方法
金属は塑性が大きいため、いろいろな加工ができる。
 針金は思いのままに曲げて自由な形に変形させることができます。こういう性質を塑性といいます。岩や石は一定の力が加えられると変形しないで砕けてしまいます。木材は折れてしまします。ところが金属は塑性が大きいためいろいろな加工ができます。ご存じの「プレス」、板などを造る「圧延」、コインや刀などを造る「鍛造」、ネジを造る「転造」、サッシなどをつくる「押出し」などはこの塑性を利用した代表的な加工方法です。

金は、延ばすと10万分の1mmの薄さまでのびる!
塑性変形の1種で、薄く広くあるいは細く長く延ばしても、ちぎれたり破れたりしない性質を展延性といいます。展延性の大きい金属には金、銀、銅、アルミニウムなどがありますが、なんといってもチャンピオンは金で、箔にすると10万分の1mmまでの薄さに延ばせるそうです。

金属の弾性を利用したのがバネ
スポンジのように力を加えると変形し、力を抜くと元の状態に戻る性質を弾性といいます。この性質を利用した代表品がバネです。
金属は加熱すると液状になる!
金属は加熱すると溶けて液状になり、常温になると固まって固体になるという性質があります。この性質を利用した加工方法が鋳造で、複雑な形状の成形に適しています。

鋼鉄の知識
(イ) 鋼の特徴
 鉄は、世界中の金属生産量の95%を占めています。それはつぎの特徴をもっているためです。
1.他の金属と比べて強いうえに加工しやすい
2.鉄鉱石の量が豊富で大量に生産できる
3.価格も安い
 鉄は硬くて強い金属で、しかも他の金属元素を加えたり、熱処理を行うことによって、その強さや硬さや性質を自由に調節することができます。
 また、鉄は粘り強い性質があるため、常温でも加工ができ、加熱すると、よりかんたんに圧延や鍛造などの加工ができます。さらに、鉄を溶かして型に流し込むことによっていろいろな形の鋳物を造ることができます。また、溶接ができることも特長です。

(ロ) 鋼の種類
普通鋼 SS材 (一般構造用圧延鋼)
SPCC(冷間圧延鋼板)
S−C (機械構造用炭素鋼)など
特殊鋼 合金鋼・・・・・・SCr (クロム鋼)など
工具鋼・・・・・・SK (炭素工具鋼)
工具鋼・・・・・・SKD(合金工具鋼)
工具鋼・・・・・・SKH(ハイス鋼)など
特殊用途鋼 ステンレス鋼・・・・・・SUS304など
ばね鋼・・・・・・・・・・・ピアノ線など
軸受鋼・・・・・・・・・・・SUJなど
耐熱鋼・・・・・・・・・・・SUHなど
磁性鋼・・・・・・・・・・・焼結磁石など
 一般に使われている鉄は、Feの他にいろいろな元素を含んでいますが、その中でも特に炭素は鉄に重要な影響を与える元素です。この炭素の含有量によって、純鉄、鋼(0.03〜1.7%)、銑鉄(1.7%)などと呼び分けられています。
 炭素の量が多くなると、鉄は硬さを増す一方でもろくなり、炭素の量が少ないほど、柔らかくなり粘り強くなります。
 また、鉄は炭素ばかりでなく、ケイ素やマンガン、クロム、ニッケル、タングステンなどいろいろな元素を加えることによって、さまざまな性質をもった別の鉄に変身します。「炭素鋼」に他の元素を加えて強くした鋼を「合金鋼」と呼んでいます。そして、この合金鋼と炭素鋼の一部のものを「特殊鋼」と呼び特殊な強さを要する用途に使われています。
鉄のおかげ、ヒッタイト帝国の隆盛
fuigo.gif (15095 バイト) 人類が金属を発見しそれを道具として用いたのは、紀元前4000年ころといわれています。
 はじめは銅であり、次に青銅であったらしく、鉄はというとだいぶおくれてB.C.2千数百年ころのようです。
 現在知られている最古の鉄器は、黒海の南にあるアナトリア地方で発見された短剣で、紀元前2300年ころのものです。
 鉄は銅より融点が高く、その抽出法もむずかしいことなどから、利用もおくれたのではないかと思われます。当時の鉄は銅よりも脆く、硬さも劣り、何らの利点が見出せなかったようです。
 しかし、紀元前1500年ころにヒッタイトで、錬鉄を木炭に混ぜて熱してハンマーでたたくことをくり返すことにより、青銅よりも硬くて強い鉄ができることが発見されました。いわゆる浸炭法です。
 鉄の表面に木炭の粉が吸収されると、表面に鋼の組織ができるという理屈です。その後、焼き入れという技法も見つけられました。

 このようにして、強い鉄の発明により、ヒッタイトは紀元前1350年ころには、当時強大なミタンニ王国を打ち破り、次々に四方を征服し最強国になっていきました。まさに鉄のおかげです。
 当時、ヒッタイトの周辺の国々は競ってヒッタイトから良質の鉄をもとめていたようであり、また、鉄の値段は金の10倍以上であったといいます。うなずける話です。
このようにヒッタイトは鉄の製法を秘密にしそれを占有することにより、四方の国々を圧倒し栄えていましたが紀元前1200年ころ突如ギリシャの急襲にあい、滅びてしまいました。 こののち、ヒッタイト人が秘密にしていた鉄の精錬法は周囲に知れ渡り、世界中に普及していったといわれます。



金属「鉄板」材料について

「鉄板と言っても様々な種類があります。

大きく材質を3つに分けると鉄、ステンレス、アルミです。
これらの材料の区別させるためにJISで規定された材料記号を使います。

鉄、ステンレス」の場合は原則として次の3つの部分から構成されてます。
1)最初の部分は、材質を示す。
2)次の部分は、規格名または製品名を示す。
3)最後の部分は、種類または強さを示す。

  例) S S 41  S PC C  S PH C  S US 304
   ↑ ↑ ↑  ↑ ↑ ↑  ↑ ↑ ↑  ↑ ↑  ↑
     1 2 3  1 2 3  1 2 3  1 2  3

1)の部分は英語、ローマ字または元素記号を用いて表します。 S:Steel(鋼)

2)の部分は主に板、棒、管等の製品の形状別の種類や用途を表します。
   S:structure (一般構造圧延鋼)
  PC:Plate-Cold (薄板冷間圧延鋼)
  PH:Plate-Hot (薄板熱間圧延鋼)
  US:Use-Stainless (特殊用途ステンレス鋼)

3)の部分は、最低引っ張り強さ、種別番号を表す。
また3の部分に更に加えて末尾に形状、製法、質・熱処理を表す記号がある。  C:Commercial (一般用)


「アルミ」の場合は鉄、ステンレスと違ってAと4桁の数字で表します。

   A × × × × P
   ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
   1 2 3 4 5 6

1)はアルミニウム及びアルミニウム合金を表す。
2)は純アルミについてはアルミ合金については主要添加元素により数字2〜9までの区分により合金系統を表します。

  1:アルミニウム純度99.00%またはそれ以上の純アルミニウム
  2:Al−Cu−Mg系合金
  3:Al−Mn系合金
  4:Al−Si系合金
  5:Al−Mg系合金
  6:Al−MG−Si系合金
  7:Al−Zn−Mg系合金
  8:上記以外の系統の合金
  9:予備

3)は数字0〜9を用い、0は基本合金を表し1〜9までは合金の改良によって用いる。
 日本独自の合金あるいは国際登録以外の規格による合金はNとする。

4)、5)は純アルミニウムはアルミの純度小数点以下2桁を、合金については 旧アルコアの呼び方を原則としてつけ、日本独自の合金については合金系別制定順に 01〜99までの番号をつける。

6)は4桁の数字に続いて1〜3個のローマ字が付けられ材料の形状を示します。 P:Plate(薄板)

実際に、使われてる材料は以下のようになります。
a.鉄(SS)
ミガキ材(SPCC) 冷間圧延鋼板
黒 (SPH) 熱間圧延鋼板
酸洗材(SPHC) 熱間圧延鋼板
ボンデ材(SECC) 電気亜鉛メッキ鋼板
シルバージンク(SGCC) 溶融亜鉛メッキ鋼板
  
b.ステンレス(SUS)
SUS430 磁石が着く
SUS304 一般溶接用
SUS316 腐食物質に強く耐食性に優れている
c.アルミニウム(Al)
A5052 一般板金用
A5083 溶接構造材の中で最も強度が高い 
  
ステンレス表面の処理の仕方
NO1処理 (4t以上の厚板に使用される)
2B処理 (一般にこれを使用する)
研磨処理 (#400)
ヘアーライン処理
良く使う板厚
鉄の場合 ステンレス、
アルミ
1.0t 1.0t
1.2t 1.2t
1.6t 1.5t
2.0t 2.0t
2.3t 2.5t
2.9t 3.0t
3.2t 4.0t
4.5t -
6.0t -
  
一般的な定尺リスト
呼び方 材料寸法 備 考
3×6(サブロク) 915×1830 鉄のみ
1×2(メーター板) 1000×2000 ステンレス、アルミのみ
3×8(サンパチ) 915×2440 鉄のみ
4×8(シハチ) 1220×2440 全材質有り
5×8(ゴハチ) 1525×2440 鉄のみ
5×10(ゴトウ) 1525×3050 全材質有り
上記の板材以外の材料にL型形状のアングル、
帯状のFB(フラットバー)、コの字形状の
チャンネルが使用されます。



溶接について

溶接とは、2つ以上の金属あるいは非金属材料を局部的に接合させることであって接合部は一般に何らかの形で加熱されます。
まず溶接方法の全体を把握するために大雑把な分類を説明します。
1.融 接
金属の接合部を局部的に融解状態にして接合させるもので普通は圧力を加えない。アーク溶接は、この中の代表的なものです。
2.圧 接
加熱した接合部に(ときには加熱しない場合もある)圧力を加えて結合させるものをいう。
3.ろう接
接合しようとする金属(母材という)は溶かさないで接合部の隙間に母材より溶ける温度の低い金属または合金(これをろうまたは半田という)を溶かし毛管現象を利用して隙間に浸透させて結合させるものである。

良く使われている溶接方法は以下の通りです。

   1.炭酸ガスアーク溶接

俗に半自動溶接という。コイル状にしたワイヤーを溶接部に自動供給しワイヤーと母材の間にアークを出し、その周りにに炭酸ガスを流し溶接する。
ソリッドワイヤーを使う方法とフラックス入りワイヤーを使う方法があります。

2.被膜アーク溶接

俗にアーク溶接という。厚板や重量物に使われます。フラックスを散布した被膜アーク溶接棒を使い交流または直流溶接電源を使用する溶接法。
フラックスは目的に応じて沢山の種類があるが、その目的は
(1)アークを安定させる
(2)ガスを発生させて大気から融解池を保護する
(3)融解金属を精錬する など様々な役目を果たしています。

3.ティグ(TIG)溶接

ステンレスの溶接に使われます。タングステン電極と母材の間にアークを出し、周りにアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを流し溶接する。

4.ミグ(MIG)溶接

ステンレス、アルミの溶接に使用されます。シールドガスにアルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを使用する以外は炭酸ガスアーク溶接と同じです。

5.ガス(酸素−アセチレン)溶接

薄い鉄の溶接に使用されます。酸素−アセチレン炎(約3200℃)で母材、溶加棒を溶かして溶接する。

6.スポット溶接

上記の溶接方法とは異なり圧接による溶接。接合する板と板に圧力を加え高電流を流すことにより発生する熱で接合する。溶接による歪みの発生が少ない。
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