質問(Q&A)館②

日本庭園などにある竹製で水が一杯になるとコーンと音を立てるものは何ですか?
 鹿おどし(ししおどし)
鹿おどし
 静寂をやぶり、コーンと快い音を響かせる「鹿おどし」。その味わいのある音と動きは、風雅な日本庭園によくなじんで、見るものの心を静めてくれる。和風庭園の景物として親しまれてきたものだが、その名称からもうかがえるように、もともとは田畑を荒らす鳥獣を追い払う農具のひとつであった。
 支点で支えた竹筒に水を引き入れ、たまる水の重みで竹筒が頭を下げて水を吐き出すと、元に戻る力で勢いよく下の石を打つ。その音で、鹿や猪を寄せつけないようにするという仕掛けであった。また、この仕組みを動力として米搗きなどに応用したものに水唐臼(みずからうす)などがあった。この水力による臼をさらに効率的にしたものが水車による臼であろう。
 ところで、この装置は「そうづ(添水、僧都)」とも呼ばれている(広辞苑)。この呼び名に関しては、農民のために力を尽くしたと言い伝えられている玄賓僧都(平安時代)との関連が、古い資料のあちこちに見える(「和漢三才図会」江戸中期、「古事類苑」明治四十一年刊、「広文庫」大正六年刊など)。「僧都」は田畑を守るものという農民の思いが伝わってくる。
 鹿おどしの空の竹筒が石を打つときの余韻は、まことに味わい深いものがあるので、もっぱら音を聞くものとして実用をはなれ、風流人たちによって庭園の点景として取り込まれていったのだろう。江戸期の漢詩人、石川丈山が興した京都詩仙堂のものが有名だが、竹山道雄は詩仙堂を訪れ鹿おどしについて次のように書いている。
 「それはどんな楽器の音にも似ていない。空洞の中のみじかい木霊のようである。竹筒にこもった響きが清水に洗われ、覆った木の葉の中に吸い込まれる。(中略)静寂の中に点をうって、そのために時間がひきしめられている。」竹山道雄著作集・8古都遍歴(福武書店刊)
 この文が書かれたのは昭和三十九年だが、そのときの鹿おどしの音の間隔を約二分と書いている。写真のものは殿ヶ谷戸庭園(東京都国分寺市)のものだが、計ってみると三十秒弱だった。この差は、たまたま自然条件によって水量が異なっていたからなのだろうか。


薬を水で飲まなければいけないのはなぜ?
 薬を飲む時は白湯か水で飲む、とはよく言われていることですが、ついついお茶で飲んだり、中にはビールで飲むなんていう人も。
 でも、これにはちゃんと理由があるのです。薬によっては、お茶やアルコールの成分と有害な反応を起こす可能性があるから。
 たとえば、お茶と造血剤など鉄分の入った薬をいっしょに飲むと、お茶の成分の中のタンニンが鉄と結合して、せっかくの薬の鉄分が吸収できなくなってしまいます。また、鎮痛剤や睡眠薬をアルコールと一緒に飲むと、効き目が強く現れすぎて副作用が出ることも。やはり、薬はちゃんと水で飲むのが一番です。



 の選び方のポイント  
長所 短所
鋳鉄 ・油がよくなじみ、こげつけにくい
・熱伝導がよく、熱まわりが均一
・空だきに耐える丈夫さ。
・さびやすく、重い。
・油がよくなじむ。
・熱伝導がよい。
・空だきに耐える丈夫さ。
・こげつきやすい
・熱まわりにむらがある。
・さめやすい
アルミニウム ・さびない
・熱伝導がよい
・丈夫
・アルカリに弱い
・乱暴に扱うとへこむ
ステンレス ・18-8,18-10ステンレスはさびず、丈夫で美しい ・熱伝導が悪い
・熱まわりにむらがある
・タワシなどで傷つきやすい
・熱伝導がよい
・熱まわりが均一
・美しい
・くろずみ、緑青がでる
・金ベラを使うと傷がつく
表面加工品 ・さびにくく、手入れが簡単
・フッソ加工は、こげつかない
・樹脂加工したものは、使ってくるとはがれてくる
・合金は、中火でないとこげる
「なべ」にはどんな種類があるの?
平たいなべ 魚をにたり、くずれやすい野菜をにるのに使うなべです。
どうして平たいかというと、次の3つの理由からです。
1.魚や野菜がかさならないように。
2.魚の生ぐさみがにげるように、水蒸気の出る面積が大きくしてある。
3.ふかいなべだと汁のなかで材料がおどり、魚や野菜の形がくずれる。
土なべ おかゆをにるのにつかいます。
なぜ土でできているといいのかというと、土のなべは熱の伝わりかたが弱く、厚みがあるので、強火にかけてもゆっくりあたたまります。そして、一度熱くなったら、なかなか冷めません。
また、ゆっくり熱が伝わり、米つぶのしんまでやわらかくにえます。
シチューパン シチューなど肉を長くにるときはたて長のずんどう型なべをつかいます。
肉を長い時間にるとすじの成分がゼラチン(ゼリーなどの材料)になります。このゼラチンのはたらきで肉にふくまれている脂肪が乳化し、とろりとしたにじるになります。このとき、なべのなかからでるあわが外に出る前にこわれると、高周波が発生し、乳化をすすめるはたらきをします。だから、とちゅうでつぶれるあわが多いほうがうまくいくのです。たて長にすると、発生するあわが外に出るまでの距離が長くなり、つぶれるあわが多くなります。
フライパン・
中華なべ
フライパンや中華なべは鉄でできています。鉄は、熱が伝わりやすく、平均に熱することができるので、いためる料理にむいています。
天ぷらなべ 平なべと丸なべのミックス型。
丸なべと同じように、火のあたる面積が広く熱が全体に均一に伝わるので底が丸くなっている。
しかし、あげものは油がたくさん入らないとこまるので、完全な丸底ではなく、平底と丸底の中間の形をしている。
ホーローなべ 鉄のさびやすい欠点をおぎなうために、鉄のなべにうわぐすり(陶器の表面にかけてあるガラスのようなもの)をかけてやきつけてあるのがホーローです。熱の伝わりかたは鉄やアルミほど直接的でなく、陶器(土なべ)ほどゆるやかでないというところ。しかし、かたいものに強くあてるとひびが入り、そこからさびてくるという弱点があります。用途としては、何にでもつかえますが、とくに酢や酸など金属をきらう食品を料理するときに効果があります。
欠点としては、油ののりがわるいのでたまご焼きなどには向きません。



戦争中に使った水筒など「水筒の歴史」を教えて下さい。
水筒(太平洋戦争時の軍用の水筒)
水筒
 水を入れて携行する容器は、中国やヨーロッパでは皮革製の袋、アジアの遊牧民は獣の内臓などの袋を利用していた。日本では青竹を切って、節と節の間に水を入れたものが利用され、水筒の原型となった。
 室町時代頃までは、これを単に「筒(つつ)」、あるいは「ささえ」などと呼んでいたらしい。
 江戸時代にはおもに、「吸筒」「水筒」などと、記されるようになったが、「すいづつ」と読まれ、この読み方は明治以降も続く。「すいとう」と読まれるようになったのは比較的新しいことという。また、竹のほかにひょうたんが利用されることもあった。
 アルミ製の水筒の製造は、明治30年(1897)、東京砲兵工廠で始まったとされる。水筒が兵器と一緒につくられていたというのは、考えさせられるものがある。写真などで見る、死線をさまよう日本兵の肩から斜めに下げた水筒。この映像ほど、極限状態にある人間と文字どおり命の綱である水の関係を、強く印象づけるものはないように思うからだ。戦前生まれの方は、水筒といえばアルミ製を思い浮かべるらしい。周りを包む布製の袋があって、肩紐がついていた。ふたに磁石がついていたものもあったそうだ。体に当たる側は、体に沿うようにへこみがついていた。
 戦後生まれにとって水筒は、学校の遠足と切り離せない。それも世代によって、水筒と、魔法瓶に分かれる。今の大人たちは、遠足にアルミやプラスチックの水筒をもって行った。
 今の小中学生は、たいがいステンレスの割れない魔法瓶をもって行く。多分、中身が生温くなってしまう水筒を知らない生徒が多いだろう。


さら湯は体に悪い」というのは、本当ですか。
 「サラ湯」というのは、沸かしたてのだれも使っていないお湯のことです。昔から、このサラ湯は体に悪いといわれています。だれかがお風呂に入ったあとは、その体からさまざまな物質がお湯に溶け込んで、水の刺激をやわらげます。塩素の含まれた水ではサラ湯の刺激はもっと強く肌に対する刺激から肌あれや脱毛がおきることさえあるのです。
 お風呂の一般的な温度の40℃というのは塩素が活発に働く温度です。こういった塩素の刺激を弱めるいい方法があります。日本には昔からユズやしょうぶを入れたお風呂というものがあり、このユズやしょうぶに含まれるテルペンという物質は塩素と反応して、刺激の弱いお湯にしてくれます。最近よく見る、入浴剤にもこういった効果があり、塩素を弱める働きがあります。
 ちょっとした工夫が体にいい風呂を可能にするのです。ちなみにミカンやレモンの皮でも同じような効果はでますのでお試しください。
ことわざ  老人の新湯は身の毒
 一番風呂は清潔でよさそうだが肌への刺激が強い。このため、肌の弱い老人には不向き。
多少不純物が混じった古湯のほうが肌へのあたりがやわらかく老人にはむくという意味。

入浴死にご注意  

 最近、高齢者を中心に入浴死が増加している。

 入浴死は心臓や脳に異常をきたして意識障害を起こし、でき死するとされている。冬に四二度以上の熱い湯に入浴すると、心臓などにかかる負担が大きいとして、心臓や脳に既往症のある人は特に注意が必要です。

◎入浴死対策の8カ条
(1)高齢者は特に1人入浴を避ける。1人の時は家族に入浴を告げ、家族は時折声をかける
(2)のぼせて顔が水面に漬かることを防ぐため、上半身を出して浴槽にふたをする
(3)朝ぶろは入らない。朝は脳血管障害、心臓疾患が最も起こりやすい時間帯
(4)42度以上での入浴は厳禁。高齢者は42度以上を熱いと感じないことも
(5)胸までの半身浴
(6)入浴前後に水分補給
(7)浴室と脱衣所の温度差に注意。浴室も湯気で暖める
(8)飲酒後の入浴は厳禁

高温・長ぶろ気をつけて 高齢者入浴死、心臓病ではなく熱中症

 高齢者の入浴事故は、これまで考えられていた心臓病などではなく、熱中症の一種で、体温上昇と血圧低下による一時的な意識障害が引き金になっていることが、東京消防庁などの最新調査で浮かび上がった。分析した堀進悟・慶応大学医学部助教授(救急医学)が日本救急医学会関東地方会で報告した。亡くなる人だけで全国で年間1万4000人にのぼるとみられる。堀さんは「お湯の温度を低く、入浴時間も短くし、家族がひんぱんに声をかければ死亡は防げる」としている。

 東京消防庁の救急車が1999年10月から半年間に出動した入浴事故は東京23区内で1087件。堀さんも加わる同庁の外郭団体、東京救急協会入浴事故防止委員会は、これをくわしく調べた。

 578件(約53%)は隊員の到着時にすでに心肺停止していたが、253件(約23%)は家族や隊員によって浴室から助け出された。

 堀さんは、間一髪助かった人たちの検査や診断を各病院に問い合わせた。回答があった122人のうち、9割以上の111人が「一過性意識障害」「原因不明の意識障害」で、「脳卒中」8人、「けいれん」3人だった。本人の訴えも「意識障害」「脱力感」がほとんどで、「胸痛」は1人もいなかった。

 入浴死は欧米にほとんどなく、高温・全身浴の日本が世界でずば抜けて多い。これまでは、血圧上昇による心臓病と脳卒中、水死が3大原因といわれてきた。堀さんは助かった人たちに入浴を再現してもらい、血圧や脈拍の変化も調べた結果、日本人の入浴死は「高温浴による熱中症」と結論づけた。

 熱中症は炎天下で体温が高くなって脱水し、血圧が下がり、意識を失う。高温、長時間の入浴で体温が上昇すると、同じしくみで意識障害が起き、浴槽内で倒れたり、おぼれたりする。

 委員会は今回の東京消防庁調査や東京都監察医務院の統計をもとに、年齢補正などして試算、入浴中の死者は全国で年間1万4134人にのぼると推定している。

<2001年2月16日朝日新聞夕刊>


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